夏は汗をかき、体臭が気になる季節だ。嫌なニオイを抑えるには、どうすればいいのか。医師の早坂信哉さんは「年齢に関係なく、体臭の元になるのは汗と皮脂だ。これが雑菌で分解されることで嫌なニオイにつながる。基本は湯船に浸かって汗と皮脂を落とすことだが、朝の1分でできる対策をぜひ試してほしい」という――。(第1回)
うちわであおぐ男性
写真=iStock.com/masamasa3
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嫌なニオイの原因は「汗と皮脂」

夏になると、汗や体臭を気にされる方からのご相談が増えます。とくに多いのが「シャワーだけで済ませてもいいのか」という質問です。

結論から言えば、私はシャワーをどんどん活用していただきたいと思っています。体臭の元になるのは、主に汗と皮脂です。これらが雑菌によって分解されることで、あのニオイが出てきます。シャワーで流してあげれば、ニオイの原因そのものを効率よく洗い流せるわけですから、もし可能であれば1日に何回か浴びていただいてもかまいません。

皮脂は、時間が経つと「リパーゼ」という酵素で分解され、ニオイの成分に変わっていきます。だからこそ、こまめに洗い流して原因を取り除くことが、とても大事になります。

最近では、若い方でも気になる「ミドル脂臭」といった言葉も登場していますが、メカニズムは基本的に同じです。皮脂や汗が雑菌で分解されてニオイになる。ですから、流してあげることは、年齢に関係なく同じように意味があります。

「朝の1分シャワー」で体臭防止、おすすめは「41度」

体臭が気になる方にぜひやっていただきたいのが、朝のシャワーです。

かつて東京ガスが行った研究(*1)で、朝のシャワーが夕方までの皮脂を抑える、というものがありました。朝に1回、たった1分シャワーを浴びるだけで、一晩で出た皮脂をかなり除去でき、夕方まで皮脂の量を抑えてくれる、という内容です。

シャワーは短時間でいいのです。もしニオイが気になり、すぐにでも浴びられる環境ならばちょくちょく浴びていただいたほうがいいでしょう。

シャワーヘッドから勢いよくお湯が出ている
写真=iStock.com/Toru Kimura
朝に1回、1分シャワーを浴びるだけで、一晩で出た皮脂をかなり除去でき、夕方まで皮脂の量を抑えてくれる。(※写真はイメージです)

体臭予防という点では、温度を厳密に何度と決める必要はありませんが、目安としては41度くらいがいいと思います。理由は2つあります。

【Close-up:夏でも清潔感のある人、不快にさせる人】はこちら
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1つは、皮脂は冷たい水だと硬くなってうまく落とせず、ある程度の温かさがないと流せないこと。もう1つは、シャワーのお湯はヘッドから出て体に届くまでに少しぬるくなりやすいので、設定はやや高めの41度くらいにしておくと、ちょうどよく皮脂を流せるからです。

朝シャキッと目を覚ましたいなら、もう少し熱めの42度前後でもかまいません。少し熱めのシャワーには、自律神経を副交感神経優位の状態から交感神経優位へと切り替えて、体を目覚めさせる働きがあります。皮脂を抑えながら、日中を元気に過ごすスイッチも入る。朝シャワーは一石二鳥なのです。

一方で、上記理由から、水のシャワーはあまりおすすめしません。皮脂を落とすには、ある程度の温かさが必要なのです。

2~3分でも湯船に浸かったほうがいい

ニオイに関して言えば、本来はシャワーよりも湯船に浸かったほうが、汗や皮脂はより効果的に落とせます。

シャワーの利点は手軽さです。朝でもすぐにできますし、昼間に時間があれば浴びることもできます。一方で、きちんと汚れや皮脂を落とすという点では、やはり湯船の方がおすすめです。

お湯を張った湯舟
写真=iStock.com/Stossi mammot
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ここで一つ、知っておいていただきたいのが「洗う順番」です。汚れをしっかり落としたいなら、いきなり体を洗うより、まず湯船に4〜5分ほど浸かってから洗うほうがいいのです。これは一度お湯に浸かると角層や皮脂が柔らかくなり、汚れが落ちやすい状態になるからです。

もちろん、家族と湯船を共有していて「先に体の汚れを落としてほしい」と言われているなら、先に洗ってから湯船に入ってもかまいません。ただ、理想を言えば、一度浸かってから洗うほうが理にかなっています。

もし寝るまで時間がないという場合でも、ニオイや体臭を取るという目的なら、寝る直前に5分でも2〜3分でもいいので湯船にさっと浸かったほうがいいでしょう。隅々の皮脂や汗がきちんと落ちるので、ただシャワーを浴びるよりも効果的です。夜にシャワーだけで済ませると、落とし足りていない可能性は十分にあります。

一晩たった浴槽は“雑菌だらけ”

朝に湯船に浸かるのもおすすめですが、注意点があります。前の晩に誰かが入った湯船のお湯を、もう一度沸かし直して使うのは、あまりおすすめできません。なぜなら、雑菌がかなり増えてしまうからです。

私たちが以前行った実験では、一晩たつと雑菌が大幅に増えたという結果(*2)が出ています。

人の体から雑菌がお湯に溶け込み、さらに皮脂などの汚れが雑菌の栄養分になる。そこに温度も加わるので、かなり増殖してしまうのです。

とくに夏は、湯船の温度がなかなか下がらない環境です。これは雑菌にとっては好都合な環境とも言えます。もし朝に入るなら、お湯は入れ替えたほうがいいでしょう。時間に余裕のない方が多いとは思いますが、本来はそうしていただくのが理想です。

どうしても前日のお湯を使いたいなら、雑菌の増殖を抑える除菌・防腐用のタブレットのような製品も市販されていますが、できれば入れ替えてしまうのがよいでしょう。

「ゴシゴシ洗う」のはおすすめしない

また、実験的に証明されているわけではありませんが、「洗いすぎ」には注意が必要と言えます。

皮膚の表面には常在菌という、いわばよい働きをする菌がいます。石鹸やボディソープで極端に洗いすぎると、この常在菌まで取り除かれてしまい、菌のバランスが変わってしまう可能性があります(*3)

その結果、かえってニオイが出やすくなることも考えられます。

前述の研究も、石鹸をつけずにお湯だけで洗うという前提でした。石鹸でゴシゴシこすると、皮膚のバリア機能が弱くなり、ニオイが出やすくなったり、肌が荒れて痒みが出たりする可能性があります(*4)

ですから、1日に何回もシャワーを浴びるのはいいのですが、その都度石鹸でゴシゴシ洗うのはおすすめしません。日中のシャワーは「お湯で流すだけ」を基本としてください。また、粗めのナイロンタオルで体をこするのも、角層を無理に剥がしてしまうので、かゆみや皮膚の乾燥につながります。

泡で優しくなでる、汚れを吸うイメージで

先も出ましたが、ナイロンタオルは、体を洗う、こするためではなく、石鹸を泡立てるために使ってほしいのです。よく泡立てた石鹸を手にとり、優しく泡でなでる。汚れを物理的にこすり落とすのではなく、泡で吸着させるイメージです。

理想は、手のひらに乗せてひっくり返しても落ちないくらいのしっかりした泡。それを皮膚に乗せて、汚れや皮脂を吸着させます。泡を乗せたら長く待つ必要はなく、さっと流してしまって大丈夫です。

手のひらに乗せてひっくり返しても落ちないくらいのしっかりした泡
写真=iStock.com/deepblue4you
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そして、シャワーを当てるべきなのは、皮脂が出やすい部分です。脇の下、お尻、顔、頭、そして背中や胸の中心部分。こうした皮脂の多いところはお湯をしっかり浴びていただく。逆に、手足の末端や腕などは、それほど神経質に洗わなくてもかまいません。

また、ボディソープには、消臭効果やニオイを防ぐ効果をうたった製品もありますので、気になる方は使ってもいいでしょう。ただ、頻繁に石鹸を使いたいなら、セラミドなどの保湿成分が入ったものがおすすめです。何度洗っても肌がガサガサになりにくいからです。

とはいえ、先ほどお話ししたように、洗いすぎは常在菌のバランスを崩しかねません。ですから、そもそも石鹸はそんなに頻繁に使わなくていい、というのが私の考えです。体臭対策としては、シャワーのお湯で流すだけで十分だと考えています。

体臭に思い悩みすぎないで

最後に、体臭に悩む方にお伝えしておきたいことがあります。ご自身が思い悩むほど、におっていない可能性もある、ということです。

私は以前、心療内科の外来を担当していたことがあります。そこで感じたのは、ニオイが気になるという方ほど、実際には周りはその方のニオイに気づいていないケースが意外と多い、ということでした。ニオイがしないのにご本人だけが深刻に思い悩んでいる。そういう患者さんもいらっしゃいます。

腕を上げ、腋に顔を近づけてにおいを確認している男性
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
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もちろん、ニオイに注意していただくことはエチケットとして大事ですが、このような考え方も押さえていただければと思います。

まとめると、体臭の対策はとてもシンプルです。朝、1分シャワーを浴びる。この習慣だけで、夕方までニオイは抑えられます。一つだけ気をつけるなら、温度です。暑いと冷水で流したくなりますが、皮脂は冷たい水だと硬くなって落ちにくい。ニオイ対策という点では、夏でも41度くらいのお湯でさっと流すのが正解です。

(参考文献)
(*1)東京ガス「『朝シャワーの体臭予防効果』~朝1分シャワーを浴びれば、体臭予防につながる~
(*2)ファインバブルと紫外線の組み合わせによる直接的なオゾン水作製と活性酸素種への変換による革新的殺菌技術開発(早坂信哉, 秦 隆志 他. JST A-STEP. 2021)
(*3)Microorganisms. 2020; 8(11):1634.
(*4)J Wound Ostomy Continence Nurs. 2008;35(1):84-90.