Amazonオーディブル(以下、Audible)は、声優や俳優による書籍の朗読をはじめ、多様な音声コンテンツを楽しめるオーディオエンターテインメントサービスだ。移動中、あるいは家事をしながら、音楽を聴くようにいつでもどこでも“聴く読書”を満喫できる。日本では2022年1月に定額聴き放題制に移行し、会員数は継続的に増加。現代の新しい行動様式として浸透するAudibleの魅力とは? 同カントリーマネージャーを務める逢阪志麻さんとAudibleを20年前から愛聴し続ける勝間和代さんが、自らのキャリアとともにその魅力を語り合う。

「リーガルからビジネスへ。『チャレンジを恐がらない』の精神で飛び込みました」(逢阪)

――リーダーとしてもご活躍のお二方ですが、逢阪さんはAudible カントリーマネージャーに就かれるまで、どのようにキャリアを積まれてきたのですか。

【逢阪】実は、現在取り組んでいるコンテンツ戦略や営業といったビジネスサイドの仕事はAmazonに入社してから始めたことです。幼少期をアメリカで過ごし、日本の大学を卒業した後、アメリカで弁護士としてキャリアをスタートしました。企業合併や買収、証券取引といった堅い仕事を15年ほど続けたのですが、この道を突き進んでいいのか? と思うようになりました。日本に初めて入ってくるようなビジネスに携わりたいと思っていたところ、Audibleが日本向けサービスを立ち上げるという話があり「おもしろそう」と思って。最初は企業法務として入社したんですよ。

逢阪志麻(おおさか・しま)
Audible カントリーマネージャー
日本向けサービスの事業統括を担当。入社当初は、アジア太平洋地域におけるAudible社の法律顧問を務める。その後、日本向けサービスのブランドおよびカスタマーエクスペリエンスのマーケティング、コンテンツ戦略を担当し、2021年11月より現職。入社以前は、ニューヨークの法律事務所であるPaul, Weiss, Rifkind, Wharton & Garrisonに12年間勤務し、ニューヨークと東京の両オフィスで企業のM&Aや証券関連の弁護士として活躍。

【勝間】どうしてリーガルからビジネスの分野に?

【逢阪】ある日、上司から「君は絶対にビジネスに向いてるよ」と言われて。自分以上に自分のことを信頼してくれる人がいることにも勇気づけられ、「チャレンジを恐がらない」の精神で飛び込みました。求められるスキルが全然違うので最初は苦労しましたが、トップダウンではなく、ダイバーシティを重視しフリーに意見を言い合えるチームの雰囲気がモチベーションになりました。

――勝間さんは、会計の分野でキャリアをスタートされました。

【勝間】社会に出たのが1985年の男女雇用機会均等法の制定直後で、2人の姉が男性社会の会社で苦労しているのを見て、自然に違う道を考えるようになりました。会計士、弁護士、医者などの選択肢の中で一番短い勉強時間でなれそうだったのが会計士でした。とりあえず会計士になってから後のことを考えようと(笑)。その後は、コンサルタントやアナリストの仕事をしてきました。

【逢阪】次々とチャレンジを重ねられてきましたが、その原動力はどこから?

【勝間】まずは「おもしろそう」という興味。20代の時に開いた「ムギ畑」というワーキングマザーのためのサイトも大きな励みになりましたね。パソコン通信からようやくインターネットに移行した時代です。私は21歳で初めの出産をしましたが、ワーキングマザーの数が非常に少なく、サイトのおかげで個々の情報を集約することができました。私を含めた多くのワーキングマザーが寄り添い、助け合い、情報交換できる場になったのです。いまも彼女たちとは、利害も上下もない関係が続いています。社外取締役として活躍する人も何人もいますよ。

「Audible歴約20年。充実のラインナップで、書店にいるかのように本選びから楽しめます」(勝間)

――勝間さんはAudibleの愛用者で、その活用法をご自身のYouTubeチャンネルで発信されています。

【勝間】私、Audibleが2015年に日本でサービスを開始する以前、まだ英語版しかない頃から聴いているんです。20年前ぐらいのスマートフォンもない頃からです。

勝間和代(かつま・かずよ)
経済評論家、中央大学ビジネススクール客員教授
東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在は、株式会社監査と分析取締役、国土交通省社会資本整備審議会委員、中央大学ビジネススクール客員教授。また、オンラインサロンの運営やメールマガジンの発行、YouTubeでの発信など、幅広く活躍する。

【逢阪】ええ⁉ ありがとうございます! Audibleがアメリカで創業したのが1995年。聴く環境が進化して整ったことで、オーディオブックの便利さが浸透してきました。日本では、2022年1月に月会費1500円の定額制聴き放題サービスを導入したことも追い風になっています。気軽にいろんなジャンルの作品を試していただけるようになり、聴取時間も増えました。

【勝間】Audibleは、私の中ではAmazonプライムなどと同じ仲間です。好きなものを好きなだけ聴いてみて、合わなければやめればいいし、おもしろかったら続ければいい。気に入ったり、理解を深めたかったらさらに書籍を買うこともあります。

【逢阪】Audibleで聴いておもしろかったら書籍や電子書籍を買うという方、またその逆もあり、補完関係が成り立っています。

――Audibleと書籍を組み合わせて語学学習をするというような活用法もありますね。勝間さんはオーディオブックをどのように選ばれますか。

【勝間】Audibleではフィーリングで作品を選んでいます。書店で本を選ぶ、あの感覚にすごく近いですね。

【逢阪】うれしいです。まさに書店のようなラインナップの多彩さと、書店に入っていくときのワクワクした気分を届けることを意識しています。ですので、小説、自己啓発、新書、洋書というように品揃えの豊富さはこだわりどころです。

【勝間】気になるものはライブラリに登録して、暇な時間にちょっとずつ聴いています。本を1、2冊買うぐらいの金額で、自分だけの図書館のように使えて、何度も聴き返せるので本当に便利です。

【逢阪】制作に関しては、声優さんや俳優さんに朗読してもらうこともあり時間がかかりますが、書籍によっては紙の書籍と同時に出版する取り組みも行っています。制作期間を短くしてもクオリティは落とすことなく、気持ちのいい聴き方をしていただける作品をお届けしていきたいと考えています。

「Audibleから始まる作品も誕生。オーディオならではの可能性を探ります」(逢阪)

――いま、力を入れているコンテンツを教えていただけますか。

【逢阪】Audibleのために作品を書き下ろしてもらう「オーディオファースト作品」です。文字で読まれるのではなく、音声で聴かれることを前提に書いてもらっています。参画いただいた著者の方々は、リズムをすごく大事にしてくださったり、音として聴いて気持ちのよい流れるようなきれいな文面で書いてくださったり。これまでになかった革新的な作品が生まれています。Audibleでしかできない試みやオーディオの可能性を感じられる企画はいつも考えています。新しいチャレンジは私たちの楽しみなのです。

【勝間】大人になっても誰かに読み聞かせしてもらえるというのは、幸せなことですよね。小さい頃、お母さんに読み聞かせしてもらったときのようなイメージ。私はお気に入りの声優さんから作品を選ぶこともあります。小説の場合は、再生速度を1.5~1.7倍速に設定していて、もう少し速くても内容はわかりますが、速すぎるともったいない。心地よく感じられる範囲で聴くようにしています。

【逢阪】そうなんです。再生速度は、0.5倍速~3.5倍速まで0.05単位で変更できるので、利用シーンに合わせて再生速度を変えたり、聴きやすい速さを見つけて楽しんでいる方が多いですね。

【勝間】スリープタイマー機能もあるので、夜、入眠時に使うのもおすすめです。人の声を聴きながらだと気持ちよく眠りにつけるんですよ。画面オフでも普通に聴けるところが素晴らしいですね。

「読み聞かせは、語り継ぐという意味でむしろ本来の本のかたち」(勝間)

――勝間さんにとって、Audibleのいちばんのメリットとは?

【勝間】いろいろありますが、歩きながら聴けることが圧倒的な魅力ですね。健康のために1日1万歩を歩くことにしていて、距離は約7キロ、所要時間は2時間弱。その間にAudibleを聴いています。動いているときに“本が聴ける”というのはすごいメリットです。位置づけは音楽とほぼ一緒です。

ウオーキングのほか、ゴルフ練習場で打っているとき、家事をしているときにもAudibleを楽しんでいるという勝間さん。「目や手は他の目的のために使われていても、耳は空いているという時間は思いのほかあるもの。そういった時間を有効活用したいですね」

【逢阪】私も「ながら聴き」をすることが多いですね。ジムで運動しながら、車や電車で移動しながら。隙間時間で活用するAudible会員の方の声が多いですね。オーディオブックを1冊聴く時間は、2時間くらいから長いものは10時間以上にもなります。時間がないときにはチャプターが短めの自己啓発本、家でゆっくりリラックスできるときは長編小説と、聴く本のジャンルを変えられたり。また、農作業をしているときや絵を描いているときに聴くという方もいらっしゃいます。

【勝間】長編の歴史物や長い考察物などを聴くのもいいですね。書籍だとくじけそうな大作も、人が読んでくれるので、コツコツ聴いている間にゴールできます(笑)。

――改めて、勝間さんにとって“本を読む”ということは、どんな意味がありますか?

【勝間】自分自身の体験は自分にしかできませんが、本は著者やその研究対象、過去の出来事も含めた膨大なことを教えてくれます。得られるものは非常に大きいですね。自分一人で人生を考えるのか、著者も合わせて何千人、何万人の知の蓄積を取り入れるのか。そう考えると、圧倒的に後者の方が有利です。

【逢阪】納得です。私たちは、Audibleのファウンダーのドン・カッツの「目は忙しいけれど心が空いている時間をAudibleは満たしたい」という言葉を大事にしています。できるだけ作品の選択肢を増やして提供することで、いろんな人にいろんな形で、Audibleによって心を満たしていただければと思っています。忙しくしているけれどキャリアを積んでいきたいという方に対しても、少しでも自分の時間が豊かなものに変わっていくお手伝いをしたいと思っています。

【勝間】私は、読み聞かせというのはむしろ本来の本のかたちなのだと思います。昔は紙じゃないと本が届けられなかったというだけ。“物語り”というくらいですから、人がお互いに語り継ぐという意味で、原点に戻ったんだなぁと感じています。

Amazonオーディブルは、いつでもどこでも気軽に音声でコンテンツを楽しむことができる、世界最大級のオーディオエンターテインメントサービスです。プロのナレーターや俳優、声優が読み上げる豊富なオーディオブックや、ニュースからお笑いまでバラエティあふれるプレミアムなポッドキャストなどを取り揃えています。日本向けの会員プランでは、会員特典として12万以上の対象作品を聴き放題でお楽しみいただけます。再生速度の調整やスマホでのオフライン再生にも対応。