■編集部より指令

働きながら、結婚して、出産して、子育てしてという生き方が礼賛される時代。けれど、結婚しない道を選ぶ人ももちろんいます。

幸せになれる独女の条件とは?

■佐藤留美さんの回答

生涯独身でも幸せになれる?
http://president.jp/articles/-/13907

■大宮冬洋さんの回答

人生の知恵が必要

結婚するしないに関わらず、幸せな人生を過ごすには知識が必要だと僕は感じています。仕事や生活に関するテクニカルなもの(モノを少なくしておくと掃除が楽で衛生的、など)だけではありません。身をよじるほど痛くて悔しくて恥ずかしい体験を繰り返しながら、少しずつ身についてきた人生の知恵みたいなものが誰にでもありますよね。僕の場合、例えば以下のようなものです。

●相性の悪い人と一緒にいるぐらいならば、一人でいたほうが心穏やかに暮らせる
●気分が上下するのは仕方ない。でも、他者と接するときはできるだけ平静・明朗でいたほうが長期的に見て得をする
●自分には欠点や弱点が多いので、得意なことに特化して生きたい。といっても、あまり「得意」にこだわりすぎると行き詰まってしまう
●愚か者でも弱虫でもいいが、卑怯者に成り果ててはいけない
●一番楽しいのは気の置けない友人との会食のひととき。だけど、重要なのは家族、仕事、健康の順。そのためには健康、仕事、家族の順で優先しなければならない

本当はこのリストに、「他人と自分を比べない。自己肯定感を持つと楽になる」という項目を加えたいのですが、今のところは全く身についていません。ちょっとぼんやりすると、「スポーツ万能でモテモテの高校生のオレ。機械と数字と語学にも強いよ」とか「20代で子どもを5人作って、アラフォーの今では孫ができそうな家父長のオレ。見た目は若い」みたいな妄想にふけってしまいます。こうやって書いてみると、独自性がなくて世間の「あるべき」論に洗脳されていますね。自由な妄想ですら他人の人生をなぞっているなんて、情けない話です。

ワーママも1つの流行

今回のテーマである「働きながら、結婚して、出産して、子育てしてという生き方」も、最近になって急に喧伝されているライフスタイルに過ぎません。単なる流行です。でも、現在を生きていると、ワーキングマザーは確かにカッコよく映ります。「すべての経験と財産を手にしている」印象が強いですよね。以前、僕もどこかで「専業主婦よりもワーキングマザーを目指すべきだ」という論調で文章を書いた記憶があります。

しかし、冷静になって考えてみると、独身・専業主婦・ワーキングマザー・シングルマザーといった区分に関わらず、自分なりに幸せに暮らすことが最も重要ですよね。というか、それに尽きると言ってもいいでしょう。

他人や社会への配慮も必要だとは思いますが、「子育てしていない、外で働いていない=社会の再生産に貢献していない、労働力になっていない」と決めつける必要はありません。いや、誰も決めつけてはいないのだけれど、ワーキングマザーをよしとする風潮に流されて自分で勝手に劣等感を持ってしまうのが現実だと思います。

ユニークで幸せな人生を!

どうすればいいのでしょうか。日本を脱出するのも手だけれど、それこそ誰にでも実践できることではありませんよね。脱出した先でも同じような比較をして孤独感に苦しむ気もします。

結局のところ、いま持っている知識を総動員して、アラフォーのど真ん中に体当たりで突入するしかないのだと思います。幸せそうな同世代と我が身を比べて、寂しくなったり悲しくなったりすることもあるでしょう。恥ずかしい行動をして、ボロボロに傷ついて座り込むこともあるかもしれません。

それでも何とか立ち上がり、歩くことを再開すると、体が軽くなった気持ちがするはずです。あれ、ちょっと前はあれこれ悩んでいたことがほとんど気にならなくなっている……。

アラフォーを力いっぱいに抜ければ、以前ほどは他人と自分を比較しなくなると僕は信じます(そう信じないと怖くてやってられません)。次は、老化や死といったよりリアルで個別の課題に悩むことになりそうですけどね。

ときには他人の言葉も借りながら、自分の体験を生きる知恵に昇華させていく。これさえ忘れなければ、ユニークで幸せな人生を全うできると僕は思います。しぶとく生きていきましょう。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/