健康な体をつくるには、どうすればいいのか。医師の早坂信哉さんは「お風呂に入ることをぜひおすすめしたい。体が芯から温まることで、血の巡りがよくなるからだ。だが、夏にやってしまいがちな行動の中には、効果を下げてしまうものもあるので注意してほしい」という――。(第3回)
シャワーヘッドから勢いよく水が出ている
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芯から温めると血流が良くなる「温熱効果」

夏のお風呂、皆さんはどうされているでしょうか。暑いからシャワーだけ、湯船に浸かるのは冬だけ、という方も多いかもしれません。私のスタンスとしては、夏でもぜひ湯船に浸かってほしいと思っています。

ただ、夏の入浴には、知らずにやっていると効果を台無しにしてしまう「もったいない習慣」がいくつもあります。それをお伝えする前に、一つ知っておいていただきたい言葉があります。「温熱効果」です。

お風呂が体にいい一番の理由は、お湯に浸かって体を芯から温めることにあります。体が温まると、全身の血管が広がって、血のめぐりが良くなる。これが温熱効果です。血のめぐりが良くなると、酸素や栄養が体のすみずみまで運ばれ、逆に疲れや不調の原因となる老廃物は流し出される。シャワーで体の表面をさっと流すだけでは、ここまで温まりません。湯船に浸かってこそ得られる効果なのです。

そして大事なのは、この温熱効果が、お風呂から上がった後もしばらく続くということ。湯船から出ても、体がぽかぽかと温かく、血のめぐりが良い状態が、しばらくキープされるわけです。お風呂の健康効果は、湯船に浸かっている時間だけでなく、上がった後のこの時間にも続いている。ところが、夏のお風呂上がりにやりがちなことの多くが、この「せっかく続いている温熱効果」を、自分の手で打ち消してしまっているのです。一つずつ、具体的に見ていきましょう。

「冷たい水」より「常温の水」、牛乳もおすすめ

まず、もっとも多くの方に関わるであろうことが、風呂上がりの水分のとり方です。入浴では、1回で500ml、多いときは800mlもの汗が出るという研究があります。これだけの汗をかくわけですから、「お風呂の前後で水分をとりましょう」と、私もいつもお伝えしています。理想は、入る前にコップ1〜2杯、出た後にも1〜2杯。出てから飲むのでは遅いこともあるので、入る前から飲んでおくことが大切です。水分補給そのものは、ぜひ続けてほしい習慣です。

(参考:医学と生物学 2010;154(8): 376-386

問題は、その水の温度です。汗をかいた後だと、つい冷たい水をゴクゴク飲みたくなりますよね。ただ、これは体にとってはもったいないのです。せっかく温熱効果で体が温まり、血のめぐりが良くなった状態が続いているのに、冷たい水を流し込むと、胃腸の熱が奪われて血流が悪くなってしまいます。温熱効果が、そこでリセットされてしまうのです。

ですから、同じ水分をとるなら、冷たい水より常温の水がおすすめです。もちろん、暑くてどうにもならないときは、冷たい水で体温を下げてかまいません。ただ、常温のほうが、温まった効果はずっと長続きします。

水分の吸収のよさで言えば、牛乳や麦茶もいいでしょう。とくに牛乳はたんぱく質が溶け込んでいるぶん、腸からの水分吸収が良くなると考えられます。要は「飲むな」ではなく、「水分はしっかり、ただし冷たすぎるものを一気に飲むのは避けてほしい」ということです。

「扇風機に直当たり」「冷房ガンガン」も避けて

同じ理屈で、風呂上がりのビールも、本当のことを言えばもったいない飲み方です。冷えたビールは胃腸を冷やし、せっかくの温熱効果を止めてしまいます。理想を言えば、30分ほど体が落ち着くのを待ってからのほうがいいのです。

とはいえ、おいしいのもよくわかります。それが何よりの楽しみという方を、無理に止めるつもりはありません。あまり厳密なことを言って、お風呂そのものが面倒になってしまっては本末転倒です。我慢のしすぎでお風呂が嫌になるくらいなら、ビールも楽しみの一つとして、まずは入っていただくほうが大事だと思っています。ただし、ビールは利尿作用がありますので、必ずアルコールの無い水分は別に摂ってください。

もう一つ、夏ならではのもったいない習慣が、お風呂上がりに扇風機の前や冷房の部屋へ直行することです。汗が引くまで涼む。夏なら誰もがやることですし、気持ちもいいですよね。でも、これもやり方によっては温熱効果を台無しにしかねません。

お風呂上がりの「扇風機の前」や「冷房の部屋」は気持ちがよいが、やり方によっては温熱効果を台無しにしかねない。
写真=iStock.com/ArtMarie
お風呂上がりの「扇風機の前」や「冷房の部屋」は気持ちがよいが、やり方によっては温熱効果を台無しにしかねない。※写真はイメージです

もちろん、タオルで拭いてもなお汗がどんどん吹き出してくるなら、それは入りすぎ、体温が上がりすぎたサインなので、扇風機で冷やしてもよいでしょう。しかし、タオルできちんと拭けば汗が滲んでこない程度なら、話は別です。そこで扇風機や冷房に当たると、せっかくの温熱効果がリセットされ、逆に体を冷やしてしまいます。

心地よくお風呂を終えられたなら、すぐ涼むのではなく、自然に体温が下がるのを待つほうが理想です。冷房のきいた部屋へ直行する場合も、極端に冷えた部屋は避け、緩やかな冷房程度にとどめたほうがよいでしょう。

おすすめは40度、「熱すぎるお湯」はNG

一方で、季節を問わず、熱いお湯が好きな方もいらっしゃると思います。ただ、これも注意が必要です。熱いお湯は交感神経を強く刺激して体を興奮させますし、皮膚はたんぱく質でできているので、熱すぎると表面が荒れることもあります。夏の間はヒートショックの心配こそ少ないものの、やはりあまり熱いお湯はおすすめできません。

年齢とともに、皮膚は温度に鈍感になっていきます。それが、年を重ねると、かなり熱いお湯でないと「入った気がしない」と感じるようになる理由です。でも、それはご本人の感覚が鈍っているだけで、体にとっては負担になっている可能性があるのです。自分ではちょうどいいと思っていても、実は体には熱すぎる、ということが起こります。

一番温度に敏感なのは、子供です。たとえばお子さん、お孫さんと一緒に入って「お風呂が熱い」と言われたら、それはサインと捉えてください。可能なら湯温計で確認し、40度くらいに設定する。湯温計がなければ、若い人やお子さんに一度お湯の温度を見てもらうのも一つの方法です。年齢が上がった方ほど、自分の感覚を過信せず、まわりの感じ方を参考にすることが大切です。

それでもどうしても熱いお風呂に入りたい、という方は、最初は40度から入り、最後に追い焚きで42度まで上げるといいでしょう。こうして段階的に温度を上げれば、いきなり熱いお湯に入るより、体への負担はずっと少なくて済みます。

入浴後の保湿を忘れないで

また、ぜひ忘れないでほしいのが、入浴後の保湿です。入浴すると皮脂が落ち、肌の乾燥が進みます。夏は湿気が多いから大丈夫、と油断しがちですが、季節を問わず、お風呂から出たら10分以内に保湿していただきたいのです。

これは性別関係なく、男性でも同じです。乾燥は肌荒れのもとになりますし、せっかく入浴で整えた肌の状態を保つためにも、ここはひと手間かけてほしいところです。

ここまで控えてほしいことをご紹介しましたが、最後は、この夏に向けて「ぜひ取り入れてほしい習慣」をお伝えしておきます。ずばり「暑熱順化」です。

近頃の夏は、気温が40度近く、場合によっては40度を超えるような日が当たり前になってきました。酷暑を乗り切るための対策としても、本格的に暑くなる前の段階で、お風呂の活用をぜひお勧めしたいのです。汗をかくくらいの入浴を2週間ほど続けると、汗をかきやすい体になり、熱中症に強い体ができるという研究があります。ぜひ毎日湯船に入っていただき、体を慣れさせていただきたいと思います。

(参考:日本生理人類学会第 80回大会, 2019

「38度で20分」の入浴習慣で、酷暑対策

このとき意識したいのが温度です。暑くなり始めの時期は、できれば40度で10分、しっかり汗をかく。そして40度で入るのがつらくなってきたら、無理せず38度に切り替えて20分にする。こうして体を少しずつ暑さに慣らしておけば、本格的な夏も乗り切りやすくなります。

冷たい水を一気に飲まない、すぐ涼まない。そして、汗をかいたらしっかり保湿する。夏にやりがちな習慣を少しずつ見直しながら、汗をかく習慣をつけていく。そうすればお風呂の効果はぐっと高まり、ことしの夏を健やかに乗り越えられるはずです。

暑くなり始めの時期は「40度のお湯に10分」で汗をかく習慣を。40度がつらくなってきたら、無理せず「38度のお湯に20分」でもOK。
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暑くなり始めの時期は「40度のお湯に10分」で汗をかく習慣を。40度がつらくなってきたら、無理せず「38度のお湯に20分」でもOK。※写真はイメージです