五月病対策に食べると良い食品はあるのか。管理栄養士の藤橋ひとみさんは「食事はあくまで補助的なアプローチだが、食事とメンタルの関係については、一定のエビデンスが蓄積されている。不調を乗り切るための一つの手段として、『腸を整えるレシピ』がある」という――。

5月に「なんとなく不調」が増えるワケ

新年度が始まって1カ月ほどが経つ5月。「なんとなくやる気が出ない」「気分が落ち込みやすい」といった不調を感じる人は少なくありません。これが、いわゆる「五月病」と呼ばれる状態です。

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こうした不調は、単なる気分の問題ではなく、環境変化や生活リズムの乱れが重なって起こるものと考えられています。では、なぜこの時期にメンタルは揺らぎやすくなるのでしょうか。そして、食事でできる対策はあるのでしょうか。

4月は入学や異動、転職など、生活環境が大きく変わる時期です。新しい人間関係や業務への適応は、知らず知らずのうちにストレスを蓄積させます。世界保健機関(WHO)も、社会的要因はメンタルヘルスに影響を与える主要な要因の一つであると指摘しています[1]

さらに、ストレスは心理面だけでなく、生理的な反応にも関係します。近年の研究では、慢性的なストレスが炎症反応や免疫機能に影響を及ぼす可能性が示されています[2]

加えて、新生活によって睡眠や食事の時間が不規則になりやすい点も見逃せません。こうした生活リズムの乱れは、自律神経のバランスに影響し、心身の不調につながると考えられています[1]

部屋の隅に座っている鬱々とした男性
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
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腸と心はつながっている

近年注目されているのが、「腸と心の関係」です。腸と脳は、神経・免疫・ホルモンといった複数の経路を通じて、双方向に情報をやり取りしています。この仕組みは「腸脳相関」と呼ばれています[3,4]

例えば、腸と脳は迷走神経を介して直接つながっており、腸の状態が脳に影響を与える可能性があります。また、腸内細菌は代謝産物を通じて免疫や神経機能に関与することも報告されています[4,5]

こうした背景から、腸は「第二の脳」と表現されることがあります。ただし、腸が脳のように物事を考えるわけではありません。あくまで、神経やホルモンを介して脳と情報をやり取りする仕組みの一部として理解することが重要です。

では、腸内環境を整えることでメンタル不調は改善するのでしょうか。

食事とメンタルの関係については、一定のエビデンスが蓄積されています。例えば、野菜や果物、魚などを含む健康的な食事パターンは、抑うつリスクの低さと関連することが、複数の研究を統合したメタ解析で報告されています[6]。また、プロバイオティクス(生きた有用菌)の摂取によって、抑うつ症状の改善がみられたとする研究もあります[7]。ただし、これらの結果は一貫しておらず、効果は菌の種類や摂取量、個人の腸内環境によって異なると考えられています[7,8]。そのため、「腸内環境を整えればメンタル不調が改善する」と断定することはできません。現時点では、両者の関連が示唆されており、食事はあくまで補助的なアプローチの一つとして位置づけるのが妥当です。

「腸活」で意識したい2つのポイント

では、日常生活で取り入れられる食事の工夫にはどのようなものがあるのでしょうか。

まずは、腸内環境を整える、いわゆる「腸活」中の食事で意識したい2つのポイントをご紹介します。

1.発酵食品を取り入れる

発酵食品は、腸内環境に影響を与える可能性がある食品として知られています。発酵過程で生じる微生物や代謝産物が、健康に関与する可能性が指摘されています[9]。特にヨーグルトなど生きた有用菌(プロバイオティクス)を含む発酵食品に注目が集まっていますが、一度食べればすぐに変化が表れるものではないため、継続的に取り入れることが重要です[7]

2.食物繊維を意識する

食物繊維は、腸内細菌のエサ(プロバイオティクス)となる重要な栄養素です[10]。野菜、豆類、海藻、果物などに多く含まれています[11]。腸内細菌は食物繊維を発酵させ、短鎖脂肪酸と呼ばれる物質を産生します。これが腸内環境の維持に関与すると考えられています[12]

よくある誤解:ヨーグルトだけでは不十分⁉

腸活というと、「とりあえずヨーグルト」と考えてしまいがちです。ただ、腸内環境はそれほど単純ではありません。プロバイオティクスの効果は個人差が大きく、食品の種類や菌株によっても異なります[8]。また、腸内環境は日々の食事全体の影響を受けるため、特定の食品に頼るだけでは不十分です。重要なのは、発酵食品に加えて食物繊維を取り入れ、規則的な食事を続けることです。こうした積み重ねが、腸内環境の土台を整えると考えられています[11,12]

ヨーグルト
写真=iStock.com/xefstock
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腸活を成功させる鍵は「組み合わせ」

発酵食品と食物繊維は、それぞれ単独で考えるのではなく、組み合わせて摂ることが重要であることが分かっていますヨーグルトなどの含まれる有用菌(プロバイオティクス)と有用菌のエサとなる食品成分(プレバイオティクス)の混合物で、宿主の腸内環境改善に役立つものを「シンバイオティクス」と言いますが、このキーワードも少しずつ認知されてきたのではないでしょうか[13]。腸活に限らず、健康的な食事に近づく鍵は、ある特定の食品を多く食べるのではなく、複数の食品をなるべく多く組み合わせることにあると言っても過言ではないでしょう。

腸活を加速させる簡単レシピ

私がヨーグルトを食べる時のレシピをご紹介します。

■バナナヨーグルト

ヨーグルトにバナナなどのお好みのフルーツを加えるだけ。普段ヨーグルトを単体で取り入れている方は、まずはコンビニでも買えて年間を通して入手しやすく常備できるバナナをプラスしてみてはいかがでしょうか。甘味を追加したい場合は、プレバイオティクスの1つであるオリゴ糖を追加するのがおすすめです。食べ応えを追加したい場合はさらに食物繊維を強化できるグラノーラ、シリアルを加えても良いでしょう。

■ヨーグルトスムージー

ヨーグルトにお好みの冷凍フルーツや野菜を加えてミキサーにかけるだけ。近年、コンビニでもブルーベリーやマンゴーなどの冷凍フルーツが入手できるようになりました。その日の気分で好みの組み合わせを作れるよう、冷凍庫に複数の冷凍フルーツ・野菜を常備しておくと便利です。

バナナヨーグルト
写真=iStock.com/kaorinne
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食事のリズムを整えることも忘れずに

食べる内容だけでなく、食事のタイミングも重要です。食事時間の乱れは体内リズムに影響を与える可能性があり、規則的な食事が健康維持に寄与すると考えられています[14]

食事改善というと、「毎日完璧にやらなければ」と考えてしまいがちです。しかし、習慣形成の研究では、行動が定着するまでには時間がかかることが示されています[15]。数日だけ頑張るよりも、無理なく続けられる形で取り入れることの方が、結果的に効果的です。

五月病と呼ばれる不調の背景には、ストレスや生活リズムの乱れといった要因が複雑に関わっています。そして近年では、腸内環境とメンタルの関係にも注目が集まっています。ただし、腸活はあくまで“補助的なアプローチ”であり、特効薬ではありません。だからこそ大切なのは、発酵食品や食物繊維を取り入れながら、無理なく続けられる食習慣をつくることです。5月の不調を乗り切るための一つの手段として、「腸を整える食事」を見直してみてはいかがでしょう

【出典】(全て2026年4月22日参照)
[1]World Health Organization. World mental health report: Transforming mental health for all.
[2]Slavich GM. Life Stress and Health: A Review of Conceptual Issues and Recent Findings. Clinical Psychology: Science and Practice. 2016. Oct;43(4):346–355.
[3]Carabotti M, Scirocco A, Maselli MA, Severi C. The gut-brain axis: interactions between enteric microbiota, central and enteric nervous systems. Annals of Gastroenterology. 2015. Apr-Jun;28(2):203–209.
[4]Cryan JF, O’Riordan KJ, Cowan CSM, et al. The Microbiota-Gut-Brain Axis. Physiological Reviews. 2019. Oct 1;99(4):1877–2013.
[5]Mayer EA. Gut feelings: the emerging biology of gut-brain communication. Nature Reviews Neuroscience. 2011. Jul 13;12(8):453-66.
[6]Lassale C, Batty GD, Baghdadli A, et al. Healthy dietary indices and risk of depressive outcomes: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Molecular Psychiatry. 2019. Jul;24(7):965–986.
[7]Ng QX, Peters C, Ho CYX, Lim DY, Yeo WS. A meta-analysis of the use of probiotics to alleviate depressive symptoms. Journal of Affective Disorders. 2018. Mar 1;228:13–19.
[8]Sanders ME, Merenstein DJ, Reid G, Gibson GR, Rastall RA. Probiotics and prebiotics in intestinal health and disease: from biology to the clinic. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2019. Oct;16(10):605–616.
[9]Marco ML, Heeney D, Binda S, et al. Health benefits of fermented foods: microbiota and beyond. Current Opinion in Biotechnology. 2017. Apr:44:94–102.
[10]Gibson GR, Hutkins R, Sanders ME, et al. The ISAPP consensus statement on the definition and scope of prebiotics. Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology. 2017. Aug;14(8):491–502.
[11]文部科学省,日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
[12]Makki K, Deehan EC, Walter J, Bäckhed F. The Impact of Dietary Fiber on Gut Microbiota in Host Health and Disease. Cell Host & Microbe. 2018. 13;23(6):705–715.
[13]Swanson KS, Gibson GR, Hutkins R, et al. The International Scientific Association for Probiotics and Prebiotics (ISAPP) consensus statement on the definition and scope of synbiotics. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2020 Nov;17(11):687–701.
[14]Challet E. The circadian regulation of food intake. Nat Rev Endocrinol. 2019 Jul;15(7):393–405.
[15]Lally P, van Jaarsveld CHM, Potts HWW, Wardle J. How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology. 2010. 40(6), 998–1009.