アドラー心理学に基づく、職場の人間関係を円滑にする9回シリーズのシンプルレッスン。心理学者アルフレッド・アドラーが説いた【自信】【勇気】【リラックス】をベースに、パフォーマンス学の見地から「自分の表現法」を教授くださるのは、自己表現研究の第一人者、パフォーマンス心理学博士の佐藤綾子さんです。2クール目に入った、今回のレッスン4のテーマは【自信】です。スマートな「自分」の伝え方を身につけて、仕事に生かしたいもの。是非トライしてみてくださいね。

レッスンのヒント

このレッスンは【自信】【勇気】【リラックス】の各テーマごとに1レッスン、計3レッスンが1クールとなっており、3クール(合計で9レッスン)で構成されています。設問に沿ってセルフチェックした後、あなたの心理傾向を診断し、その対策をコーチしていきます。

仕事でいいパフォーマンスをするために、まずは自己分析から始めましょう。自分をコントロールして、周囲を味方につけるほうが、人間関係をこじらせるよりはるかにメリットがあります。

自分の見せ方・伝え方にスタイルがある人は、どんな困難もうまく切り抜けています。読者のみなさんが、自信をもって仕事に打ち込めるヒントを、佐藤綾子がお伝えします。

Lesson4.自信その2

回答は4パターン【A.いつもそうである】【B.ときどきそうである】【C.たまにそうである】【D.全く違う】があります。セルフチェックの後は心理分析と合わせ、その対策もご紹介。自己分析して、明日からのあなたを、さらに輝かせましょう。

回答にはそれぞれ点数があります。3回のレッスン(自信・勇気・リラックス各1回が1クール)の終了後に総評があるので、各レッスンの点数を控えておくと便利です。

 Q.自分のよいところよりも、欠点が気になる

[A]いつも(1点)
[B]ときどき(2点)
[C]たまに(3点)
[D]全く違う(4点)

 

[A]の人の性格傾向と心理分析
手際よく仕事をこなして会社の会議でも堂々と意見を言い、時に人と対立しても自説を通す強い同僚を見ていて、自分は主張力がない、臆病だ、だから自分はダメだと落ち込むあなたですね。協調性と優しさがあるのに、自分のダメな部分だけを気にする性格です。心理学で「内罰欲求」が強いタイプと呼ばれる人です。悪いことを全て自分のせいだと考えるので、結果自分の欠点ばかりが気になります。

対策
まず、他人の長所や強みを見た時、すぐに同じ長所が自分にあるかとチェックする癖をやめてください。同じ長所があるかと自分に問うこと自体が、相手の価値を基準に自分を見ていることになるからです。あの人はあの人の素晴らしさがある、自分には別の素晴らしさがある、とまず自分に言ってください。そして長所を1つずつ、心を集中して口に出してみてください。例えば「主張はできないけど、人の話を聞くのがうまい」と。次は人の話を聞いた時に言われた言葉を思い出して、口に出してください。例えば周りからも「そうだ先週、『あなたがいるから職場の雰囲気が和やかでいいわ』と言われたな」という具合です。すると“人付き合いがうまい”“優しい”“傾聴力がある”“協調性がある”と直ちに自分の長所が4つも出ましたね。その調子です。

[B]の人の性格傾向と心理分析
ときどき自分の欠点が気になるあなたは、自分に厳しい人ですね。嫌なことや、つらいことも含めて自分を見つめるから欠点が気になっているのです。心理学でいう「変化欲求」が強いタイプです。つまり、今より向上しようと常に思っているからこそ、欠点が気になるのです。決して社会生活でうまくいかないタイプではありません。ただし、欠点を自覚していても直さなければ、単なる「お荷物性格」です。

対策
変化欲求が強く、自分に厳しい人は、会社にいてもどんどん力をつけていくからいいのですが、仲間や友人との会話で自分の欠点をいくつも口に出すと「自意識が強いな、誰も君のことそんなに気にしていないよ、欠点を直す方が大事でしょ」とお荷物に思われる時があるので、欠点を進んでアピールすることはやめましょう。自分が分かっていて、努力をすればいいのです。

[C]の人の性格傾向と心理分析
仲間付き合いのよいバランスのとれたタイプです。なんでも自分が優れていると思わないで、自分の欠点を気にして振り返れる人です。自信は強いけれど謙虚さもあるので、仕事を任され、人にも信頼されます。パフォーマンス心理学では、人とうまく付き合う力を「ソーシャルスキル」と呼んでいます。あなたはこのスキルが高いタイプです。

対策
明るく社交性もあり、引くところや謝るところも知っているので、日常ではほぼ問題はありません。ただ、失敗が続いたりするとつい、欠点だけに注目して落ち込むことがあります。誰でも1つや2つは欠点があるものさ、と割り切りましょう。でも、その欠点をしっかり紙に書き出して、「改善策」まで書き留めてみると、意外にも簡単に欠点を克服できることに驚くでしょう。例えば“欠点:忘れっぽい”→“改善策:メモを活用し、メモは必ず机の上や目の前のボードなどの見えるところに貼る”という具合に。

イラスト=吉岡ゆうこ

[D]の人の性格傾向と心理分析
あなたは自信もあり、活力にあふれ、集団の中で自分の意見を胸を張って言うことができるタイプです。ただ時に、心理学でいう「外罰欲求」の強すぎるタイプであることが多いので要注意です。「自分には長所しかない」と思っているため、何か不都合が起きるとすべて周りの誰かのせいにしたものの言い方をするでしょう。例えば電車が15分遅延して会社に遅刻したら「電車会社はきちんと運行してくれないと困るよ。だから私が遅刻したんだ」と考えますね。自分がもう少し注意して15分早く出ていれば済んだことです。ギリギリに出た自分を決して責めたりしないタイプです。

対策
知識、能力、体力、発言力などの社会で影響力を与えるのに必要な力を持っていて、それを自覚しているのはいいのですが「自分には欠点がない」と言いたげな態度は、場合によっては、周囲に「高慢ね」とか「自信過剰」と映ります。「私も昨日は大失敗してしまったの」などと、時には失敗談を進んで開示しましょう。上手に手伝ってもらえるように、至らない点もちゃんと見つめて、それを潔く口に出すことです。実力のあるあなたなのだから、そのほうが人柄も愛されます。


 まとめ 

人間は全ての非が自分にあると考えて自分を責める「内罰欲求」と、自分以外の誰かが悪いのだ、と非を外部に持ち込んで相手を責める「外罰欲求」のバランスの中で生きています。どちらも時と場合で必要な欲求です。

不都合を全て相手のせいにして自分は何も悪くない、と思い、またそのように言い過ぎる「外罰欲求」だけの人は、知らずに周りの人が逃げていきます。2つの欲求のバランスを取るのが本当の大人の女性です。


佐藤綾子 パフォーマンス心理学 博士
常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。近著に『非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義』がある。