■編集部より指令
東京都議会で女性議員の一般質問中に出た、「早く結婚しろ」などの野次が問題になっています。欧米のメディアからも批判が続出するなか、多くのオジサマ方は「こんなに問題化されるとは……」と回答。職場でもセクハラ発言は聞かれますが、なぜオジサマたちはこんなに無神経なのでしょうか。
■大宮冬洋さんの回答
「結婚しろ発言」にみるオジサンの深層心理学 -男社会のトリセツV・男の言い分
http://president.jp/articles/-/12945
■佐藤留美さんの回答
悪気があるわけじゃない
なぜ、オジサンたちはセクハラに無神経なのか――。
それは、多くのオジサンが「悪意なく」セクハラ発言を発しているからではないでしょうか。
ハラスメント(Harassment)は、日本語では「いじめ」と訳されますが、正確にはいじめとイコールではありません。
いじめとは、相手に身体的または心理的な攻撃を加えること。また、相手が苦痛を感じる様子を見て快楽を感じること(「知恵蔵」2013より)を指します。
つまり、イジメにはその背景に「意図」があるものと、定義されている。
しかし、ハラスメントは必ずしも意図を含むとは限りません。
セクハラやパワハラなどの「ハラスメント」のそもそもの語源は「迷惑をかけること」という意味であり、その迷惑は意図的にわざとかけたかかけないかは問われません。
言動の発信者の「悪意」があろうとなかろうと、相手がその言動を不快と感じた時点で、ハラスメントに該当してしまうのです。
だからこそ、ハラスメントは、頻発しやすい。
悪意のあるイジメなら、自分の意思で、そうした卑怯な行為はするまいと控えることが出来ますが、ハラスメントは、悪意がないだけに、当事者がコントロールしにくいですからね。
男尊女卑の思想の表れ
裏を返せば、セクハラ発言とは、何と、恐ろしいものでしょうか。
だって、無意識下に潜む、その人の思想そのものが透けて見えてしまうのですから。
たとえば、都議会で女子議員に「早く結婚しろ!」「子どもを産んでから言え!」といった発言した男性議員。
彼らはきっと「女性は子どもを産み・育ててこそ初めて一人前」という思想の持ち主なのでしょう。
恐らく、自分では家事、育児の一つもしたことがないのではないでしょうか。そしてきっと、そのことを少しも恥じていないのだと思います。
家事育児は女の仕事で、男は外で戦うものだ。そして、それこそが男の甲斐性だと、頑なに信じている。
だから、自分と同じ職域に女性が進出すると、元来「家にいるもの」である女性に「荒らされた」と感じてイラつくのだと思います。
かつて、首相経験のある森喜朗氏が「子どもを産んでいない女性に年金を支払う必要は無い」といった発言も、彼らのそんな思想が無意識のうちに発言に滲んでしまった、いい例だと思います。
よって、セクハラをなくすには、研修などでこれはセクハラ発言だといったガイドラインを示すよりも(もちろん、そのことも重要ですが)、彼らの「思想」そのものを変える必要があるのだと思います。
セクハラおじさんは、権威に弱い
では、どうやったら、オジサン連中の男尊女卑、女性蔑視思想を変えられるのか?
私は正直、骨の髄まで女性蔑視思想がしみ込んだ爺さん連にマインド革命を起こすのは、無理だと思っています。
だって、洗脳ではありませんが、幼少のみぎりから、刷り込まれた思想ですから。
だから、セクハラを撤廃するためには、そうした思想や偏見とはもはや馴染みのない若い人をもっと表舞台に立たせること――が、もっとも手っ取り早い手段だとしか思えません。
一方の、女性陣は、自分の出来ることで実績を積み重ねること――が一番抵抗なく出来るセクハラ対策なのではないでしょうか。
なんせセクハラをするような男性は、先に言った通り、超保守的思想の持ち主です。よって、間違いなく権威に弱く、長いものに巻かれる、という行動特性があります。
セクハラおじさんに限って、「エライ女性」にはヘイコラする――私はそんな“現場”を何度も何度も見たことがあります。
だから、少しでもセクハラおじさんにヘイコラされる上級ポジションの女性が増え、彼女たちがニラミをきかせれば、自然とセクハラは減ると思うのです。
セクハラっ気があるオジサンたちには、こっちの発言権が強くなった時、ほえ面かくなよ、と言ってやりたいですね。
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。