【相談内容】
「いまのカレは、15歳年上の43歳。年の差婚って、将来大丈夫かと不安なのですが?」(28歳・ジュンコさん WEBデザイナー)
【牛窪恵さんの回答】
20代女子の半数が「10歳以上年上でもOK」
2011年、新語・流行語大賞にも最終ノミネートされた「年の差婚」。
数字的には、7歳以上年上の男性と結婚する女性が、00年以降「ほぼずっと微増を続けている」といった程度ですが(厚生労働省「人口動態統計」)、取材してみると、年の差恋愛や年の差婚のカップルが目に見えて増えた!
なかにはジュンコさんのように15歳差、なんて例も珍しくなくなりました。
私、牛窪も11年、明治大学文学部の諸冨祥彦教授と共著で『【年の差婚】の正体』(扶桑社)という本を書きました。このとき取材して驚いたのは、「同年代の男子が、プロポーズしてくれない」といった20代女子の嘆きが相次いだこと。
ジュンコさんもその1人。大学の同級生だった男子と26歳まで5年間、交際していましたが、カレが結婚を決意する様子はまったくない。
「このままだと、結婚・出産がどんどん遅くなる!」と思い切って別れを告げ、1年間必死で婚活。その結果、友達の紹介で知り合った15歳年上の男性と付き合うようになったといいます。
「10歳以上」の年の差婚について聞いた、ある調査でも、「年の差婚は恥ずかしくない」と答えた20代女子が、73%と7割以上。「50代男性も結婚相手になる」と答えた女子も、5人に1人(20%)いました(10年 扶桑社調べ)。
また11年、私がプレジデント誌と共同で行なった調査でも、20代女子のなんと半数近く(45%)が「10歳以上の年の差でもOK」と答えたほど(プレジデント 2011年9.12号)。
ではなぜ、20代女子が40代の男性に惹かれるのでしょう?
年上男性の魅力
09年に電通総研・主任研究員(当時)の大屋洋子さんが著書で分析した内容ともリンクしますが、一般に言われる「年上男」のイメージは、次のような点です。
[1](年上男性は)知識や経験が豊富
[2]安定した地位や収入がある
[3]穏やかでキレにくい
[4]いざというとき頼りになる
[5]年下女子を認めてくれる、包容力がある
一部には、「年上男性と結婚する女性って、結局お金が目当てなんでしょ」などと見る人もいますが、年の差恋愛(婚)を2年以上も取材し続けてきた私からすれば、これは大きな間違い。
実際に多いのは、圧倒的に「1」と「5」の声。「知識や経験が豊富で、新しい世界を教えてもらえる」「包容力があり、自信を与えてくれる」といった意見が、大多数を占めます。
「新しい世界ってナニ?」といえば、たとえば美味しいビールやワインの飲み方やファッションの意外な情報、あるいはサッカーの違った見方や知っておくべきビジネスマナーなど、おもに「雑学」。穴場の店を教えてあげるのも、高ポイントです。
さらに、それを机上の空論やグーグル検索で得た知識ではなく、これまでの体験や身近な人の失敗談などを通じて話してもらえると嬉しい、気分がアガる、といった声。
当たり前ながら、20代男子に比べれば、40代男性は生きてきた年数が長い。一般には、知識や経験も豊富なはずですよね。
また、それを「こんなことも知らないの?」や「教えてやるよ」といった上から目線ではなく、「知ってる? 実は~」と優しく問いかけたり、「僕も若い人の情報、知りたいな。教えてくれる?」と、逆に女子にも質問する年上男性は、決まってモテている。
年下女子の側は、「いつも私ばっかり教わって悪いな」とか、「どうせ年下だから、大人扱いされてないんだな」と自分を卑下しやすいから、そこを優しくフォローしてあげられる男性こそがモテるわけです。
ただ、交際中は気にならないまでも、問題は「いざ結婚」となったとき。
冒頭のジュンコさんのように、「15歳も離れていて、将来本当に大丈夫?」と懸念する女子が多いのも事実。とくに年下女子が怖がるのは、「老後」の不安です。
年の差婚の「3つの弊害」
ジュンコさんも、友達にこういわれたといいます。
「ジュンが60歳になったとき、カレ(未来の夫)は75歳でしょ。やっと子どもが結婚してホッとしたころ、夫の介護って……一生、子育てと介護で終わっちゃうじゃない。それでもいいの?」
誰もが夫の介護を経験するわけではありませんが、私が取材した「年の差婚(夫が10歳以上年上)」妻の9割以上は、「将来、夫のオムツが替えられると思ったから結婚した」と答えました。
つまり、年の差婚を決意する女子の大半は、夫の介護は覚悟したうえで結婚している。単にいまの収入だけを見て、「年収がよくていい暮らしができるから」とか「いい会社の部長職で一生安泰だから」などと浮ついた感覚でいる女子は、実際には結婚まで至っていないこともわかりました。夫の介護への覚悟ができることは、年の差婚の前提条件と言えるでしょう。
一方で、結婚後の「年の差婚の弊害」としてあがってきたのは、次のような「ギャップ」です。
◆40代夫と20代妻の「金銭感覚」のギャップ
◆同・「イクメン」「家事メン」に対する行動ギャップ
◆同・「男女平等」に対する意識ギャップ
とくに現43歳以上の40代男性は、バブル世代。多くは接待交際やグルメブームを体験するなど、外食やアフター5の楽しみにお金をかける傾向がある。
でも、いまの20代妻は「嫌消費世代」とも言われる世代。堅実で、「おうちごはん」の意向も高いから、外でなにかと散財する夫に腹を立てることもしばしば。
家のなかでも、家事や育児を巡ってバトルが起こりがち。いまの20代女子は「男女平等が当たり前」の時代に育ったから、夫にも当然ながら「家事、育児を手伝って欲しい」と考えます。
ある調査でも、夫が「ほぼ毎日~週1回以上」料理を作っていると答えた20~30代妻が、23%とおよそ4人に1人もいる。それでも、彼女たちの55%は「まだ足りない」「もっと料理を作ってほしい」と答えました(11年 ベネッセコーポレーションほか調べ)。
結婚前にチェックすべき3カ条
一般に、バブル世代の男性は、多くが仕事人間で「家のことは妻の仕事」と考えやすいし、忙しいなかで毎週1回以上も料理を作るのは大変。でも若き20代妻は「それが当然」と考えることも多い。そこでたいてい、バトルが起こるのです。
もちろん、年の差婚で最も留意すべきは、将来への備え。将来、65歳どころか70歳定年制が導入される可能性もありますが、それにしても子どもの教育費を考えると、結婚当初からある程度、貯金をしておかないと怖い。
まとめると、ジュンコさんが結婚前に再確認すべきは以下の3点ではないでしょうか。
◆将来、この人(年上男)のオムツを替えられるか?
◆この人となら、堅実に貯金していけるか?
◆家事・育児を分担してもらえそうか? あるいは、自分(妻)ひとりで引き受ける覚悟があるか?
この3点さえクリアになれば、「15歳も年上だから」といたずらに不安を抱く必要はないでしょう。
年の差婚を果たした夫婦の多くが言うこと、それは「いざ暮らしてみると、年の差はほとんど気にならない」でした。
確かに、とくに男性は「年をとるほど、子どもに帰る」とも言いますし(笑)。当然ながら、2人の間に「愛」があるか、前述のようなギャップができたときにちゃんと話し合える対等な関係か、そここそが大事ですよね!
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。 2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』 (PHP研究所)が発売。12月5日『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。