※本稿は、荒木シゲル『一瞬で人の心を操るマインド・ハック:この「表情」「しぐさ」には、誰も逆らえない!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「信用」がなければ物事は成立しない
信用は、すべての人間関係の「ベース(土台)」と言っても過言ではありません。人は、何を見て「相手を信用する」のでしょうか。
商品を購入してもらうときも、契約を結ぶときも、友人関係や恋愛においても、そして選挙で候補者に票を投じるときでさえ、「信用」がなければ物事は成立しません。
人は、信用できない相手との関わり合いを敬遠するのです。近年、FBIでは取り調べの際に「ラポール重視型面接」というものが採用されています。相手を追い詰めて自白を引き出すのではなく、まず信用を獲得することを最優先する手法です。そのためのプロセスが体系化されていて、特に重大犯罪やテロ、組織犯罪に関わる聞き取りにおいては高い成果を上げているようです。
どれほど追及されようとも、人は信用できない相手には本音を明かしません。この心理効果が注目され、最近ではビジネスの交渉にも応用されています。
どんな場面でも、相手の信用を勝ち取ることができれば、相手との関係性はまったく違うものになります。相手の心の中に「自分と同じ側に立っている」という感覚が生まれ、自己開示のハードルが一気に下がります。
信用は非常に繊細なもの
また信用が生まれた瞬間から、たとえ自分が不利な状況になったとしても、それを許容できる幅が大きくなります。「少しコストが高くなるけど、この人に任せれば安心だ」という感覚が生まれるのです。
ビジネスも人間関係も、最初に攻略すべきは「相手の信用」だということです。
ところが人の信用とは非常に繊細なもので、一度築いた良い関係もないがしろにしていてはすぐに壊れてしまいます。誠実に接しているつもりでも、相手はそう受け取ってくれているとは限りません。
知らず知らずのうちに周囲に不信感を与えていないでしょうか。ここからは、やってしまいがちな「信用されないNG行動」をいくつか紹介します。
【これはNG① 相手を不安にさせる「ネガティブな笑顔」】
笑顔は本来、相手に好感を与え、関係を築くうえで武器となる重要な表情です。ただし、相手を不快にしてしまう「ダメな笑顔」もあるので、注意が必要です。
あなたは、誰かの笑顔を不快に感じたことはないでしょうか? 政治家や芸能人、SNSでたまたま見かけた他人のなにげない笑顔……。正直言うと、私はあります。そんなとき、私はなぜ他人の笑顔を見て不快な気持ちになったのか、分析するようにしています。
笑顔から真顔に戻るとき…0.5秒は×、1秒以上が○
たとえば、片方の口角だけを上げて笑顔を作る人がいます。下記の画像のように、左右どちらかの口角を上げて笑うと、「軽蔑」の表情になります。相手は誰かを軽蔑しているつもりがなかったとしても、受け手にとっては生意気だと思ったり、不快に感じたりすることもあるのです。
笑うときは、必ず左右対称に表情を作るように心がけましょう。
ただ、ここが難しいところなのですが、なかには単なる癖で、片方の口角だけを上げて笑う人もいます。アニメのヒーローキャラにお馴染みの笑顔です。これは「敵を軽蔑している」という意味でクールな印象になります。
また、自分を誇りに思ったり、自信を持っているときに表れる表情でもあります。そう考えると、誰かが口の片方だけであなたに笑いかけても、「軽蔑されている」とか「人を見下している」などと決めつけるのは早計かもしれませんね。
でも念のため、あなた自身はこの笑顔を作らないほうが安全です。悪い印象に受け取る人がいるかもしれませんので。
笑顔を作るタイミングも重要です。笑顔を作った後、0.5秒程度で真顔に戻ってしまうと冷たい印象になります。心のこもっていないただの作り笑いをしていたと相手は受け取ってしまいます。笑顔から真顔に戻るときには、ゆっくり1秒以上かけて余韻を残しましょう。
笑顔は信用を得る「万能の切り札」であると同時に、「最悪のジョーカー」にもなります。大切なのは、左右対称で、口角をしっかり上げた本物の笑顔を作ること。笑顔で損をするほど馬鹿らしいことはありません。自分が体験した楽しいことを思い出しながら、ぜひ自分の笑顔を確かめてみてください。
挙動不審=自信のなさのアピールに…
【これはNG② 自信のなさをアピールする「なだめ行動」】
私はセミナーを開催する際、冒頭の「つかみ」として、あえて「緊張を装って」自己紹介をすることがあります。
「顔をしかめる、唇を噛む、唇を舐める、唇を前に突き出す、頻繁に視線を変える、頻繁に鼻をすする」といった表情をしながら、「手をこする、鼻を掻く、耳を引っ張る、頻繁に重心の位置を変える」といったしぐさをするなど、「なだめ行動」を交えながら話すのです。同時に「あのぉ……」「えぇと……」など、無意味なつなぎ言葉も頻繁に織り交ぜます。
自己紹介を終えた後に何か気になった点はないか質問します。参加されるみなさんも多少緊張しているので、私の「挙動不審な振る舞い」に気づいていても、それを指摘して発言できる人は多くありません。
とはいえ、セミナーが始まった直後に講師が緊張しているのを見て、不安に感じる参加者もいるようです。後で種明かしをして解説すると、不安が解消された安心感から笑いが起きて、和気あいあいとした空気になるのです。
緊張しているときほど、全身の力を抜いて
「なだめ行動」や」「無意味なつなぎ言葉」などどれも些細なことですが、「緊張している」「自信がない」というアピールになってしまいます。
これを初対面や商談、プレゼンの場でやってしまうと致命的です。自信がないように見えれば、信用を得るどころか「頼りない人」というレッテルを貼られ、相手に主導権を握られてしまいます。
緊張しているときはそれどころではないかもしれませんが、あえて自分の気持ちや体がどのような状態か意識を向けてみてください。筋肉が力んでいるせいで姿勢が悪くなり、動作や発声をコントロールできない。すると余計に不安になり、思わず「なだめ行動」をしてしまっている、ということもあります。
全身の力を抜いたり、手や顔の余計な動きを我慢することに意識を向けると、徐々に心の冷静さを取り戻すことができます。「不安」や「緊張」に支配されるのではなく、うまく扱うことで、周囲からの信用を勝ち取りましょう。
ミラーリングは“気づかれたら終わり”
【これはNG③ 不機嫌な相手に対する「ミラーリング」】
「波長が合う」「同類である」「親和性が高い」「価値観が近い」などと相手に感じさせることは、信用を勝ち取るうえで確実な近道です。そのための有効な手段として、相手のしぐさや話す言葉を真似る「ミラーリング」はよく知られています。
ただ、ミラーリングがすべての状況で効果的とは限りません。間違ったときに使ってしまうと違和感や不快感を与え、完全に逆効果になりかねません。次のような誤った「ミラーリング」には要注意です。
▼あからさまな模倣
ミラーリングの最大の効果は、相手の「無意識」に入り込めること。だからこそ、気づかれてはいけないのです。
「この人は自分の動きを真似している」と気づかれた瞬間、信用は失われてしまいます。相手は違和感を覚え、薄気味悪くなるか、からかわれていると思うでしょう。
実際に仲のいい友人同士やカップルを見ていると、申し合わせすることなく、同じタイミングで姿勢を変えたり、飲み物を飲んだりしていることがありますよね? 目指すのはそのかたちです。細かいしぐさや言葉尻にこだわるのではなく、波長そのものを合わせるような感覚で行いましょう。
「上司」「不機嫌な人」には×
▼上下関係が明確な場面
上司が部下のしぐさを真似る場合は、関係が和らぐ効果があります。しかし、逆は違います。尊敬する上司やクライアントの動作をそのまま模倣してしまうと、子どもが大人の真似をしているように滑稽です。または「バカにしているのか?」とも受け止められかねません。相手にそう感じさせた瞬間、あなたの評価は一気に低下します。
ではどうしたらいいでしょうか? 相手が上司の場合は「ミラーリング」は避けるか、するとしても特に注意して最小限にとどめるのです。たとえば、相手が腕を組んだら、あなたはテーブルの上で両手を合わせる、または指を組むといった具合です。
▼相手が不機嫌なとき
ミラーリングは相手の感情を映す鏡でもあります。相手が苛立っているときにその表情や態度をミラーリングしてしまうと、信用を勝ち取るどころか、ほど遠い効果が生じてしまいます。これではケンカを売っているのと同じですね。
そもそも敵対する者同士のミラーリングは効果がありません。ミラーリングはできるだけ前向きな姿勢、落ち着いた態度、笑顔などポジティブな要素を中心に行いましょう。
相手が怒っているとき、あなたが取るべきは「反ミラーリング」です。あえて落ち着いたトーンを保ち、穏やかなジェスチャーを取り入れることこそ、冷静さを取り戻させる最善のアプローチとなります。
「自分とタイプの違う人」には×
▼文化的な違いに注意
そして最後に注意すべきは、「文化の壁」です。欧米では感情表現が豊かで、ジェスチャーも大きいのが一般的です。だからミラーリングも明示的に行われやすいです。でも、日本は控えめ、謙虚、察しの文化なので、それを踏まえたスタイルである必要があります。
国籍にかかわらず、相手があなたとまったく違うキャラだったときは注意が必要です。ミラーリングとはいえ、普段しなれない大きなジェスチャーをしてしまうと、違和感を生んでしまうからです。周囲からは「相手に飲まれてしまっている」「普段と印象が違う」などと思われてしまうのがオチでしょう。
文化や相手の価値観を読み解きながら、場に合わせて「調整」することを忘れないでください。その場、その人、その空気に応じて、正しくミラーリングを取り入れましょう。
