多くの企業が取り組み始めた女性活躍推進。企業によって異なるその背景と対処方法を知り、“自分に合う会社”を見抜きましょう。

女性活躍推進の「目標設定の背景」で見抜く!

いま多くの企業では女性管理職を増やすための取り組みを始めています。その背景と対処方法を見ていると、大きく4種類に分類できるようです。まずは「うちの会社は完全に平等なのに、女性管理職が少ないのは、女性の能力が男性よりも劣っているからだ」と思っている会社。そこで能力の差を埋めるべく、女性だけにロールモデル研修や、経営的なノウハウ、マネジメントスキルなどの研修を行い、「女性の能力を男性並みに引き上げてあげる」。ここまでしたのに上に上がってこられないのは、ふるい落とされる女性が悪いんだ、というわけです。

2つめは「そもそも男女は特性が違うのだから、女性は女性ならではの特性を活かしたポジション(CSRや人事、女性市場向けの商品開発など)につけてあげよう」という会社。女性用ポジションは数が限られているため女性同士で役職の奪い合いになるのが難点ですが、このような会社は女性用にキャリア経路を考えてくれるので、サポートも厚く働きやすい。女性=マイノリティー扱いされることに抵抗を覚える人もいるでしょうが、まずは部長など管理職になり、経営手腕を身につけ改めて役員を目指す、というように会社の方針に乗っかるのも手です。

3つめは「何年までに女性管理職を何割にする」という目標だけを掲げ、それを実現させるための方法は現場に丸投げの会社。多くは、仕事を達成するために人を動員する力を与えておらず、部下がいない、実質的な権限がないなど、「名ばかり管理職」を大量に増やす会社。前者は何も変わらないし、後者は一時的に女性管理職が増えるものの、やがて頭打ちになる可能性があります。

4つめは業務プロセスや仕事の回し方はもちろん、企業文化のような目に見えないところまで変えていくことによって、女性管理職を増やそうとしている会社です。4パターンのなかでは根本的な組織変革を伴うので、最も女性登用による成果も出やすいでしょう。

女性にとって大事なのは、自分の特性やキャリアデザインをよく考えて、自分にふさわしい会社を選ぶこと。会社の考え方と働く女性自身の考え方にギャップがないことが最も自然な形でしょう。

女性登用に限らず、昇進や昇格の基準に透明性があるかどうかも重要です。上司の裁量だけで決まる場合は、女性に不利になることも。そこは入社前に確認するといいですね。

●女性管理職増加施策の4分類

【会社の考え】女性の能力が男性よりも劣っているから引き上げなくては!
【施策】女性だけにロールモデル研修やマネジメントスキル研修などを行う

【会社の考え】そもそも男女は特性が違うから、女性は女性の特性を活かしたポジションにつけてあげよう
【施策】女性用のポジションやキャリアパスがある

【会社の考え】「名ばかり管理職」でもいいからとりあえず数を達成させよう
【施策】「何年までに女性管理職を何割にする」という目標を掲げ、それを実現させることだけに集中する

【会社の考え】目に見えないところまで変化させて、ハンディをなくそう
【施策】女性の割合だけでなく、業務プロセスから企業文化まで変化させる
谷口真美
早稲田大学大学院商学研究科教授。1996年に神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了後、広島経済大学専任講師、同助教授、広島大学大学院社会科学研究科助教授、早稲田大学大学院商学研究科准教授を経て、2008年より現職。13年から15年にマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院客員研究員。