女性役員比率、育休制度――女性が活躍できる会社なのか見抜くポイントはいくつかある。中でも重視しておきたい「通常の働き方」とは?

両立支援制度でなく「通常の働き方」で見抜く!

2015年8月、「女性活躍推進法」が可決・成立しました。従業員301人以上の企業は、16年4月1日までに自社の女性活躍の現状を把握して、課題分析を行い、女性活躍に向けた行動計画の策定と届け出、さらに女性の活躍に関する情報の公表が義務付けられます。そのため、今回「プレジデント ウーマン」が行った女性活躍推進企業ランキングは、これから就職する人だけでなく、企業の側も、同業他社と比較して、どこに自社の課題があるのかを見るのに役立つのではないでしょうか。

ランキングには載っていませんが、重視すべき指標はほかにもあります。まず女性の採用者数。女性の採用者数が少ないのに、女性管理職が増えるわけがありません。それから就業継続しやすいかどうかを示す男女の勤続年数の差。そして大事なのはワーク・ライフ・バランス(WLB)が実現できる働き方であるかを示す労働時間です。

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ワーク・ライフ・バランスと雇用機会均等の関係

もちろん育休や短時間勤務など、子育てと仕事の両立を支援する制度も大事です。しかしそれよりも大事なのは、フルタイムで無理なく仕事と子育ての両立ができる働き方があるかどうか。恒常的な残業があったり、有休がとりにくい職場で、フルタイムの働き方では両立が難しい。両立支援制度を利用すれば働き続けられるのではなく、フルタイムでの働き方を選択した女性が、普通に働き続けられる職場であることが重要なのです。

育休取得者が多いとか、育休の取得可能期間が長ければ長いほど女性にとって働きやすい会社という評価もあります。しかしそれは間違いで、実は両立支援制度を利用しないと就業継続できない職場では、女性の活躍は進展しません。なぜなら育休や短時間勤務を長く利用すると、それだけ能力開発につながる仕事を経験できる機会が少なくなります。特に初期キャリアの段階では、能力開発にマイナスとなります。希望すればフルタイム勤務でも仕事と子育てが無理なく両立できる職場が、女性の活躍には不可欠なのです。

結局、女性が活躍できる会社とは、両立支援制度に過度に依存しなくても、WLBが実現できる働き方ができるかどうかということになります。もちろん継続就業できるだけでは、女性の活躍の場は広がりません。それに加えて、男女別なく、能力向上に結びつく仕事を経験できることです。その意味では両立と均等を両輪として推進することが、企業に求められます。

佐藤博樹
中央大学大学院戦略経営研究科教授。1981年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、東京大学社会科学研究所教授等を経て、2014年10月より現職。『人材活用進化論』(日本経済新聞出版社)など著書多数。