9割は「やってよかった」と思っている

父母会のある保育園、父母会のない保育園、いろいろですが、私は保育園に父母会や保護者会など、保育園の保護者が自主的につくる「会」があるのは、親にも子どもにも助かることだと思っています。

「仕事と子育てだけでもたいへんなのに、父母会の役員なんて!!」と思うのは、みんな同じです。でも、経験した人は、十中八九「やってよかった」と言っています。

父母会(保護者会、親の会というところもあります)には、あとで書くようにいろいろな形がありますが、どの会も「子どもの保育園生活をよいものにするために保護者が行う活動」であるという点は共通しているはずです。

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父母会は必要ですか?

グラフは、「保育園を考える親の会」の2011年会員アンケートでは、父母会の必要性について、「必要ですか?」と聞いた結果です。

なぜ必要かを聞いた選択肢の複数回答では、8割以上の人が、

●保護者同士の交流のため
●園に保護者の意見を伝える機関として

にマークしていました。

●園に協力するため

を選んだ人も6割近くいました。

私も、保護者同士が交流できることはとても大切だと思っています。親同士で情報交換や悩みの交換ができて気持ちが助かるということもあるし、実際に手助けをし合う関係になれることも多いし、子どもたちだって親同士がいい関係でいたほうがうれしいに決まっています。

そして実は、何かが起こったとき(災害や事故、保育園の内外のトラブル)、父母の組織は子どものための重要なセーフティネットにもなります。

タイプ別・上手な運営法

いくら父母会が必要といっても、父母会のために親が疲れ果ててしまっては意味がありません。かといって、「何もやりたくない」と役員が逃げ腰だと、ますます活動がつまらなくなります。

「みんな忙しいよね」ということを前提にして、自分たちが大切にしたい活動は力を出し合って成り立たせていくという気持ちが基本だと思います。たとえば、

【盛り上がっている父母会なら】

活動が活発な父母会は一見大変そうでも、活動が楽しいので役員にも「やります!」という人が多く、意外に負担感は少なかったりします。ただ、活動が大きくなりすぎていると、引き継いだ人はしんどいと感じることもあるでしょう。そんなとき新役員の人は旧役員とコミュニケーションをとり、「今の自分の生活では、ここまでしかできない」「誰かと分担したい」などと伝えることも必要です。

理由もなく逃げ腰になるのは無責任ですが、ちゃんと仕事の内容や目的を把握した上で、できる範囲での活動のあり方を考えるのは大切なことだと思います。

【盛り下がっている父母会なら】

役員がみんな逃げ腰だと、責任感の強い人だけに負担が集中し、その人がダウンすると活動が続かなくなります。父母会をなくしてしまう保育園もありますが、私は大きな喪失だと思います。

そんなときは、「本当に大切な活動は何か」をもう一度話し合い、みんなができる範囲で継続する方法を考えてはどうでしょう。大きなお祭りはやめてクラスの懇親会を中心に続けている父母会もあります。

現在、低迷している父母会の役員なのだけれど「もっと何かやりたい!」と思っている人もいるでしょう。みんなで楽しめる新しいイベントを企画するのも面白いはず。賛成してくれそうな保護者と話をして有志チームで提案するのもいいと思います。そんな場合も、父母会長など中心となっているメンバーから共感してもらえるように進めることは大切です。

【これって必要なの? と思うとき】

PTAや父母会の活動の中には単なる「慣例」になってしまい、やっている人たちが必要性を実感できなくなっている活動もあります。そんなときは、「これってこのままでいいのかな」「なんのための活動だっけ?」と疑問を出し、みんなで考えてみたほうがいいと思います。いろいろな考え方に出会うのを楽しむくらいの柔軟性をもって提案すれば、対立して関係が悪くなるようなことも少ないはず。活動を変えるための時間が足りなければ、翌年の課題として残して、時間をかけて検討してもいいと思います。

「運営の苦労」はいろいろ

実は、父母会はその成り立ちによって、ずいぶん性格が違います。

私立保育園などでは、保育園が父母会活動を支援している場合も少なくありません。父母会と園がよいパートナーシップを築けている園もある一方で、園の支配が強すぎて活動がほとんど園行事のお手伝いになっている場合もあります。そんな園の父母会役員は、ぜひ園とのコミュニケーションを深め、自分たちの意見やアイデアを少しずつでも園に伝えていくことをお勧めします。そんな積み重ねから、保護者の意見を園に伝える仲介役としての父母会の役割が認められていくはずです。ただし、要求型ではなく、信頼関係をベースにした相談型の対話のほうがうまくいくようです。

公立保育園では、自主的で活発な活動をしている父母会も少なくありませんが、一方で自治体や園の支援がなく、ひどいときは妨害を受けて、活動が低迷してしまった例もありました。これからの時代、公立保育園はもっと父母会を大切にしてもいいのではないかと思っています。なぜなら、地域のつながりがあって住民の自主性が高いほうが、安全で住みやすい地域環境は実現しやすいわけですし、少子高齢化社会の行政サービスの今後を考えれば、とても重要な環境づくりだと思うからです。そんなことを念頭に、市区町村にも父母会の重要性を訴えることも、今後は必要になると思っています。

こんなにある! 父母会のメリット

話が大きくなりすぎたので、戻しましょう。

父母会の役員になって戸惑っている方には、「転んでもただでは起きない」精神でいってほしいと思います。

子育てをする上で、地域の親同士でつながることはとても大きなメリットがあります。私自身、父母会活動で仲よくなった友だちとは、お迎えを助け合ったり、土日に預け合ったりしました。父母会活動は、クラスの他の保護者との関係が深まると同時に、保育園との関係も急接近する機会になりました。園長先生から直接いろいろな話を聞くことができて、園のようすもよくわかるようになり、安心感が大きくなりました。また、私はサラリーマン家庭に育ち、職場でも似たりよったりの人間関係しかもてなかったのですが、保育園ではいろいろな職業の人たちと出会うことができました。

父母会の役員をやりたくないから父母会のない保育園を選ぶという人もいるようですが、それはいろんなチャンスを捨ててしまっているかもしれません。

保育園は働く親ばかりですから、本当に困ったときはきっと理解してもらえます。どうしても心配なら、家族の事情や仕事の事情で、役員をやる時期を調整してもらってもいいでしょう。私は、下の子の育児休業中に父母会長をやりました。

父母会役員はできる範囲でやれることをやる気持ちで十分だと思います。幸い、保育園にしても父母会にしても、それが許される小さな組織なのです。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。