大人の街・銀座には、素敵なレストランも数多い。……が、ランチでビジネス利用となると、銀座という場所柄、優雅なマダムに囲まれながら、というのも場違いなもの。 今回はその銀座で、ビジネスユースできて招く人を選ばない、重宝する店をご紹介。ナビゲーターは、dancyu誌で活躍する鹿野真砂美さんです。
大切な人を招くビジネスランチは、ゲストもホストもうれしい、使い勝手のよい中国料理店で。この連載では、ビジネスランチの4つのオキテ【立地がよい】【個室がある】【快適なサービスとホスピタリティ】【ランチ時でも予約可能】を網羅した、2軒のお店「ウェスティンホテル東京 龍天門」「礼華 青鸞居」を例に、その魅力とお薦めポイントを紹介してきた。今回は、誰もが知る銀座の名店の登場だ。
銀座6丁目。高級百貨店「バーニーズ ニューヨーク」や、和洋中の人気飲食店が入る交詢ビルの5階に、「赤坂璃宮 銀座店」はある。繁華街の商業ビルと聞くと、アクセスはよくても、少しざわざわしていそうなイメージがあるが、そこは銀座。喧騒とは無縁の、ゆったりとした店構えで出迎えてくれる。
店内は白に黒、ブラウンを基調とし、華美になりすぎないシックなインテリアは、男性女性、招くゲストを選ばない。中国伝統の四合院様式をモチーフに、50席のホールを囲むように大小7つの個室が備わっている。この個室が、ランチタイムであれば個室料金なし(!)で利用できるというのだからうれしい。4~6名で利用できる部屋から、30名までの利用が可能なパーテーション式の大きな個室まで、ランチとはいえ銀座でこの使い勝手のよさは、かなりのポイントだ。
オーナーシェフは、日本における広東料理の第一人者として知られる、譚彦彬氏。中国本土や香港で買い付ける食材はもちろん、日本の食材も駆使しながら、限りなく本場の味で提供される、繊細かつ豪胆な料理にファンは多い。とりわけ、海鮮やフカヒレ、焼き物には定評がある。今回紹介をするランチの桂林コース(3500円、税別)でも、その魅力の一端を味わえる。
前菜には自慢の焼き物、続く点心2種、スープ、月替りのメイン料理に〆のチャーハン、5~6種類から見て選べるデザートまで、充実の6品構成。平日のランチコース4種類の中では一番リーズナブルなコースだが、商談、女性同士の会食、部下を連れだった社内ミーティングなどの利用は、実際このコースが一番多いそう。
電話予約の際にコースを指定しておくと、当日はメニューカードを添えてセッティングをしてくれるほか、例えばクライアントが「海老が苦手なのでチャーハンを別のものに変更してほしい(メニューによっては差額が生じる)」「13時までには店を出たい」といった細かいリクエストにも対応してもらえるので、希望があれば臆せず事前に相談したほうが、当日もなにかとスムーズに事が運ぶだろう。
ドリンクは、グラスワインや中国茶のほか、ハーブ コーディアルが揃っているのも、女性にはうれしいポイント。赤絵を施したオリジナルの器もかわいらしく、サービススタッフの赤いチャイナドレス姿も、思わず見ほれてしまう美しさ。落ち着いた空間に華を添えてくれる。
また、商業ビルに入る飲食店は、洗面所が店舗の外にある場合が多いのに、こちらは店内に完備。おいしい料理と和やかな雰囲気から一転、外に出て気をそがれるということもない。印象に残るビジネスランチをセッティングしたいなら、細かい話だけれど、こういうことって意外に大事なポイントでもある。
至福の焼き物、点心。5~6種選べるデザートもうれしい
璃宮特製前菜の盛り合わせ。合鴨肉の梅肉ソース添え、自家製窯焼きチャーシュー、ゆで鶏のネギ生姜ソース添えに、野菜の酢漬けと、八角で風味づけをした花豆。焼き物に定評のある店自慢のチャーシューは必食。
2皿目は、本日の蒸し点心二種。日替わりで供される点心。この日はトビコのせ帆立の蒸し餃子と、海老蒸し餃子。そのままでもしっかりと味がついているが、別添えの自家製辛味噌をつけても美味。
3皿目の本日のスープ。この日は干し貝柱と豆腐のとろみスープ。えのきや絹さやも入り、優しく、ほっこりと温まる。
メイン料理は、オイスターソースと中国醤油を効かせた細切り和牛と彩り野菜の炒め。こちらは月替りで、帆立や白身魚などの海鮮が登場することも。油を控え、軽やかな味わい。
璃宮特製五目入りチャーハン。桂林コースの〆はチャーハンが中心。苦手なものがあれば抜いてもらったり、差額は生じるが別のものに変えるなど、調整してもらえる。
デザートは常時5~6種類。全ての種類はプレートに載せられ、説明してもらいながら選ぶことができる。この日は杏仁豆腐、フレッシュマンゴープリン、タピオカ入りココナッツミルク、キンモクセイのゼリー、洋梨と白キクラゲの薬膳シロップ漬け。なかなか決まらずに悩む人も多いとか。デザートを食べない人はコーヒーか紅茶を。
食後のデザートとは別に、最後に小さな焼き菓子も供される。
「ビジネスランチには中国料理」をテーマに、4回にわたって3軒のお店をご紹介してきた本連載。 リーズナブルなランチだから、気になるお店は、 まずはプライベートで食事に行き、味、雰囲気を体感してみるのもお薦め。 こうした気の利いたお店が一つでも二つでも頭の中にあれば、いざというときにも、 慌てることなくスムーズに計画ができて、幹事の株も上がること間違いなしですよ。
東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル5階
電話/03-3569-2882
ランチ/11:30~15:00(L.O.)、日・祝は11:30~16:00(L.O.)
ディナー/17:30~22:00(L.O.)、日・祝は16:00~20:30(L.O.)
年中無休
紹介した平日ランチの桂林コース3500円(税別)。このほか、飲茶コース4500円、桂花コース5500円、料理長おまかせコース8000円(すべて税別)などがある。サービス料10%(平日ランチタイムはサービス料なし)。個室料金は通常1室5000円だが、平日ランチタイムは無料。個室利用を希望する場合は予約時にリクエストを。
ライター。旅行誌などの編集を経てフリー。大好きな食の分野を中心に活動中。dancyu誌での執筆は1998年から。合間で6年ほど編集部にも在籍し、さまざまな食の記事を手がけた。レシピ本の制作にも携わり、最近では「銀座 マルディ グラのストウブ・レシピ」(世界文化社)の文・構成を担当。おいしいものをつくること、食べることが生きがい。