この春、異動があった、転職するという人も多いのでは? 人が動けば必要になるのが「引き継ぎ」。担当者が替わってもみんなが困らない、後継者もスムーズに業務を続けられるコツについて聞きました。

異動シーズンになると発生する「引き継ぎ」。人や会社によって引き継ぎの仕方はまちまちですが、うまく引き継ぎが行われないと、後継者への大きな負担やトラブルの原因にもなります。

通常業務と平行して行われる引き継ぎはそれ自体が負担になりがちな上、あまり余裕のないスケジュールで進められることも多いもの。スムーズに引き継ぎを行うコツはあるのでしょうか? 引き継ぎの経験が多い人たちの意見を参考に、円満に引き継ぎをするコツをご紹介します。

資料編:「分かりやすく」は基本中の基本

引き継ぎ資料をつくる時間は、まとめてやるとかなり時間をとるもの。そして、もし自分がいなくなったら、引き継ぎ相手はその資料を頼りに作業しなくてはなりません。そこで資料作りのポイントを聞いてみました。

「相手が分かりやすいように、文字ベースではなく、図をメインに。なるべく画面キャプチャをつけて、図を見ただけでポイントが伝えられるような資料を作成しています」(20代女性)

たとえば管理システムの操作などは、画面キャプチャがあると喜ばれます。特に外部や異業種から来た人に引き継ぐときは、社内の共通言語が伝わらないことも。図で示せるものは、図を使った方が安全でしょう。

「紙で残るものは会社の公式資料なので、裏技的なものは記載しません」(30代男性)

日々の作業を効率的に動かすために、個人的なノウハウや“裏技”がある人もいるでしょう。しかしこれは資料に記載しない方がベター。この方の場合、口頭で伝えているそうです。環境の変化などでのちのち“裏技”が使えなくなることもありますから、“裏技”なしでも仕事が回るように資料を作るのが基本です。

「作業だけでなく、具体的な事例(こういった場合はNG/OKだったなど)をマニュアルに入れてくれていたのがよかった」(20代女性)
「上手くいかなったときの解決法も共有する」(30代女性)

企業サイトなどのFAQも、具体的な事例があることにより、もしもの時に役立ちます。同じように実際に体験した人しか分からない細かい事例を書いて残しておくことは、いざというときの力強い味方になってくれるようです。

資料編:クラウド&オンラインツールを活用!

資料は必ずしも紙とは限りません。社内にクラウドやオンラインのツールがある人は、それを活用しない手はない、という意見も。

「紙にまとめると書類ごとどこかに行ってしまう場合があるので、グループで共有のプロジェクト管理ツールを作っておくといいと思います」(30代女性)
「資料は消されたり移動されたりするので、社内のオンラインスペースに残しています。のちのちの手間を省くため、引き継ぐ人へ限定でなく、新入社員向けマニュアルとしてまとめています」(40代女性)

何も知らない新入社員向けに最初から資料を用意しておけば、引き継ぎのときも問題なく使えるということですね。中には「引き継いだときから、変更があるたびバージョンアップをかけて、普段から改めて資料を作らなくてもいいようにしている」(20代女性)という人もいました。

口頭説明: 説明だけでなく、一緒にやってみる

資料では足りない部分については、口頭で伝える必要があります。そのとき相手に「分かったつもり」にさせてしまうと、トラブルのもとになってしまいます。立つ鳥跡を濁さず。美しく引き継ぐために気をつけるべきポイントは何でしょうか?

「いきなり細かいところから説明せず、森→林→木→葉のように、徐々に細かいことを説明していくようにしています」(20代女性)

混乱させないためには、説明の順序は大切です。口頭説明の際、途中で質問タイムを設けるという人も。説明をしながら一緒にやってみる、という人も多かったです。

スケジュール管理:可視化で進捗を共有!

異動日や退職日が決まっているときこそ、スケジュール管理も引き継ぎ成功のキモに。

「1か月前から共有の予定表に、引き継ぎスケジュールを入れています」(40代女性)
「ルーティンワークであれば、3回は回せるスケジュールにしています。自分でやりながら説明して1回、やってもらいながら見るのを1回、1人でやってもらってもう1回。合計3回を想定しています」(30代男性)

ガントチャートとは、プロジェクト管理や生産管理など、工程管理に用いる表のこと。横棒で作業の進捗状況を示します。

分かったつもりにさせないためにも、引き継ぎ先の人が1人でできるかどうかのチェックは必須項目。相手の理解状況を把握することは、トラブル防止のためにも必要です。また日常業務との重複具合も、スムーズに引き継ぎを進めるための大切なポイントに。

「他の業務との重なり具合を把握するために、ガントチャートで可視化するようにしています」(30代女性)

ガントチャートとは、進捗状況を横棒で示した、プロジェクト管理などに用いる表のこと。共有スケジュールにせよ、ガントチャートにせよ、可視化して進捗を共有することが大切なようです。

引き継ぎで、後任者のスキルチェックもできる

実際に引き継ぎをする中で、こんな教え方がよかったという意見もありました。

「マニュアルだけ渡して、あまり教えすぎないのも一つの手。自分で資料を調べたり考えたりできるスキルがあるか、引き継ぎを通して新人のカンの良さを知ることができました」(40代女性)

逆に引き継ぎトラブルでは、「社内で分かる人がいなくなっていた」(30代女性)というよくある話のほか、「年間予算の根拠がしっかり引き継がれていなかったため、年度末の予算調整時に問題が露呈した」(30代男性)という怖い話も……。

引き継ぐ人も引き継がれる人も、仕事っぷりを問われる「引き継ぎ」。トラブルにならないよう進めてくださいね。

ミノシマ タカコ
モバイルコンテンツ業界生まれ、ウェブ業界育ち。企画・ディレクション・運営業務等を経験し、現在はフリーライターとして活動中。主な執筆分野は女性、ライフスタイル、旅行など。