すし詰めの通勤電車に、毎日いやいや、漫然と揺られていませんか。その「うんざり」には、次のステップへの予兆が隠されているかもしれません。どういうことでしょうか。

毎日うんざりしながら通勤電車に揺られている、あなたへ

ある日、それこそ、朝の通勤電車の中で「私はどうして毎日この電車に乗って、会社に通っているのかな」と、疑問を持ったことはありませんか?

就職した当初はやりたいことがある、実現したい夢がある、それどころか自分の手で世界を変えてやる、と思っていたかもしれません。しかし、今は昔の話になってしまっていて、やりたいことはできていないし、夢はまるで実現しそうにないし、世界は変えられそうにないし、という状態なのに、会社には通っている。仕事ってそういうものでしょう、とうそぶきながら。

しかし、本当にそれでいいのでしょうか。フルタイムで働いているなら、一日の半分くらいは会社の中で暮らしている(こういう表現が正しいかどうかは分かりませんが)、という人もきっと少なくないはず。

人生の多くの時間を費やしているはずなのに、不本意な状態でいることをヨシとしているのは、もしかしたら不自然なことかもしれない。現状に満足はできていない、けれども何から手をつけたらいいのかわからない、というあなたは、もしかしたら“会社との付き合い方を見直す時期”に来ている可能性があるという話をしたいと思います。

なぜ“その場所”で働かなければならないのか、を考える

毎日うんざりしながら通っている場所だけれども、そのうんざりした気持ちを上回る魅力がある、少なくとも一つはその場所で働くべき理由が説明できるというあなたは、会社との付き合い方をすぐに見直す必要はないでしょう。

もちろん、人生の大半を過ごす場所が、非の打ち所のない状態であることは理想的ですが、それはなかなか難しい。しかし、一つでも、そこで働くことの意味を見いだせる、そして他人に話をして、その理由への理解が得られるならば、それはまだ大丈夫。

ただ、注意をしなければならないのは、その理由を他人に説明しても、上手く理解してもらえない場合。例えば、長い間、その環境に身を置いていると、すっかり順応してしまって、他の人から見たらおかしいことでも、違和感を持たなくなってしまうというケースに、心当たりがあると思います。自分がそうなっていないか、気を付けておかないと、ある日ふと我に返って「あれ、どうしてこんなことをしていたのだろう」と後悔してしまう可能性が大きいのです。

あなたが会社で働くべき理由を、よどみなく説明できますか?

さらに厄介なのは、その場にいるべき必然性を一つも見出せない場合。いくら考えても理由が見つからない、つまりは会社との付き合い方を即、見直さなければならない状況です。

このケースで最悪なのは、例えば転職を考えようと思っても、その労力と現状維持とを天秤にかけた結果を見て、変化しないで済むように、自分でどうにかしてでもその場にとどまる必然性を無理やり作り出してしまうことです。自らがそこで働く意味を見いだせていない場所でいくら努力しても、成長実感は得られませんし、評価も得られにくいという実例を、皆さんは働いている中で、いくらでも目にしていることでしょう。

そうならないために、満員電車で揺られている中で心にふと浮かんだ、自分自身の違和感を見逃さないようにすることを、まずはお勧めします。

会社を利用することで得られるもの

ただ、いくら考えてさまざまな事情、例えば経済的なことで、変化することが難しいというケースもあるでしょう。しかし、毎日鬱々(うつうつ)と仕事に向かうことがどのような面に対してもプラスになるとは思えません。

“キャリアの曲がり角にいる”女性だと、しがらみも多いでしょうから、おいそれと動くということもできないかもしれません。そういう人たちのために、もう一つ提案できる視座視点としてあるのが、会社を利用するという考え方。

今までは会社にどう貢献するのか、それによって会社からどのように評価されるのか、という姿勢で仕事をしてきた人が、若干の濃淡はあるでしょうが大半なはずです。

もちろん、多くの会社の制度設計は、大部分の従業員がそういう姿勢で働いてくれるという前提で成り立っていますから、当然と言えばそれまでのこと。ですが、皆さんのキャリアくらいになれば、それも見直してもいい頃です。

若いときには漠然としていた自分のやりたいことも、この年齢になるとはっきりと見えてくるでしょう。自分がいま置かれている環境は、言い方を変えれば、自らのリソースとも考えられます。改めて、やりたいことの実現のために、その環境であり資源を有効に活用する、つまり、会社を利用することを意識し始める時期なのかもしれません。

与えられたミッションをクリアすることで評価される段階を越え、自ら考え行動することで、組織に貢献できる立場になったいまだからこそ、逆に会社をうまく利用することで、少し大げさな言い方をすれば、個人の欲望を満たすことができるのです。これも会社との付き合い方を変える、一つの例なはずです。

会社という枠が自分の体に合っているのか、見直すチャンス

毎日忙しく働いていると、気が付いたはずの小さな違和感も放置して、そのまま見逃してしまいがちです。しかし、違和感が大きくなってしまうと、その解消には大きな労力が必要になります。日々の些細(ささい)なことであっても、どうしてそう思うのだろう、何が違うのだろうと考える癖を付けるだけで、大きな不幸に見舞われるおそれを軽減することができるはずです。

皆さんは日々成長しています。ある日突然、身を置いている場所、つまり働いている会社が、窮屈に感じられてしまうかもしれません。違和感を意識していなければ、会社という枠から、自分がはみ出るくらいになっていることも気が付けません。それが自分自身にとってどれだけの損失であるか、皆さんはもうお分かりですよね。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。