数字を上げるためのあの手この手

法人営業に移ってからは、いろんな会社さんにアポイントの電話をかけ、インターネット広告のプランを提案しました。受注できたときは、実際に広告を載せ、その効果を検証したレポートをお持ちし、また新たな提案をします。

ブラケット取締役 塚原文奈さん

仕事はおもしろかったですね。興味のある会社に次々と電話しました。たまに“ガチャ切り”されて取り付く島もない場合もありましたけど、今まで電話したことのない大手金融企業に連絡するなど、新しい経験ができました。

私なりの工夫としては、ECサイトの制作会社のホームページからクライアントになりそうなところを見つけました。制作会社のホームページには、どういう顧客のサイトをつくっているか、その実績が載っているので、中に小売店がないか調べていきます。彼らは販促のために広告を打つことが多いから、クライアントになってもらえる見込みが高いんです。ほかには、雑誌をチェックしてインタビュー記事などに登場しているマーケティング担当者を探しては電話してみました。その人の名前を告げますから、一応つなげてくれるんですね。それで受注できることもありました。

おかげで数字を出すことができました。もちろん、周りの人の協力もあったんですけど。

怒られたことや失敗したこともたくさんありますよ。飛び込み営業をしてみたくて、あるビルの大企業に飛び込み営業をかけたら、そこは先輩がすでに持っている顧客で、すごく怒られました。営業してたら、みんなそんな経験があると思いますけど。

フリーランスでどんな仕事にも挑戦

サイバーエージェントに6年弱いて、30歳になったのを機にフリーランスに転じました。会社の看板ではなくて、自分の看板で勝負してみたくなったんです。出産のことも考えると、新しくチャレンジするのは今しかないと思いました。

頼まれる仕事は何でもしました。ネット系の新しい会社の事業開発とか、メイドインジャパンの商品を台湾で売るお手伝いとか。なぜかテレビ局の出演者のキャスティングも頼まれました。

ネット系企業から依頼された仕事だと、新しい事業を立ち上げたいからアイディアがほしいというものや、ネット広告の配信や流通の技術、いわゆるアドテクノロジーの開発。ほかに広告のキャンペーンをしたいからプランニングしてほしいとか、広告代理店の担当者が来るんでマーケティング担当として対応してほしいという依頼もありました。

社歴の浅いネット系企業だと、ちょっと新しいことをやってみたいけど、社員を充てる余裕はないという会社がけっこうあるんですね。身軽なフリーランサーは先方にとって都合がいいんです。何年契約というわけではなく、半年とかの短期契約ですから、単発の仕事を頼むのに重宝するのだと思います。

愚痴を言わないように

フリーランスで仕事をはじめて1年半ほどたったとき、ブラケットの仕事を請け負うことになりました。知り合い経由で、新しいプロジェクトがあって、そのプロジェクトマネジャーを探しているというんです。初めて会った代表の光本から、「業務委託としてではなく、一緒に働かない?」と言われ、「はい、やります」と。即答でした。それまでも社員で働かないかと声をかけてもらったことはたくさんありますが、仕事がおもしろいことが第1優先で、組織に所属しようとは考えませんでした。

ところが光本と話したときは、「この人と働きたい」と、もう直感ですね。そのときの代表の印象は、謙虚で物腰は柔らかいが、やりたいことは熱く語る人。見かけと中身にギャップがあって、外は草食系だけど、中身は肉食系といった感じです。ロールキャベツみたいな人ですね(笑)。

この会社の組織は代表がいて、私がいて、あとはフラット。30人のチームを持っている感じです。前職でたくさんの部下を持って指導する経験はなかったので、至らないところも多いと思います。気をつけているのは、愚痴を言わないこと。何か問題があったとき他人のせいにしないで、「もう少し自分はこうしたほうがよかったかな」と思ったほうが次につながる気がしますね。

●塚原さんのキャリア年表

1980年(誕生) 栃木県出身
2004年(24歳) 学習院女子大学卒/サイバーエージェントに入社(広告代理店事業部、マーケティング事業部などを経てアドネットワーク事業の立ち上げに携わる)
2008年(28歳) 結婚
2010年(30歳) フリーランスに(ネットを中心とした事業開発とプロジェクト遂行を引き受ける
2012年(32歳) ブラケット入社
2013年(33歳) 取締役就任

■仕事道具
JINSのPCメガネ。パソコンの画面を見ている時間が長いので必需品。