4回目を迎えた「女性首長によるびじょんネットワーク(通称:びじょネット)」。このほど小池百合子東京都知事をはじめ20人以上の女性首長が参加、駐日女性大使や女性経営者も加わり、熱の入った議論を繰り広げた。びじょネットの模様はネットによる視聴が可能だ。リアルタイムでは見逃した方に、概要と見どころをお伝えしよう。

日本全国の女性知事、女性市区町村長が20人以上も

2022年11月20日、全国の女性首長や女性経営者、駐日女性大使による会議「第4回 女性首長によるびじょんネットワーク(通称:びじょネット)」が開催された。

同会議は、日本における女性活躍や女性のエンパワーメント推進を目的としたもの。今回も、20人以上の女性首長と約10人の女性駐日大使、著名な女性経営者がリアルまたはオンラインで集結し、女性の視点を取り入れた組織運営や地域活性化策などについて意見を交換した。

当日は基調講演と5つの分科会が行われ、そのうち分科会2にはプレジデント ウーマン編集長の木下明子がモデレータとして参加。女性首長や女性経営者たちと、今後のビジョンなどについて話し合った。

冒頭の開会挨拶では、東京都知事の小池百合子氏と、日本・東京商工会議所会頭の小林健氏により、会議の意義や女性活躍推進に関する展望などについて語られるとともに、山形県知事の吉村美栄子氏からの本会議への力強いメッセージが司会者によって紹介された。

次いで、内閣総理大臣補佐官(女性活躍担当)の森まさこ氏、ベルリン市長のフランツィスカ・ギファイ氏による応援メッセージが紹介された。基調講演では、駐日メキシコ合衆国特命全権大使のメルバ・プリーア氏が、メキシコでの女性活躍推進の取組みと現状、そして女性が社会的地位を高めるために女性への教育だけでなく、男性もまた、ともに成長し変化していかなければならないと述べた。そしてザッカーバーグ・メディア創立者兼CEO/Facebook元マーケティングディレクターのランディ・ザッカーバーグ氏は、Facebookでの経験や、自身のキャリアや出産、コロナ禍を通じて「ニューノーマル」をチャンスとしてとらえ適応する大切さ、現在力を入れているWeb3について語った。

※現在、ランディ・ザッカーバーグ氏の講演をアーカイブでご覧いただくことはできません。

その後、意見交換の舞台となる分科会がスタート。多くの女性首長や駐日女性大使、女性経営者が登壇し、5つの分科会に分かれてそれぞれのテーマについて意見交換や情報共有を行った。

開会を宣言する小池百合子東京都知事。

分科会に分かれ「女性のリーダーシップ」などを議論

分科会1では「サステナブルな社会と女性のリーダーシップ」をテーマに、持続可能な社会をつくるための牽引役として期待される女性リーダーの役割やリーダーシップについて議論が進められた。

分科会2では「地場産業や地域の活性化における女性活躍推進」をテーマに、次世代を担う女性人材の育成法や地域の産業活力を向上させるための取り組みを探究した。

分科会3では「女性が牽引する、次世代を見据えた未来戦略」をテーマに、女性ならではの力を国際関係や地域経営に生かしていくための方策が話し合われた。

分科会4では「女性の活躍が『この国のかたち』を変える」をテーマに、政治・行政分野で女性が活躍できる社会づくりを加速するための方策を提言した。

分科会5では「SDGsの推進と女性のエンパワーメント」をテーマに、具体的な施策や社会のコミットメントを広げるための方法などが提起された。

地域社会再活性化のカギは女性へのエンパワーメント

上記のうち、木下編集長がモデレータを務めた分科会2では、国内各地の女性首長5人が登壇。北海道虻田郡留寿都村長の佐藤ひさ子氏、青森県東津軽郡外ヶ浜町長の山﨑結子氏、茨城県土浦市長の安藤真理子氏、千葉県勝浦市長の照川由美子氏、和歌山県日高郡美浜町長の籔内美和子氏が、地域の抱える課題や今後の取り組み方針などを語った。

また、地域資源の加工を通じた新たなものづくりなどに取り組む「ONE・GLOCAL」代表取締役の鎌田由美子氏と、女性起業家を支援するシリコンバレー発の機関「Women’s Startup Lab」創業者CEOの堀江愛利氏が登壇。地域の課題解決に向けて、経営者の視点から提言を行った。

この分科会ではまず、各女性首長から地域の現状や課題が紹介された。いずれも女性リーダーの少なさや若い世代の流出、地場産業の衰退などに悩んでおり、意識改革のための研修やさまざまな女性支援策、女性の力を地域活性化に結びつける施策づくりなどに取り組んでいるという。

これに対し、鎌田氏は「地域に眠っている素材の加工販売が新産業の育成につながる」として、自らの経験談を共有。素材加工はサステナブルで投資リスクの少ない事業であり、加工作業は男性より女性のほうが力を発揮しやすいと熱を込めて語った。

堀江氏も「今、起業を成功に導くカギはイノベーション、テクノロジー、女性、そして地方」と、地方の女性たちを鼓舞。最近は、テクノロジーの発達でどこに住んでいても仕事ができるようになり、シリコンバレーの起業家にも都市から自然豊かな場所へと居を移す人が増えている。誰でもどこからでも起業したりコミュニティに入ったりできるようになったことから、地方においても女性の起業チャンスが広がっていると強調した。

こうした課題や提言を踏まえたうえでの今後の活動ビジョンについて聞かれた登壇者は、それぞれのビジョンをフリップボードに書き、画面越しに掲げた。

今後の活動ビジョンを掲げる茨城県土浦市の安藤真理子市長。

「女性の知と技で村の特産物を生かした加工品づくりを&ステキな作業衣づくり」(佐藤氏)、「男も女も意識改革」(山﨑氏)、「教育と研修」(安藤氏)、「魚食へのアプローチと郷土料理の伝承」(照川氏)、「輝いていただき寄り添う」(籔内氏)、「女性の事業機会の創出」(鎌田氏)、「イノベーションと起業で女性の活躍を加速」「全国一斉につながる起業家の活動とその支援」(堀江氏)──。未来を見据えた力強い言葉に、勇気を得た視聴者も多かったのではないだろうか。

最後に、木下編集長が「女性目線を生かしたアイデアで産業を興し、かつその決定権まで女性に与えていくことが大事」と語り、続いて今回の議論を総括した。

「女性へのエンパワーメントは、地域活力の低下や生活環境の悪化に直面している日本の大半の地域社会を再活性化させ、魅力ある地域をつくる原動力となるでしょう。同時に、こうしたエンパワーメントは企業経営にとっても地域連携や地域貢献の新しい形になり得ます。このことが実感できたディスカッションだったと思います」

プレジデント ウーマンの木下明子編集長。

公式サイトから当日の模様をアーカイブ配信中

分科会終了後には、全国の女性首長による宣言文が読み上げられ、約3時間にわたり密度の濃い議論が繰り広げられた会議は閉会を迎えた。

現在、びじょネットの公式サイトでは当日の模様をアーカイブ配信しており、基調講演や各分科会での議論などが視聴できる。国内外の女性リーダーたちによる提言は、きっと地域や企業における女性活躍推進のヒントになるだろう。

全国の首長をはじめ、多くの女性リーダーが登壇し白熱した議論が行われた。

「女性首長によるびじょんネットワーク」