男女の区別なく、優秀な人材を登用する風土が根づく高島屋。先輩女性が後輩女性を引き上げる「スポンサーシップ」を取り入れることで、どのような影響があったのか?
優秀な人材には、責任ある仕事に挑戦してほしい
早くから男女共同参画企業としての歩みを進めている高島屋。社内には、男女の区別なく優秀な人材を登用する風土が根づいている。
「その先がけとなったのは、石原一子さん。1952年当時から男女同一賃金制であった高島屋に入社。子育てをしながら常務取締役まで務めました。その石原さんが引き上げたのが、現在の代表取締役専務である肥塚見春です。彼女が夫の海外赴任のために高島屋を退社したとき、石原さんは再雇用制度を創設して復職を支援したのです」
そう語るのは人事部長の中野奈津美さん。上司が部下を支えるリーダーシップを「スポンサーシップ」というが、中野さん自身も、40代にして執行役員に抜擢され、「上から引き上げてもらった」ことを実感している。
「社内研修で言うのは、『管理職になると違うステージが見える、その世界を見たくないですか?』という言葉。優秀な人材には、ぜひ責任ある仕事に挑戦していってほしいと思うんです」
とくに、中野さんが今、急務としているのが管理職への女性の登用だ。
「部下を持つ課長以上の女性管理職は、現時点で20.5%。経営層に入っていくような女性をもっと育てていかなければ経営基盤に関わる、という危機感があります。男女の区別がない社風ゆえに、特別なプログラムは実施してきませんでした。ただ、女性を育てたいなら、絶対にバックアップ体制は必要。3年前からは女性管理職育成の講座を導入し、意識改革に取り組んでいます」
出席するのは、上司から「もっと上を目指してほしい」と推薦された人材。講座の冒頭では、これから先の自身のキャリアステップの展望を書いてもらう。多くの女性が考え込んでしまって、ペンが進まないそうだ。
「まずは、自分のキャリアに真剣に向き合うところからスタートです。ステップアップしていってほしい、という期待をしっかり伝えることも大切」
集団で講座や面接をすると、お互いが刺激を受ける、というメリットも。
「人を育てるときには『ザワザワ感』も大事。与えられた場所で安定してしまうと、どうしても守りに入ってしまいます。焦りや競争といったザワザワした気持ちは、モチベーションアップのスパイスにもなるんです」
▼「女性管理職が育つ職場、つぶされる職場」過去の記事はこちら→http://woman.president.jp/category/pw00064
執行役員 人事部長。1986年日本橋高島屋美術部に入社。宣伝部で文化催事などを担当する。2012年より人事部副部長、13年より現職。
撮影=市来朋久 イラスト=網中いづる