誘わなければ始まらない
「仕事上、この人とどうしてもお近づきになりたい」と思ったら、たとえ相手が男性であっても誘ってみるべきでしょう。
これから話すことは私の失敗談。お手本とは言えませんが、かなり気合を入れて相手を誘った事例です。
20代後半に、転職したいと思っていた会社の副社長と、たまたまあるご縁で知り合いました。私は「その会社になんとしても入りたい!」という強い思いがあり、副社長に自分を売りこむため、初顔合わせから1週間後に「お食事でも一緒にいかがですか?」とお誘いしました。
誘われた副社長はさぞかし驚いたことでしょう。20代の小娘から食事に誘われたのですから! 今考えると、なんて大胆なことをしたのかと思います。
でも、その頃の私は「自分をどうやって売りこもう」ということで頭がいっぱい。相手にどう思われるかなんて考えず、とにかくお近づきになりたい一心でした。
私の計算では、食事をしながらアルコールで気分がやわらいだ頃に、
「御社に興味があるのですが……」
と話すつもりでした。ところが計画は大外れ。副社長は、お酒が一滴も飲めない人だったのです!
結局、なかなか言い出せず、ようやく帰りのタクシーの中で、
「御社では新しいメンバーを募集していないでしょうか?」
と切り出したところ、
「つい2、3か月前に新人を3人雇ったところなので募集はありません」
と断られ、私の目論見はあっという間に音を立てて崩れ落ちました。
ところが不思議なもので、その後、まったく別の場所で、今度はその会社の社長とお会いする機会がありました。私は「これぞチャンスの再来!」と思い、食事にこそお誘いしませんでしたが、社長に自分を売りこんで入社を決めました。
この話のポイントは、失敗しようがしまいが、とにかく仕事でお近づきになりたい人がいれば、相手が男性であっても積極的に誘うべき、ということです。
一線を引き、「借り」を作らない
ただ、女性が男性を誘う場合は気をつけなければなりません。「俺に気があるのかな?」と思われるのは、仕事上マイナスですので、極めてクールに「今度、ご飯でもいかがですか?」と、さばさばした雰囲気を出して誘いましょう。
食事をご一緒して、もし誤解されたと感じたら、お店を出てすぐにタクシーを拾い「ありがとうございました」と言って、相手をタクシーに押し込むのも手。なよっとしたところを見せると、男性に付け込まれるので気をつけてください。
私は仕事上でもっと親しくなりたいと思う人がいると、自分からすぐに食事に誘うことを習慣にしています。打ち合わせのテーブルを囲んで向かい合っているよりも、食事の時間をともにすると距離が縮まるからです。
男性はいったん女性に心を開くと、その女性への警戒心が薄れ、私生活のこともたくさん話してくれるようになります。家族のこと、趣味のこと、ペットのこと、バカ話……。男性同士ではいくら親しくなっても、ここまで話さないのではないでしょうか。日本はまだまだ男性社会ですから、男性は、同じ男性に対して自分の弱みを見せてはいけないと、鎧を着て仕事をしているのかもしれません。
私生活のことまで知っている相手には、さらに心を開きたくなるのが人間というもの。ある意味では、女性のほうが男性と信頼関係を築きやすく、仕事のコミュニケーションもはかりやすいと言えるのです。
ただし、ここで大事なのは、自ら誘った場合は必ず自腹を切ること。ほとんどの男性は女性から誘われても支払いの伝票を握るでしょう。そうしなければ、男性としてのプライドが保たれないからです。
しかし、こちらから誘った場合は、伝票を取り返してでも自腹で相手の分まで払うこと。誘っておいて、相手におごってもらうようでは、逆に借りができてしまって、せっかく縮めた距離がまた広がってしまいますから。
※本連載は書籍『30歳から自分を変える小さな習慣』(島村美由紀著、プレジデント社刊)からの抜粋です。
商業コンサルタント。1956年、神奈川県川崎生まれ。雑誌・書籍の編集業務、シンクタンク研究員を経て、商業コンサルタントとして独立。株式会社ラスアソシエイツ設立、代表取締役就任。都市計画、商業施設計画、店舗業態開発などのコンセプトワークやトータルプロデュースを手掛け、大規模開発を成功させる。ラゾーナ川崎プラザ、羽田空港第1旅客ターミナルビル「スタースイーツ」など、実績は多岐にわたる。著書に『30歳から自分を変える小さな習慣 運を引き寄せる女性の6つの法則』(プレジデント社)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1713)がある。