——『プレジデントFamily』は今年、創刊15周年となりましたね。

2005年にプレジデント別冊として発刊、06年より定期刊雑誌としてスタートして、今年で15年となりました。

『プレジデントFamily』編集長 中村亮(撮影=遠藤素子)
『プレジデントFamily』編集長 中村亮(撮影=遠藤素子)

創刊当時、『PRESIDENT』誌において、「大学と学歴」「大学と出世」「金持ち家計」「教育」などを特集した号がとても好調だったんですね。そこで職場の問題解決マガジンである『PRESIDENT』の別冊として、家族の問題解決マガジン『プレジデントFamily』Vol.1を出したのです。3日間ほどで店頭に並んだ在庫がほぼ完売して書店さんよりご注文が殺到、急遽増刷するという勢いでした。翌06年3月にVol.2を出したところ前号以上の売り上げとなったため、7月より定期刊化しました。

私が編集長となった14年からは、季刊本誌+大百科というかたちでパワーアップ。より個別の読者ニーズにこたえるラインナップとなっています。

イチから雑誌を立ち上げてきたのですが、このごろでは取材をお願いするときでも「プレジデントFamilyです」と誌名を伝えると、あの雑誌ですねとご存じの方がずいぶん増えました。また、取材でお会いする東大生の方に「うちでも読んでいました」「中学入試に合格したときに『プレジデントFamily』に出していただきました」などと言っていただくことも。これも15年間の歩みがあったからで、本当に嬉しいですね。

「子育て・教育といえば『プレジデントFamily』」というイメージをお持ちいただけるようになってきたのかなと思います。近頃はテレビやラジオなどからも、弊誌の記事内容を使わせてほしいといったお声をかけていただくことが多いです。

——現在の読者層はどういった人たちなのでしょうか。

小・中学生のお子さんをお持ちの方が中心ですが、なかには「赤ちゃんが生まれたから購読します」といった方もいらっしゃいます。

ひと昔前の教育熱心な家庭と違い、親子一緒にさまざまな体験をしたり、じっくりと会話を楽しんだり、子供との時間を大切にしている、子育てを前向きに楽しんでいるご家庭が多いように思います。

創刊時とくらべても、共働き世帯が6割を超えるなど、両親ともに忙しくなっているはずなのですが、お子さんのことにも熱心で、周りの人に協力してもらったり便利な家電・家事支援サービスなどをうまく使ったりしながら、お子さんに向き合っているように感じます。

——昨年のコロナでは、学校が休校となったため家庭の役割が注目されました。

新型コロナ感染拡大防止のための休校やステイホームのために、家庭で子供たちが過ごす時間がとても増えています。

休校期間のために勉強も遅れてしまうといった「学校まかせにはできない」状態のなか、家庭学習への注目が高まっています。そんななか、創刊以来、家庭学習や「親ができること」を考え続けてきた『プレジデントFamily』へのご期待が高まっていることを感じます。

桐蔭学園・校門

ボードゲームが売れたり、料理をするご家庭が増えたりと、家族での過ごし方が注目されています。弊誌では、学習面だけに限らず、遊びやレジャー、休日の過ごし方なども、以前より注力していたテーマです。「在宅となったときの家での過ごし方に困っています」と言って、遊びながら脳が鍛えられるボードゲームを特集したバックナンバーをお求めいただくこともありました。

生活習慣の整え方や、時間管理の仕方、家庭での自分から机に向かう工夫などの企画も、「おうち時間」が長くなるなか、ますます求められていると思います。

一方で、オンライン学習や、YouTube・アプリなどを使った新しい学びについても、コロナ禍で一気に世界が広がりました。新しい学びに関する情報も常に発信していきたいと思います。

——読者に評価されている理由はどのように考えていますか。

子育て中の親に支持していただいている理由は、親目線にたった実用重視の本音の編集方針だと思っています。読者の子育ての悩みや課題に役に立つ、具体的なヒントを読者にお届けするために、「それって本当に役に立つの?」「わが家で使える情報なの?」と常に考えています。

今は、私たち親の世代の頃とは、子供を取り巻く環境も教育や学校も大きく変わっています。教育内容だけでなく、ハード・ソフト両面のデジタル化もコロナ禍で一気に進んでいます。

小学校では英語が必修化され、プログラミング教育も行われています。GIGAスクール構想で一人一台端末が配布され、学校でコンピュータを活用した学習が始まりました。公立一貫校や、国際バカロレア認定校、ネットの学校など新しいタイプの学校も増えています。

そんななか、わが子の進路や、身につけさせたい能力、おすすめの習い事など、新しい教育に対応した情報を求めるご家庭も増えていることを感じます。

2020年12月発売の号では「読解力」を、21年春号では「子育て新常識」を特集しました。どちらも新しい教育に対応するための特集ですが、新規に購読してくれた読者の方も多く、「初めて読みましたが、気になる情報がいっぱいでした」「学校も新しいことをやるようになり不安だったのですが、とても参考になりました」といったお声をたくさんいただきました。

——『プレジデントFamily』は中学入試や受験情報のイメージもあります。

よく「中学受験の雑誌ですよね」と言われることがありますが、受験をお考えの方に広くお読みいただいていると思います。

毎年、トップ中学の合格発表の取材に伺うのですが、『プレジデントFamily』の腕章をしているスタッフに、「愛読していました」「中学受験を支えていたバイブルでした」などと感謝の言葉をくださることもあります。お役に立てているのだな、と実感ができて、本当にありがたいことです(昨年は、コロナ禍で開成、桜蔭、筑駒など学校が合格発表の掲示を辞めてしまったのですが、直接お会いすることができずに残念でした)。

『プレジデントFamily』の腕章

中学受験は親の関りも大きいので、その分、不安を感じたり、情報をお求めの方も多いようです。学習面はもちろん、メンタル面のサポートや、親御さん自身のストレス解消など、受験家庭のニーズに合った情報をお届けしています。

また、トップ中学に合格したお子さんの勉強法や、読んできた本、時間管理術などは、受験する・しないにかかわらず、多くのご家庭に参考になるものも多い。中学受験をお考えのご家庭だけでなく、小さいうちからお子さんの将来のことを考えている方に広くお読みいただいています。

令和2年度 筑波大学付属駒場中学校入学合格者受験番号

雑誌だけではなく、デジタル媒体でも情報を発信しています。

有料情報サービス「中学受験部」では、合格したご家庭の具体的な工夫や、カリスマ講師がここだけで教えるノウハウなど、生の情報・タイムリーな情報を毎週お届けして、好評を頂いています。

——今後の展開について教えてください。

現在、季刊の本誌に加え、お子さんの年齢や個別のニーズに合わせた大百科シリーズを展開しています。

例えば0歳~3歳のお子さんをお持ちのご家庭に向けた『プレジデントベイビー』、小学校受験をお考えの方のための『日本一わかりやすい小学校受験大百科』、グローバル派に向けた『英語子育て大百科』、医師を目指すための『医学部進学大百科』などです。

子育ての考えも多様化しています。そのなかでそれぞれのニーズに合わせた一歩先の情報をお届けできたらと思っております。

また今年は、ドラマが大ヒットした「ドラゴン桜」とコラボをした、『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』を出版しました。ドラゴン桜で描かれているような、「学力なし、やる気なし、お金なし」から一発逆転で合格した、実際の東大生10人の親子の物語を紹介しています。

ドラゴン桜には、「1.一緒に朝ごはんを食べる」から始まる「東大合格必勝法の10カ条」というのがあります。子供の意欲を伸ばす家族の共通点が示されているのですが、実際に合格したご家庭の話を聞いても、それぞれ、がんばれた子を支える家庭の姿がありました。

また、9月には『藤井聡太 天才の育て方』というムックを発売しました。

実は、将棋の藤井聡太三冠のことを一般誌で最初に紹介したのは『プレジデントFamily』2015年7月号なんです。当時、中学1年生の藤井三冠とご家族を取材しました。

そんな藤井三冠の記事や、他のさまざまな分野で活躍する方への取材記事、さらには子供の才能を伸ばすための記事をまとめたものです。

今後は、これまでの紙の雑誌媒体だけではなく、デジタル媒体やオンラインでの情報発信も進めていく予定です。