分担方法に理想形はない

「保育園を考える親の会」で話していても、いろいろな共働き家庭があります。家事や子育てを完璧なまでに「半分こ」分担をしている家庭もあれば、夫は独身のように何もしないという家庭も。

夫と妻の勤務時間、仕事内容、収入、考え方や性格、得意・不得意などはいろいろですから、家事・子育ての分担方法に理想形はありません。でも、共働きで子育てをするなら、家事・子育ての分担は必須。自分たちなりにうまくやれる方法を模索していく必要があります。

分担をしようとすると、どうしてもぶつかりあってしまう、という人も少なくないようです。

そこで、今回は、共働きの夫と妻の間でよくある衝突場面をとりあげ、それぞれがどう考えたらいいのか、相互理解のための処方箋を書きます。「昨日もケンカしちゃったなあ」と落ち込んでいるあなたは、少し頭を整理してみてください。

(1)「早く帰れないんだからしかたないだろ」「自分だけ残業してずるい」

仕事の責任感が強い2人の間には、こんなやりとりがありがちです。

「早く帰れない」と断言しているあなた。気持ちはわかりますが、防御線を高く張りすぎていないか冷静に考えてみてください。あなたが早く帰ったら仕事は本当に取り返しがつかない状態になってしまうのか。そういう仕事の体制でいいのかどうか。

毎日ではなくても、週に数日でも仕事を早く切り上げて保育園のお迎えに行くことができたら、パートナーは助かるはずです。パートナーは、定時に仕事を終わらせようと必死で働いているはず。その緊張感を共有できるようになったら、関係はぐっと改善すると思います。

「自分だけ残業してずるい」と怒っているあなた。パートナーと仕事の話をしましょう。相手の仕事のたいへんさや責任の重さを理解する努力をしつつ、自分の仕事についても具体的に伝えてみてください。ただし、物理的にどうしても無理なことは、要求してもお互いにストレスになるだけです。

「毎日のお迎えは私がやるから、土曜日の出勤のときは助けて」
「今はしかたないとして仕事が変わったら、考えてみて」
「9時ごろまでに子どもを寝かしつけたいから、食事の後片付けはお願いね」

などなど、違う分担のしかたを提案してみるのもよいと思います。お互いに仕事の内容や立場は変化していくので、時間をかけてバランスをとることもできます。毎晩、夫が食事をつくっているという某ベテランママは、「今、貸しを返してもらっているところ」と言っています。

(2)「オレは休めないよ!」「私だって、大事な会議があるのに!!」

熱のある子どもの前で声を荒げる2人、なんていう修羅場はできるだけ避けたいもの。仕事の責任はどちらも同じということを前提に、お互いの仕事の都合を伝え合って解決するしかありません。

修羅場の予防策としては、

・子どもの発熱などで保育園に預けられない場合の対応について、平常時に話し合っておく。
・インターネット上のカレンダーなどでお互いの仕事の都合を伝え合っておく。
・どちらも休めないときの助っ人を探しておく(ベビーシッターや病児保育は登録を)
・お互いの仕事へのリスペクトを忘れずに!

(3)「ちょっと手伝ってよ!」「なんだよ、急に怒って」

突然叱られてしまったあなた。パートナーが家事や子どものことに奔走している風景を、当たり前のように流してなかったでしょうか。一見、何の問題もなくやっているように見えても、パートナーの心の中では苛立ちがつもっていたかもしれません。育児休業中は全部お任せで生活が回っていたとしても、復帰後は生活方式を変える必要があるのです。

「それ、やろうか? どうするの?」

そんなひとことから始めてみてください。

「ちょっと手伝ってよ」とキレてしまったあなた。パートナーにあなたが困っていることを伝えていましたか? 「私がやったほうが早いから」と何もかも自分でやっているうちに、相手に対する怒りが蓄積してしまうことがあります。頼むのが面倒と思っても、一度頼めば次からは頼みやすくなるはず。その場で頼みにくければ、家族でゆっくりしているときに、「ねえねえ。こんど○○してもらってもいい?」「休みの日、朝のうちに掃除しちゃわない?」などと相談するのもいいと思います。

「指図する側」と「される側(手伝い)」という分担は、不満度が高くなります。「ここの掃除は私」というように、それぞれが主導権と責任をもって担当できる分担をお勧めします。

(4)「ほら、泣いちゃった。それじゃだめよ」「じゃあ、自分でやれよ!」

パートナーのやり方にダメ出しをしてしまったあなた。パートナーの気持ちは傷ついています。慣れないことはできなくて当たり前。「言わなくてごめん。こうしたほうがいいのよね」などなど、パートナーが傷つかない表現を考えてみてください。

家事についても、「こうして」「ああして」と姑になってしまうと、相手はどんどん引いてしまいます。家事にはいろいろな流儀があるので、相手に任せたら細かい口出しはなるべく抑えて。どうしても許容できない問題がある場合は、専門家のアドバイスや科学的な知見などを一緒に調べるとか、一方的な批判にしないことが大切です。

「自分でやれよ」と切れてしまったあなた。「せっかくやってあげたのに」という気持ちになっていませんか? 相手がやるべきことと思っていると、こんなセリフが出てしまいます。いつもパートナーがやってきたことなら、素直にやり方を教えてもらいましょう。ちょっと悔しくても、「え? どうするの?」と素直に聞ける心のゆとりを。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。