■編集部より指令

女性は、付き合う前から子どもが欲しいなんていう話をすると、相手にドン引きされたり、結婚後に話し合っても「この仕事をやり遂げてから」などとはぐらかされたりします。どうにかこの男女の温度差を縮める手立てはないものでしょうか。

■大宮冬洋さんの回答

男が子作りを決意するために必要なこと -結婚と子ども・男の言い分
http://president.jp/articles/-/11424

■佐藤留美さんの回答

ゲーテも逃げ出した

王様であろうと、百姓であろうと、自己の家庭で平和を見出す者が、いちばん幸せな人間である――。

そう言ったのは、ゲーテですが、そのゲーテからして、22歳のとき、自分が一目ぼれした少女に結婚をほのめかされると逃げるように去り(諸説あり)、婚約、婚約解消、不倫、事実婚などを繰り返し、70歳を過ぎてなお18歳の少女に恋するなど自由奔放な恋愛生活を送っています。

ゲーテほど多情ではないにせよ、多くの男性は、家庭の安らぎを求めながらも、束縛を嫌う傾向があるのではないでしょうか。

女性が、男性と付き合う前から、子どもが欲しいだの結婚願望をほのめかすと、引かれてしまうのは、ある意味、当然というか納得できる話です。

では、なし崩し的に「できちゃった結婚(最近は授かり婚というのですね)」に持ち込み、晴れてゴールインとなっても、このスタイルの結婚の離婚率は思いのほか高く、5年以内に約44%が離婚するなんてデータもあります。

夫婦のどちらかが、あるいは両方が、子どもを産み育てる覚悟がないまま、大変なんてものではない子育てが始まると、その分担を巡り死闘が繰り広げられ、お互い「騙された」と憎しみ合う結果となるのではないでしょうか。

覚悟なき出産・育児――。いつの時代もそのツケを背負わされるのは、何の罪もない子どもです。

だから私は、結婚後に子作りをほのめかすと、「この仕事をやり遂げてから」とはぐらかす男は、ある意味、誠実だと思うのですが……。ちゃんと子どもを迎える準備態勢を整えたいと言っているわけですからね。

本当に子どもが欲しいのなら、旦那がその仕事をやり遂げるまで、だいたい半年や1年の話でしょうから、そのくらい、待ってあげればいいのではないでしょうか。

子どもをつくりたい動機は純粋か

もっとも、女性の年齢が、出産限界年齢に近付いていれば、話は別ですが……。

そんな時は、男性はデータで物事を示されると納得するという傾向がありますから、いかに高齢期は妊娠確率が減るか、リスクが高いかなどを、統計などを使って説明すれば、分かってくれる話だと思います。

だいたい、夫婦や恋人同士が揉めるのは、相手が自分の都合だけで物事を語っているときなんですね。

子どもが欲しい……というのも、隣の席の子が育休中で、自分は必死でその穴を埋めてあげているのに、それを知らないソイツは毎日フェイスブックで幸せそうな育児日記を見せつけてくるからだとか、同性と張り合う意味で欲しがっている場合もしばしばあったりする。

最近は特にワーキングマザー礼賛の嵐で、働くママがカッコいい、特に、子どもは1人より2人、2人より3人、しかも男女が揃っているのが1番ステイタスが高くてエバれるという風潮がありますから、女性が焦るのもよく分かります。

でも、「子どもが欲しい」動機が、そうした僻み根性や負けず嫌いから発生しているのでは、その意図がご主人に見透かされ、引かれてしまう場合も多々あるのではないでしょうか。

子どもが欲しいのは、あなたと家族になりたいからだとか、あなたと似た子どもが欲しいからだとか、自分本位ではない、説得力のある理由を心の底から言えれば、抵抗するご主人は少ないのではないでしょうか。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。