医療者の意識の高さに感銘を受ける

私が今年の1月から働いている秋葉原の三井記念病院は、32の診療科がある総合病院です。1909年に三井家が私財を寄付してできた慈善病院が始まりなので、100年以上の歴史があるんですよ。

私はこの病院のTQM(トータル・クオリティ・マネジメント)部という部署に所属しています。

三井物産 メディカル・ヘルスケア事業第一部 寺田理恵子さん

三井物産はすでに海外の病院に出資していますが、事業はまだまだ始まったばかり。商社が医療に対してどのような貢献ができるのかを、様々な視点から議論しているところなのですが、そのなかで三井記念病院には医療分野の人材育成を目的に社員が派遣されていて、私が3人目の出向者ということになるんです。

ここでの私の仕事は、国際医療評価機関・JCIから認証を取得するための事務局業務。JCI認証は質が高く均質化された医療を提供できる病院に与えられるもので、その審査基準は約1200項目にもわたります。TQM部ではその一つひとつの基準をクリアするために、14のチャプターに分かれた病院のスタッフと議論し、新たな仕組み作りを取りまとめています。

審査に合格するためには日々のカイゼン活動が重要で、私も看護師さんの見習いの立場で、患者さんの入浴の介助を手伝ったり、お食事を運ぶのを手伝ったり。その中で働きやすい環境を、どう作り上げていくかを考える日々ですね。

こうして病院で働いていると、医療者の皆さんの職業倫理の高さにはいつも深い感銘を受けています。JCIの認定を受けようというくらいなので、彼らは何が患者さんのためになるかを常に議論し、働いている。自分の仕事に対する向き合い方をあらためて見つめ直す機会も多くて、とてもたくさんの刺激をもらっています。

「新しいものをつくること」に燃えるタイプ

私は三井物産でこれまで、ファッションビジネス事業部やエネルギー本部などで働いてきました。

商社を志望したのは、大学時代に体育会に所属していたことがきっかけでした。ハンドボールを中学、高校と続けてきたのですが、実は大学にハンドボールの女子部がなくて、新しい部を作る活動をずっとしていたんです。

新たに女子部を作るためにはメンバー集めだけではなく、男子部の監督やOBの会長から許可を得る必要があります。その際に出会った監督やコーチに三井物産の人がいて、なんとなくこの世界に憧れるようになったんです。みんなと食事をしても後輩想いで気持ち良くご馳走してくれたり、英語で喋ったりしている姿が、学生の目から見て単純にカッコいいなと思って。

いまから思えば女子部を作ろうとしたように、私は何か新しいものを作ろうとするときに気持ちが燃えるタイプなんですね。社会人になってもそういう仕事をしたかったし、それなら舞台は広ければ広いほどいい。

その意味で就職活動のとき、結果的に体育会の経験は本当に大きかったと思います。体育会というのは伝統や歴史を重んじる世界ですが、その伝統を尊重すると同時にそこから抜け出すことが、女子部を作るためには必要だったからです。

商社も実際に入って働いてみると、伝統的で日本的な組織である一方、それを乗り越えて新事業を作っていく姿勢が様々な局面で求められます。それに女性の総合職採用が2けたを超えて漸く十数年、まだまだ、ほとんどが男性の部署も多い。男性ばかりの環境に臆せず向かって、女子部を作ろうとしたことがなおさら良い経験になったと感じてきました。

寺田理恵子
2004年入社。コンシューマーサービス事業本部にて主にファッション分野を担当後、07年修業生としてイタリアへ。08年よりイタリア三井物産Plastic Div.勤務。09年エネルギー第一本部原子燃料部原子燃料サイクル室を経て11年労働組合専従。13年メディカル・ヘルスケア事業部医療事業第一室、15年より社会福祉法人三井記念病院に出向中。