■編集部より指令

ひと言に「女」といっても、いろいろ。職場を見回すと、未婚、DINKS、子持ち、シングルマザーといろいろいますし、世代も幅広く、雇用形態別に見ても、正社員、契約社員、派遣社員、パート……とさまざまです。

「女性は扱いにくい」とか「子どもがいるとね……」といった男性上司や同僚からの偏見もいただけませんが、立場やモチベーションが異なる女性の間でうずまく「妬み」や「批判」はもっとたまりません。

そんなネガティブな感情を向けられてもものともしないメンタルタフネスを身につける方法、あるいは、そもそも妬みの対象とならないで済む必殺技がありましたら教えてください。

■大宮冬洋さんの回答

「女の嫉妬」をかわす必殺技 -職場の人間関係・男の言い分
http://president.jp/articles/-/11837

■佐藤留美さんの回答

「嫉妬される順」ランキング

私は大組織で働くあるワーキングマザーから、こんな話を聞いたことがあります。

「ママ社員が、『育児と仕事の両立は、大変だ、大変だぁ』と連呼するのは、“生きる知恵”なのだ」と。

彼女によると、もちろん両立は本当に大変なのだが、「可愛い子どもがいて、夫がいて、きちんとした仕事がある自分は、他の人に比べて恵まれているし、幸福だと思っている。だからと言って、『子どもも夫も仕事もある私は幸せだわ~』と本音を漏らすと、子どもを産んでいない同僚や独身の女性社員に“刺される”ことになる。だから、あえて、年中、『大変、大変』言っている」のだそう。

かなり嫌味なネタ晴らしです。しかし、「女社会」で上手くやれる人――とは、まさに彼女のような“配慮”が出来る人なのではないでしょうか。

編集のヨコタさんが言う通り、今の組織には、子持ち、未婚、DINKSなど様々な家族形態の人がいます。

図を拡大
「女に嫉妬される女」の序列

うんと平たく言うと、上記属性を「嫉妬される順」に並べるなら、「子持ち>DINKS>未婚」の順になるでしょう。

さらに細かいことを言うと、最上位の「子持ち」でも、子どもの数が1人より2人、2人より3人がより立場がエラく、羨ましがられる傾向で、さらに言うなら、子どもの性別が男女揃っていると尚さら、強烈な妬みの対象になります。

加えて、子どもが学齢期に達すると、名門小学校に入れた、入れないでまた上位争いが繰り広げられ、子どもが中学生にもなると、いよいよ学力・知力の差が付きだすことから、さらに壮絶な嫉妬合戦が始まります。

「あの人の子と同じ塾に入れたいのに口利きをしてくれないのよ。ケチよね~」なんて具合です。

嫉妬の対象外になれる人

もちろん、どんな旦那がいるかも、優劣の対象になります。子どもが男女そろって2人いて、それぞれ出来が良くても、彼女の旦那さんは、彼女より収入が低くて、食べさせているらしいなんて噂が広がれば、その彼女は女性陣の嫉妬の対象からは、外れることになります。

反対に、優秀な男女の子どもが2人いて、ご主人も高収入なハイパフォーマー。なおかつ、本人も美人の上、出世街道まっしぐら……なんてとんでもなく「スーパー」な境遇にいる人は、よっぽど腰を低くしていない限り、同僚女性からいつ“刺され”るやも分かりません。

では、果たして、同僚(あるいは上司・部下)女性に刺されるとは、どういうことでしょうか?

大きな声では言えませんが、多くの勤め人が、つい行ってしまう悪癖があるものです。

営業ウーマンが、本当は今計上できる売り上げを来期用にプールする。管理職の女性が、部下との飲み食いを接待費として落とす、などです。

「嫉妬される女性」は、こうしたスキを突かれ、同僚女子に上層部に密告されるなんてことが少なからずあります。実際に私は、そんなケースを複数、知っています。

この話から得られる教訓は……。

それはやっぱり、同性の嫉妬を買うなということと、人に突っ込まれるスキは見せるなということです。

まして、最近は、ヨコタさんが指摘する通り、雇用形態一つ見ても、正社員、契約社員、派遣社員、パートなど、さまざまです。

一口に正社員と言っても、総合職、一般職に加え、最近ではエリア限定職、専門職など、多様性に富んでいます。

突っ込まれる「スキ」を見せない

日本の会社の場合、社員一人ひとりの職務範囲が明確に定められていないため、総合職と一般職と派遣社員のやっている仕事に歴とした差がないのに、総合職だけが給料が高いなんて現象も散見されます。

つまり、雇用形態が「身分制度」になってしまっている。そのため、その差異をめぐっての妬み、嫉みを招きやすいのです。

だから益々、「富める者」は、人一倍腰を低くしていないと(それが実に難しい)「女社会」ではサバイブできません。

嫉妬を買わないコツは、冒頭で紹介したワーキングマザーの「生きる知恵」よろしく、ちょっと卑屈なくらいに自虐トークをする――これが最も有効な手段だと思われます。

具体的には、「セレブ妻」なら、あえて夫の悪口や愚痴を言う。子どもの出来がいいなら、子どもの学校の話は一切しない、フェイスブックでリア充ぶりを過剰に見せつけない、などです。

また、同僚に密告されても仕方がない「悪癖」を辞めて、スキを見せないことも重要です。

私の知り合いのあるすご腕ワーキングマザーは、取引先と「打ち合わせ」のため、飲食店に行き飲み食いすると、本当に「打ち合わせしていた間」の飲食費しか、会社に請求しません。

「打ち合わせ」が終わった後も同じ店で飲み続ける場合は(だいたいの打ち合わせは10分~20分で済みますよね)、店員さんに、そっと会計を閉めてもらい、コッソリ社費で支払いを済ませ、残りの飲食費は黙って自腹で支払うのです。

もしかしたら、このくらい他人に細心の注意を払うことが、「富める者」の義務なのかもしれませんね。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。