どんな仕事人生を歩むのか、女性にはいろいろな選択肢があるだけに、悩みは深い。そんなときは、目の前のことだけではなく、遠くに視点をもっていきたいもの。生涯で考えたら、どの働き方が理想なのか。その判断材料になるお金のこと、そして“自分の軸”に沿ったキャリアの積み方について、考えてみましょう。(アドバイスしてくれる人:はぴきゃり代表取締役・金澤悦子さん、ファイナンシャルプランナー・大竹のり子さん)

[キャリアコース4]正社員→フリーランス

生涯年収:1億3718万円(退職金なし)年金:7.5万円/月
出産を経てフリーランスになる場合。再就職コースに比べると、生涯収入は約1500万円多くなるが、将来受け取れる年金はぐっと少ない。ただし定年がないため長く働けるメリットはある。

※正社員女性6.1%が「理想の働き方」と回答

●出産時期は自然に任せる

キャリアの両立と出産のタイミングについて悩む女性は多いはず。そんな女性たちに、金澤さんはアドバイスする。「たとえ突発的に妊娠したとしても、自分なりのキャリアの軸があれば対処方法はいくらでもあります。先延ばしにして産めなくなることもありますので、できたタイミングがベストのタイミングというぐらいに考えておいたほうがいい」。迷ったら産んでしまうのも手か。

●社員時代から未来のお客さんづくりを

「フリーランスで最も大事なのはお客さんがいること。会社員時代からお客さん候補とつながっておけば、フリーになったときに『だったらうちもお願い!』となるケースが多い。フリーになる前に見込み客を確保しましょう」と金澤さん。起業を目指す場合も、本業の傍ら副業で始めてみると、手ごたえをつかめるし、リスクを軽減できる。見込みがない場合には会社員を続ければ問題なし。

●育休中にキャリアの棚おろしを

これまでバリバリ働いてきた正社員にとって、育休は落ち着いてここまでの振り返りができる貴重な時間。「冷蔵庫の棚おろしのように、自分という冷蔵庫にあるものを、まず全部出して、いるもの、いらないものを仕分けしていく。そのうえで最も気になる自分の資質を見つけられると、育休明けの働き方が全然変わってきます」(金澤さん)。復帰せず、フリーの道を歩む場合はなおさら。

●保育園に入れてからフリーになるべし

保活(子どもを保育園に入れるための活動)は、育休中の母親にとって頭の痛い問題。フリーランスになろうとする人はとくに注意が必要な点がある。「保育園の入園は、待機児童の多いエリアだとフリーランスは不利。結局入れなくて思うように仕事の時間が確保できない、という話はよく聞きます。フリーになるなら会社員のうちに保育園に入れてからが鉄則」(大竹さん)

●起業するワーママも増加中!

大企業で活躍しながらも、子育てとの両立に行き詰まって、あるいは男社会の壁にぶつかって、起業の道を選ぶ女性も増えてきているのだそう。お金のためだけではなく、社会に貢献したいという気持ちから起業する社会起業家も多い。仕事ができる頼もしい女性ほど、会社に振り回されず、場所にもとらわれない柔軟な働き方を模索し、新しい働き方を自分の手でつくり出している。

キャリアを積むコツ

「フリーランスでも起業でもそうですが成功への近道は、とにかく“続けられる”こと。“楽しそう”とか“時間の自由がきくから”といった動機で選ぶと、あとで必ず自分の首を絞めることに。自分が心の底から紹介したいと思う商品なのか、それが自分の得意な手法なのか、その辺の設計はちゃんとしたほうがいい」と金澤さん。結局、目先の条件で選ぶと、環境が変わるたびに働き方を変えることになり、キャリアがブツ切れになってしまう。

【写真左】はぴきゃり代表取締役 金澤悦子さん【写真右】ファイナンシャルプランナー 大竹のり子さん

自身もフリーランス経験のある大竹さんは「フリーランスは自分で何でも調整できるし、うまくいけば収入が大きく増える夢が描ける」と、その良さを語る。その土台となるのが、やはり20代のキャリアだ。

「20代から重ねてきたキャリアと自分のライフプランがリンクしたときは、うまくいくでしょうね。ただし時間を切り売りするような働き方でなく、ちゃんと積み上がっていく形のビジネスを模索することが大切」(大竹さん)

マネー管理&投資のコツ

会社員時代より毎月入るお金は多くなったのに、感覚的に苦しい……、フリーランスになった人の誰もが口をそろえて言うせりふだ。

「会社員の場合、給料は全額自分のお金ですが、フリーランスは入ったお金から必要経費に回さないといけない分があるので、そこが会社員と大きく違う点。必要経費には、事務所の家賃や打ち合わせの交通費もありますが、それとは別に負担が重いのが国民年金や健康保険の保険料。特にフリーランスになりたての年は、その前年に会社員だった分の住民税の請求がくるので、かなりきつくなります」(大竹さん)

さらにフリーランスは年金が少ないので「個人型の401kや国民年金を厚めにしておいたほうがいい」と大竹さん。また会社員は病気で働けなくても有休や傷病手当金で、ある程度補てんされるが、フリーランスは病気になると、いきなり収入が途絶えるため、それを見越して医療保険には厚めに入っておいて、とアドバイスする。

はぴきゃり代表取締役 金澤悦子
東京都出身。1991年、リクルート入社。営業に従事し、新人MVP賞を受賞。広告営業局局次長、広報室室長を歴任するも、仕事との距離感がつかめず心と体を痛めてしまう。これをきっかけに、「幸せに働くってどういうこと?」という問いへの答えを求め、2001年、総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ(現ウーマンタイプ)」を創刊、編集長に就任。05年独立。
ファイナンシャルプランナー 大竹のり子
1975年生まれ。編集者を経て独立。だれもが気軽に利用できる女性による、女性のためのマネー相談サービスを実現したいとの思いから、2005年、エフピーウーマンを設立、代表取締役に就任。経営の傍ら、講演や執筆、TV出演など、幅広く活躍している。『マネーセンスを磨けば、夢は必ずかなう!』(東洋経済新報社)などお金の分野での著書は40冊以上。