聞いてはいるけどよくわからない!

女友達に聞いた。「NISA(ニーサ)って知ってる?」。

30代の友人の答えは「どこかで聞いたことあるような気がする」。40代の友人は「ネットや雑誌で記事を読んだけど、よくわからなかった」。

わ~。予想通りの答えだ。

NISAとは、「少額投資非課税制度」のこと。

こんな言い方をするから難しく感じるのだけれど、要は、『個人がする少額の投資について、一定期間内の売却なら、利益にかかるはずの税金を非課税にしてあげますよ』、という制度である。

ここでいう少額とは年間100万円で、それほど少額でもない(人によるが)。たとえば100万円分の株を買い、10万円の利益が出れば、通常なら2万円程度の税金がかかる。でもNISAなら税金はゼロ、というわけである。

とてもいい制度だと思うのだが、私の友達のように「よくわからない」という人は多い(という人の方が多い)し、実際のところ、投資に慣れている人でなければ理解できないような情報も少なくない。そこで、NISAの基本的な仕組みについて一問一答形式で述べていきたい。

まずは名前の由来から。

NISAはイギリスのISA(アイサ)という制度を手本にしており、ここにNipponのNをとってNISAと名付けられた。この響きが好き、という女性もいる。

次にこの制度ができた理由だが、大きな目的は、「NISAをきっかけに投資への関心を深めて欲しい」、「若い世代に将来に向けた資産形成に取り組んでもらいたい」、というもの。ひと言で言えば、特典をつけるから投資してね、という国からのメッセージである。

投資はあくまで資産形成や資産運用のための道具のひとつであり、「元本保証のある商品でコツコツ準備したい」「投資は絶対にいや」という人に強制するものではないはず。しかし、「投資をしたい」「投資をする」という人にとってNISAは有利な制度であり、利用しない手はない。NISAを投資をはじめるきっかけにするのも、悪くないだろう。

NISA口座を開く。オススメはネット証券

ではどう利用するのか。

NISAを利用したい人は、まず、金融機関に「非課税(NISA)口座」なるものを開く必要がある。

扱っているのは証券会社、銀行(信託銀行、地銀、ゆうちょ銀行などを含む)、一部の運用会社(投資信託を運用している会社)で、「A証券に取引口座を持っている」という人がA証券でNISAを利用する場合も、「B銀行に口座がある」という人がB銀行で利用するにも、その金融機関で別途、NISAの口座を開く必要がある。

NISA口座は1人1口座しか開けないので、どの金融機関にするかはじっくり考えたいところ。その際、ポイントになるのは、「何に投資するか」である。

NISA口座で買えるのは、「株」と「投資信託」。投資信託とは、多くの投資家から集まったお金をひとつにまとめ、それを運用会社が株式や債券などに幅広く投資し、得られた利益が投資家に還元される仕組みの商品である。1万円程度から購入できる、海外の株式などにも容易に投資できる、などのメリットがある。

株が買えるのは基本的に証券会社なので、株を買いたい人は証券会社、買いたい投資信託がある場合はそれを売っている金融機関を選ぶ必要がある。選択肢を広げるためには、株も買えて、たくさんの投資信託を扱っており、なおかつ手数料が安い金融機関を選びたい。

結論をいえば、大手ネット証券(SBI証券、楽天証券、カブドットコム証券など)なら、ほぼ間違いないだろう。

そしてNISA口座で投資できるのは、前述のとおり、年間100万円が上限で、期間は5年間。計500万円を投資できる。

ここも誤解しやすいが、100万円はあくまで上限であり、10万円でもいいし、毎年投資せず、1回だけ、というのでも問題ない。

言い換えれば、投資をするなら、数万円であってもNISA口座を使うことができ、一般の口座で買うよりトク、というわけだ。

NISAきっかけで投資の勉強

肝心なのは、NISAで何を買えばいいかだが、利益が出なければそもそも税金はかからないので、非課税、というメリットを生かすためには「儲かるもの」を買うことが重要だ。

株については、「株主優待がもらえればいい」という考えで選んだ銘柄はNISAには不向き。投資信託については、値下がりを極力抑えながら利益が出るようNISA向けとして登場したものもたくさんあるが、必ずしも、NISA向けと謳われたものがいいとは限らない。

株も投資信託も、値上がりしそうなものを選ぶべきなのは、NISAに限ったことではない。できれば、入門本を1冊は読み、勉強するのがオススメだ。

以上、NISAのごく基本的なポイントを紹介した。ほかにもしっておくべき項目があるので、実際に利用する場合には、「政府広報オンライン」(暮らしのお役立ち情報のNISA特集記事)などをチェックしてほしい。

NISAの概要
対象者……20歳以上の日本国内居住者
非課税対象……株式、ETF、REIT、投資信託などの配当や譲渡益
非課税投資枠……年間100万円が上限(最大500万円)
非課税期間……最長5年間(平成26年から35年のいずれかをスタート年にして以後5年間)

<注意点>
・別の口座に保有している株式などをNISA口座に移すことはできない
・NISA口座で購入した株式などを売った場合、売却代金相当額を再度、非課税枠として使うことはできない
・非課税になるのは、非課税期間内(原則として購入した年の1月から起算して5年以内。延長の方法もある)に得た利益なので、売らない場合は非課税のメリットは生じない
・NISA口座での売買で損が生じた場合、ほかの利益との損益通算はできない

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。