壱番屋創業者秘書をはじめ、30年以上に渡りその道を究め、日本秘書協会の「ベストセクレタリー」にも選ばれた“プロ秘書”中村由美さんから、すべてのビジネスパーソンに通じる“秘書の素養”を教わります。

多種多様な仕事を、正確に進めるコツとは?

多くのビジネスパーソンの仕事は、単一作業ではありません。特に秘書の仕事は、書類の作成や整理などの事務作業から、上司のスケジュール管理や出張の手配、電話対応、来客対応、慶弔手配など、実に多岐にわたります。それら膨大な仕事を、期日に間に合うよう確実に同時進行できてこそ、プロの秘書。迅速かつ正確に仕事をこなしていくためには、作業の進め方を考える必要があります。

ちょっとした作業のうっかりが、後々大惨事を引き起こすことも。「6W3H」はそんな事態を防ぎます。

仕事を進める際には、常に「6W3H」を意識するといいでしょう。これは、文章を書くときにいわれる「5W1H」「誰が(Who)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」と基本的には同じこと。それに、経費や数量、関係者など、ビジネスパーソンならではの項目が加わります。

ミス・ロス・トラブルを防ぐ!

●なぜ(Why) 仕事の目的、方針、理由など、「なぜ」行うのか把握する
●何を(What) 仕事の内容、関係先など、「何を」行うのか把握する
●誰が(Who) 担当者、対象者は「誰なのか」を把握する
●誰と・誰に(with Whom)「誰と」「誰に」行うのかを把握する
●いつ(When) 仕事の納期や締め切りなど、期限は「いつなのか」を把握する
●どこで(Where) 仕事を行う場所は「どこなのか」を把握する
●どのように(How) 方法、手順を「どのように」進めるのかを把握する
●いくら(How much) 経費、費用は「いくら」かかるのかを把握する
●どれだけ(How many) 数量は「どれだけか」を把握する

「6W3H」を毎回書きだして確認する必要はありませんが、これらすべての解を把握できていれば、仕事に漏れがないことがわかります。また、「期日が早いからAの仕事から進めておこう」「上司に提出するものだから、余裕を持ってとりかかろう」「この作業は時間がかかるから……」など、優先順位を決める際にも有効です。「6W3H」をはっきりさせれば、作業の全体像が見えてきます。そのため、あれこれ中途半端に手を付けて、どれも期日に間に合わない……という最悪のケースを免れることができます。

電話やメールをする際にも、確認し忘れたことはないか、伝え忘れたことはないかというチェックに使えます。さらに、ダブルチェック、トリプルチェックを重ね、不測の事態を想定した時間の逆算ができれば、たいていのことは段取りよく、正確にこなせるでしょう。

「6W3H」は、仕事を進めるうえでの基本になるものです。そして、ミスは慣れてきた頃にこそ起こりやすいもの。社会人経験が長い方も疎かにせず、時には基本に立ち返って確認してみてください。

 プロ秘書からのメッセージ 
時には基本に立ち返って確認してみる

中村由美(なかむら・ゆみ)
コンサルタント会社の社長秘書を経た後、株式会社壱番屋に入社。創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕える。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。カレーハウスCoCo壱番屋創業者(宗次夫妻)秘書。著書に『日本一のプロ秘書はなぜ「この気遣い」を大事にするのか』(プレジデント社刊)(http://presidentstore.jp/books/products/detail.php?product_id=1730)などがある。