2016年が始まりました。今年1年、あなたはどんな風に働こうと思っていますか? 新年最初の連載コラムは、一生懸命働いてきた、仕事熱心なあなたにこそ始めてほしい“習慣”についてお伝えします。

年の初めの原稿ということで、この1年「働く」ということに対して、どのように向き合っていけばいいのか、このコラムで一緒に考えてみたいと思います。そうは言ってもまだ、おとそ気分も抜けない感じでしょうから、シリアスにというよりは、肩の力を抜きつつ、本音でそのスタンスを整理してみるところから、始めてみましようか。

今年も本コラム&PRESIDENT WOMAN Onlineをよろしくお願いいたします。

このコラムのメインターゲットである、キャリアの曲がり角に差し掛かった女性の皆さんと話をすることも多いのですが、「とても疲れている」とこぼす人たちには、2つの共通点がありました。まず「何のために仕事をしているのか、だんだんと分からなくなってきた」というセリフです。

「当初は、夢も希望もあった。あれもこれもしたいと思っていたし、できるものだと考えていた。でも、今はもう限界が見えてきたというか、できることはこのくらいかな、と思ってきた。やりたいことをしているというよりも、会社が私に求めていることをこなすだけになってしまっている」と続くのです。

私も似たようなものだ、と思わずうなずいてしまう人も多いのではないでしょうか。当然のことですが、仕事は自分のためだけにやっているわけではありません。しかし誰のために、そして何のためにやっているのかが分からなくなると、その徒労感は半端ないものになってしまいます。

人生における「仕事」の位置も、変わりつつある

何のために仕事をしているのか分からなくなった――そう書くと、読者の中には「いい歳して、何を子供じみたことを言っているのか」と怒る人もいるかもしれません。しかしある程度の経験を経て、仕事ができる、少なくとも周囲から一人前だと見なされるようになった今だからこそ「何のため、誰のため?」と自問してしまうのだと、私は思っています。少なくとも、キャリアや報酬、社会的地位といった、いわゆる自分のためだけに仕事をしていた時期を過ぎたと自覚したタイミングだから、仕事について改めて考えてしまい、行き詰まってしまう。そうすると、次の悩みに直面します。

次の悩みとは、「そもそも私にとって仕事とは何だろう?」というもの。学生時代、多くの人にとって、「働く」といえばアルバイトのことであり、仕事の中身や社会的な価値よりも、待遇や働く環境の良さなど以上のことは考える必要はなかったはずです。就職活動を経て、社会人になる時に改めて「働く」ことについて考え、できる限り自分の価値を生かすことができ、できれば社会的意義もあり、かつ、自らのステイタスも確保でき、というようなことを意識しつつ、働くことが、生活の中で「そのほとんどを占めるものになる」とイメージできたはずです。しかし、歳を経るごとに、横並びだった仕事への意識が、バラバラになってきます。

ライフの中のワークの割合を、まずは少しだけ考えてみる

同期入社の人たちを思い出してみてください。転職して今は別の会社で頑張っているという人もいれば、起業して成功し、それこそメディアなどでキラキラと紹介されている、という人もいるでしょう。結婚して仕事の量を減らしているという人も、出産して育児休暇中、もしくは復帰して時短社員として頑張っているという人もいるはずです。そう、それがいいか悪いかは別の問題として、男性よりも女性の方が、ライフステージによって、仕事の質や量もまちまちになっているのが、現状です。一言で「仕事とはこういうものだ」と、あるべき論を語っても仕方ない。自分なりに「最善のバランス」を考えて見つける時期なのです。

「ワークライフバランス」という言葉は、すっかり普及した感があります。が、本当は「ワーク=ライフ」ではなく、ライフの中にワークが含まれていると、私は考えています。だとした時に、今年は皆さんのライフの中のワークは、どのくらいの割合になりそうか。不確定な要素が多いということは承知の上で、年初に少しだけ考えてみましょう。

人によってはキャリアアップの正念場、「今年は仕事の量を増やすぞ~!」と意気込む人もいるでしょうし、場合によっては、仕事と自分の関係を見直したいと、その量をセーブしたいと考える人もいるはず。ただ、大事なことは“正解はない”ことを忘れないようにすること。「だいたいこんな感じかなぁ?」という程度にまとめるのがオススメです。

折り合いをつけるための指針を、自分で作り出すタイミング

企業規模や本人の能力にもよりますが、ある程度のベテランになり、管理職(目前)ともなってくると、仕事は自分だけで完結できなくなってきます。逆に言うと、それだけやりがいもあり、できることも増えるのですが、人間関係の面倒や、社内政治のゴタゴタに巻き込まれたりもして、ストレスが大きくなってしまう、という側面もあります。

そういう時、真面目な人ほど「目いっぱい頑張ることで難局を乗り切ろう!」と考えがちなのですが、本人の力だけではいかんともしがたい場面も徐々に多くなってくるはずです。そういう時に、自分と仕事との位置付けを明確にしておかないと、折り合いをつける指針がなくなってしまう。それは危険なことです。

自分と仕事の関係性を、自分なりに整理してみる

健全なレベル、いや、多少無理をして頑張っても納得ができるために、自分と仕事の関係性を、自分なりに整理してみましょう。何のために働いているのか、誰のための仕事なのか、そして、あなたの「ライフ」の中ではどのくらいの割合が「ワーク」なのか。紙に書き出して、簡単にメモを作ってみてください。そして折に触れて、そのメモを見返すようにしてみてください。場合によっては、四半期程度のサイクルで見直してみてもいいでしょう。

今の自分にその都度正直になって、次の自分の行動指針を決める。簡単かつ当たり前のようでいて、意外にできていない難しいことです。今年、その習慣をつけることから、まずは始めてみませんか。

あなたと仕事の関係性を、紙に書き出してみてください。
サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。