精神科医で個人心理学者のアドラーが説いた【自信】【勇気】【リラックス】を軸に、全9回のレッスンで構成する「パフォーマンス心理学シンプルレッスン」。第1クール(Lesson1~3)を終了した今回は、ちょっとブレイク。賢人からの珠玉の言葉に学びましょう。

7月に行なった第1クールでは、次の3つの問いに答えてもらい、性格傾向と心理分析、その対策をレクチャーしましたね。

Lesson1【自信】の問い:「自分に自信が持てない」
Lesson2【勇気】の問い:「上司から新しい仕事を任されて気後れする」
Lesson3【リラックス】の問い:「ふと気付くと暗い顔をしている自分がいる」

今回、初めてこのサイトを見るあなたも大丈夫ですよ。上の3つの質問に、次の4択でお答えください。

[A]いつも(1点)
[B]ときどき(2点)
[C]たまに(3点)
[D]全く違う(4点)

 

3つの質問の答えが平均3.5以上だったあなたは、仕事で“見せる・見せたい”自分をよく理解しているバランスのとれた人。3.4未満だったあなたは、各レッスンで心理分析とその対策を紹介しているので、“見せたい”自分に近づけるよう、日頃の考え方のヒントにしてみてくださいね。3クール、全9回のレッスンが終了する頃には、仕事での人間関係がよりよく築けていることでしょう。

1クールが終了した今回は、レッスンを小休止。毎日忙しく働くあなたに、世界の賢人たちが残してくれた言葉をお届けします。レッスンの得点が3.5以上だったあなたも、また、そうでなかった方たちは特に、心の栄養剤にしてください。

“欠けたる”自分を許す術を知ろう

今回ご紹介する賢人の言葉のキモは、「自分が完全な人間じゃなければダメだという思い込みを捨てて肩の力を抜く」ことです。誰だって、一生懸命努力して、絶対的勝利を目指しながら仕事をしても、結果として駄目だったことはありますね。

私にもあります。ごく最近でお恥ずかしいのですが、まる1年かけてこれは絶対に多くの読者の支持を得られるだろうと確信して書いた単行本が、全く売れなかったこと。また、自分の貴重な仕事の時間を1カ月毎日1時間ずつ使って、事務所の新人を育てた揚げ句、「辞めます」と言われたこと。

パフォーマンス学を開始した30代の頃は、自分のやりたいアイデアが先走ってしまい、「どうしてあんなに猛烈なんだろうね」と悪口を言われたことが何度もありました。「パフォーマンス学って信仰宗教みたい」と言われて落ち込んだこともあります。そんな時に効いたのが次のひと言です。

「地上にては欠けたる弧、天上にて全き円」
英国詩人ロバート・ブラウニング『アブト・ヴォーグラー』より

これはブラウニングの『アブト・ヴォーグラー』という詩の一節です。既に英国屈指の詩人であったブラウニングは、ある時、当時の作曲家アブト・ヴォーグラーの音楽を聴いて大変感動を受けたのです。そして、猛烈に長い詩を書きました。

音楽は、その場で耳から聞こえて心に入ってくるものです。その音楽の美しさは、地上において、ブラウニングの詩才をもってしても、言葉で伝えることはできない。でも天上の神様は、その素晴らしさを完璧にご存じだというわけです。

とにかくこの詩は非常に長いのです。そこで世界中のブラウニングファンは「地上にて~」の部分だけを引用し、今やこのフレーズは、世界の知的著名人のお気に入りになっています。

大学時代にこの詩を一度読んだのですが、最近は103歳になられた聖路加国際病院の日野原重明先生の誕生会に招かれた際、先生がパワーポイントを使ってお話をされたので、びっくりしました。

103歳で、あれだけ素晴らしい業績をあげられても、ご自分がまだ“欠けたる”だというのですから、あなたや私が欠けばかりでも、いいですね。自分を許してあげましょう。

佐藤綾子 パフォーマンス心理学 博士
常に女性の生き方を照らし、希望と悩みを共に分かち合って走る日本カウンセリング学会認定スーパーバイザーカウンセラー。日本大学芸術学部教授。「自分を伝える自己表現」をテーマにした単行本は180冊以上。近著に『非言語表現の威力 パフォーマンス学実践講義』がある。