【相談内容】

最近、女友達は『夫にするならイクメンだよね~』と言い合ってます。でも私は『家事・育児より、男は稼ぎでしょ!』と思うんですが…古いでしょうか?(24歳・ユイさん 製薬会社)

【牛窪恵さんの回答】

「ゲットとフィット」で考える

ユイさんは、いま流行りの「リケジョ(理系女性)」で、大学院まで出てまだ入社1年目。この若さで婚活中と聞いて驚きましたが、すでにここまで考えているのも、すごいですよね。

でも婚活・妊活ブーム以来、“早婚”を視野に入れた動きも珍しくありません。

とくに慶応大学医学部の吉村泰典教授らが、「35歳の女性が出産できる可能性は、20代の半分である」と言い切ってから、20代女性の間では、「早く結婚、出産しないと」との焦りが強くなっているのも事実。

近年は男性も含めて、大卒組でも「晩婚VS早婚」の二極化が顕著になってきました。

さて、ユイさんのお悩み。「家事夫かキャリ夫(キャリア派の夫)か」で、考慮すべきポイントは、大きく2つあります。

1. 婚活市場で、どちらの男性をゲットしやすいか?
2. ユイさんの人生に、どちらの男性がフィットするか?

ゲットとフィット、この2つに分けて考えてみましょう。まずは“ゲット”から。

「あなたが考える『稼ぎのいい男』って、年収どれぐらいのイメージ?」

改めてユイさんに聞くと、彼女は「500万円以上かな」と言います。

「理想は年収600万円以上だけど、それって“3.5%”しかいないって、牛窪さんの本で読みました。だからちょっと落として、500万円ぐらいで(笑)」。

彼女が例にあげたのは、少し前の厚生労働省の調査(03年 助成調査)ですが、ここで「25~34歳の未婚男性(東京都)で、年収600万円以上は?」と探すと、確かにわずか3.5%しかいない。

また、その後の野村総合研究所の調査(09年)で、年収500万円以上の未婚男性を見ても、49歳まで含めて8%弱に限られてしまいます。

つまり、ユイさんが言う「年収500万円以上」を条件にした時点で、当てはまる未婚男性は1割もいない。ユイさんは妥協したつもりかもしれませんが、“ゲット”は非常に狭き門、と言えるでしょう。

ではもう1つの“フィット”について。

ユイさんに次の質問を投げると、ちょっと意外な答えが返ってきました。

専業主婦はツライ

私がユイさんに投げたのは、「結婚・出産後、仕事を辞めたいの?」との問いかけ。彼女はこう答えました。

「少し前までは、『専業主婦っていいな』と思ってた。でも最近、専業主婦の姉が“うつ”になっちゃって……。ずっと家にいるって、結構ツライらしんですよね」

そう、私も3年前、拙著『「婚・産・職」女の決めどき』(大和書房)の取材で、ビックリしました。1年間取材した東京・豊洲エリアの専業主婦(ママ)たちは、なんと9割がパスモやスイカ(ICカード乗車券)を持っていなかった。平日はクルマで遠出もしないので、「近所以外には、ほとんど行かない」とのことでした。

また、自分に収入がないのを少なからず引け目に感じ、500円の本を1冊買うだけで「夫に聞いてみないと」と嘆いていた。その点では、ふだんオシャレで明るい彼女たちからは想像もできない、“内向き”志向だったのです。

これまで、1500人以上の女性を取材(含:グループインタビュー)してきた私は、確信しています。専業主婦になるには、3つの「才能」がいると……。すなわち、

1. 高年収の男性に早くから“ツバ”をつけてゲットできる才能
2. ずっと家にいても、家族に尽くすだけで「幸せだ」と感じられる才能
3. 夫がリストラ不安に怯えても、「なんとかなる」と楽観視できる才能

とくに昨今は、3が大事。

バブルの時代、年功序列・終身雇用が守られていた社会では、高年収男性をゲットすれば「あがり」で、ほぼ一生安泰と思って間違いなかった。でもいまは、一寸先は闇。パナソニックほどの大企業が1万人規模のリストラ策を打ち出す時代です。

性格的に、「まぁ夫がリストラされても、なんとかなるわ~」と能天気でいられる女性はいいですが、そうでなければ夫だけの年収に頼ると、あまりにリスクが高すぎる。不安も募り、ストレスも溜まるでしょう。

ユイさんも、「私もせっかく(大学)院まで出たから、何かの形で仕事は続けたい」と言います。だとすれば、彼女の人生に“フィット”するのは……?

睡眠不足の日本人女性

やはり、結婚(出産)後もユイさんが働き続けるのを認め、サポートしてくれる男性。少なくとも、家事や育児をまったく手伝わない「バリキャリ夫」は、フィットしませんよね。

それにバリキャリ夫との結婚で、働く妻は体を壊しかねません。

グラフを拡大
日本の働く女性は世界で一番寝ていない

たとえば、ある調査で「働く(有職)女性」の睡眠時間を見てみましょう。これを見ると、日本の有職女性の睡眠時間は、他の国に比べてもダントツで短い(最下位)。ワースト2位、3位のノルウェーやスウェーデンに比べても、さらに30分以上も、寝る時間を確保できていない状況です(06年 総務省調べ)。

また夫婦の子育て、役割分担を見ると、「理想」は「フィフティ・フィフティ(夫 5:妻 5)」がトップで、3人に1人に以上(36%)。

でも「現実」には「夫 2:妻 8」(30%)がトップで、平均値も「夫 2.3:妻 7.7」と、圧倒的に妻に負担がいっている(09年 住友生命「スミセイ「子育てサポート」アンケート」)。

つまり、「働いている」というだけで女性の睡眠時間は削られる一方なのに、そのうえ出産しても夫がほとんど家事や育児を手伝わないとなれば、妻にどんどんストレスが溜まって当然。健康を害する危険性もあります。

しかも、ユイさんのように「何らかの形で仕事を続けたい」と思う女性の場合、人生のフィット感を考えても、「家事夫」の要素は不可欠なはず。

ではここで、再度“ゲット”に立ち返ります。家事夫は果たして、婚活市場でゲットしやすい存在なのか?

平均値で見れば、まだまだ日本の夫は家事・育児に消極的に見える。でも最近は、ちょっと変わってきました。

たとえば、13年に明治安田生活福祉研究所が行なった、「結婚・出産に関する調査(第7回)」。

この中で「現在の暮らしの満足度」を見ると、夫の役割分担や家事行動について、40代では「(まあ)満足」と答える妻が、それぞれ5割前後しかいない。でも30代妻では65%前後、20代妻では70%前後と、多くがそれなりに満足している様子。

ここ数年のイクメンブームもあり、男性の育児参加も確実に増えています。

年収を妥協するだけでは不十分

ただもう1つ、同じ調査で注目すべきデータがある。それは、「未婚女性が結婚相手に求める最低年収」。

これを見ると、20~30代でユイさんのように「年収500万円以上」の夫を探す女性が、いずれも3割程度いる一方で、同年代の未婚女性で

◆年収400~500万円未満でもいい =33%
◆年収300~400万円未満でもいい =24%

と、「300~400万円未満」をOKとする声も、4人に1人。さらに「収入は問わない」「年収300万円未満」の合計も、1割強に及びました。

となると、「家事夫&イクメン」だけなら、比較的容易にゲットできても、年収面では「私も働くし、年収400万円未満の男性でいいや」と割り切ったところで、まだ3割以上の女性がライバルになる。

つまり、単に理想年収を“現実寄り”に変えただけでは、そう簡単に相手をゲットできない時代。当たり前ですが、やっぱり女性も別の形で“自分の強み”をアピールできないと、結婚が難しい。それぐらいの意気込みで、婚活サバイバルに臨みましょう。

では、イマドキの婚活女性は、どんな強みをアピールすれば……?

それはまた、別の機会にお話ししますね!

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』(PHP研究所)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。