仕事は真面目にやっている。それなのに評価が低いと悩んでいる人はいませんか。「言われたことしかしない、主体性に欠ける人」「積極性がない」などと評価されがちだとしたら、あなたがやるべきこととは……?

世の中は、仕事が最も大切なことだと思っている人ばかりではない。

……冒頭から何を当たり前のことを書いているのだと、お叱りを受けそうですが、意外と忘れがちです。ただ、注意をしなくてはならないのは、そういう人の中には「仕事をサボりたい」というタイプと「仕事だけに人生を捧げたくない」というタイプがいて、中身は全く違うのに、表面上では「一生懸命仕事がしたいと思っていない」人に見えてしまうということ。

世の中は、仕事が最も大切なことだと思っている人ばかりではありません。

特に後者は「与えられた仕事はきちんとやるけれども、それ以外にやりたいことがあるので、必要以上に仕事に時間を割きたくない」と考える結果、一緒に仕事をしている人たちからは「やる気がない」とか、「主体性に欠ける」などの指摘とともに、低い評価を受けがちです。下手をすると「与えられた仕事はそれほどできないけれども、仕事への意欲は高いし、職場にいる時間も長くても平気」と思っている人よりも悪い印象になってしまう、なんて惨事も起きかねません。人生において、“仕事への優先順位が低い”というだけでダメな人だという烙印を押されてしまっては、たまったものじゃないですよね。

こういうことを書いてしまうと「職場に何をしに来ているのか。仕事をして報酬を得ている社会人なら、何をおいても仕事を優先順位の最上位にすべきだろう」と怒る人も出てくるはず。多様な価値観を認めましょうと声高に叫ばれている割には、組織の中では「仕事第一」と考える人が圧倒的多数のようです。私も仕事が第一であると、その場を取り繕っていればいいと考える人も多いでしょうが、それはそれで精神的に疲れてしまいそうです。

「仕事ができる人に見られる」ためのコツとツボ

仕事第一ではないが故に、周囲の評価が低くなってしまう人が気をつけなければならないのは、「仕事をサボりたい」と思っている人と同列に扱われないようにすること。冒頭にも書きましたが、この2種類のタイプは同じように見えがちです。なので、そことは目に見えて分かるように差をつけておきたい。

まずトライしてほしいのは「速く仕事をする」ことです。仕事をサボりたい人は与えられた仕事を目いっぱいの時間を使ってやりたがります。速く片付けてしまうと次の仕事を言いつけられかねないからです。

というわけでここでは「仕事第一ではないが、決して仕事をしないわけではない、むしろ頑張って仕事をしている」とアピールする必要があります。速く仕事を片付けて、「やっています」と周囲に分かるようにすることから始めましょう。

場合によっては、サッサと帰りたいから仕事を速くやっているんじゃないかと、別の意味でのうがった見方をされそうですが、周囲よりも明らかに仕事を速くこなす人を見て、「サボっている」とか「やる気がなさそう」と思う人は、まずいません。仕事のスピードを上げることによって、印象を変えることができるようになるのです。

次に解決しておきたいのは「主体性」の問題です。仕事が速くなり、周囲の評価が「サボり」や「やる気」ではなくなったとしても、次のセリフが待っています。

「言われたことしかしない人だから、主体性に欠ける」

仕事を第一に考えていない、積極性がない、だからダメだという評価を支えるためには(実際はそうではないにせよ)もっともらしい理由に見えてきます。では、その評価を変えるための打ち手は何かあるのでしょうか。

仕事を自分でコントロールできるようになれば“楽に”なる

話を少し戻しますが、仕事のスピードを上げようと思うと、あらゆる部分で効率化を図ろうとするはずです。例えば、毎日決まって行われる作業だと事前に分かっていたら、それを定型化しておくとか、先にできることがあれば、余っている時間で先に処理を済ませておくとか。決裁者が多くて仕事がスタックしがちな案件だと、事前に根回しを十分にしておく、もしくはステークホルダーの調整に時間を割くなど、結果的に「自分で考えて」、さらに「先回りして」仕事をするようにならないと、仕事のスピードは速くならないのです。与えられた仕事をただ漫然とこなしているだけでは、サッサと仕事を終えることはできません。

要は、自分で仕事をある程度コントロールできるようにならなければ、目に見えて仕事が速くできるようにならないとも考えられます。そうするためには当然「主体的に仕事に取り組まざるをえない」ですし、結果として「自ら率先して仕事をやっている」ように周囲からも見えるはずです。

ずるい言い方をすれば、同じことをやっていても「周囲からの見え方を意識して」行動することで、サボりたいだけだろう、やる気なさそう、定時上がりで何しているんだ、と言うネガティブな評価を、一掃できる可能性を秘めているのです。

ここまで読んで、「いやいや、それほど仕事に取り組んでいると、それこそ時間がなくなって、仕事第一になってしまうよ」と失笑してしまう人もいるでしょう。そこで最後の一押し。

仕事が第一じゃないという言葉を「見える化」してしまう

仕事第一ではない、という考えかたに異を唱える人の中には、「じゃあ、仕事以外に何をするの?」というとてもシンプルな疑問を添える人が多い。そう発言するご本人には、仕事以外にやることが思いつかないというケースはごく一般的。だとしたら、いくら仕事が速くできても、主体性を見せてやる気をアピールしても「仕事よりも大事なことがある」状態を納得してもらうことは難しくなります。

一番いいのは「仕事以外の大事なこと」を見える化、要は公言してしまうことです。突き抜けた趣味を持っている、スポーツなどに熱心に取り組んでいるなど、明らかに「ああ、あの人といえば、あれだね」というものを持っているのが分かると、仕事以外の大事なことは尊重されますから。プロ級であるとか、(その筋の)業界でも有名人であるとか、そのレベルに達すると、職場にそういう人がいるということそのものが、同僚たちの自慢になるくらいです。もちろん、取り組んでいることの内容によりますが……。

「仕事以外に大事なこと」がある人は、それを職場で公言していまうことをオススメします。

先週のコラム(「真面目にコツコツ」働くあなたが昇進できない理由)にも書きましたが、「よく見える人は良く見える」のです。相手は分かってくれるだろう、ちゃんと自分を見ていてくれるだろうという幻想は、捨てなければなりません。そうでなければ「仕事が一番の人生なんて、寂しいと思いませんか」というフレーズを、仕事をしたくない、できればサボりたい、役に立たないけど職場に居座りたいと考えている人たちと同じだと、勘違いされてしまうのですから。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。