一年を通して女性の多くが悩む「脚のむくみ」。キャリア女性であれば、コロナ禍による外回りの減少、対面機会の減少による日常的な歩行量や運動不足も悩みを加速させる一因になっているという。そこで、「むくみ」のメカニズムとその予防法と対処法を、足の総合病院のドクターに教えてもらいながら、未来の脚の健康につながるケア方法を探った――。
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ふくらはぎがパンパンに! 脚のむくみの原因とは?

夕方になると、いつもの靴がきつく感じたり、ふくらはぎが張ったりした経験はないだだろうか。こうした症状を感じるのは脚がむくんでいる場合もあり、意外にも多くの働く女性たちが、脚の「むくみ」を実感しているという。

むくみは生活習慣や環境にも起因するそうだが、とくに、昨年から続くコロナ禍により、就業・生活環境が大きく変化したことも、女性の脚のむくみを増幅させる一因となっている。

では、脚がむくみやすい習慣や環境とは一体どんなものだろうか。今回の取材をとおして導き出した脚のむくみが現れやすい環境や習慣をリスト化してみた。まずは下のチェックリストで確認してみよう。

むくみを引き起こしやすい習慣と環境

□在宅勤務で1日の歩行数が減った
□外出機会が激減した
□デスクワークでほぼ座りっぱなし
□立ちっぱなしの仕事が多い
□運動はほとんどしない
□エレベーター(エスカレーター)があれば階段は使わない
□睡眠(横になる)時間が少ない

上記のリストにチェックが多くつくほど、脚がむくみやすい状況なのだそう。では、なぜこれらの習慣や環境が「むくみ」を引き起こしやすくするのだろうか……。

脚のむくみを気にしてやみくもに対処する前に、まずはなぜ脚がむくむのかを知り、正しい予防法とケア方法を理解することからはじめよう。

“足の総合病院”ドクターに聞く! むくみの原因と対処法

女性に多いという脚のむくみの原因とその予防法・対処法を、東京・下北沢の足の総合病院「下北沢病院」副院長であり、血管外科専門医の長﨑和仁先生に伺った。

長﨑和仁先生
ながさきかずひと●下北沢病院・副院長。日本血管外科学会血管内治療認定医。「むくみは若い頃からの予防が重要。中年以降の脚の健康を左右します」

「まず、女性は男性よりも筋肉量が少ないため、脚がむくみやすい傾向にあります。人間のカラダは、心臓から動脈をとおして全身に血液を送り出し、静脈をとおして心臓に戻しています。脚に運んだ血液は重力に逆らって心臓に戻さなければなりません。そこで血液を心臓に戻すための“ポンプ”の働きをするのが、ふくらはぎの筋肉。地球には重力があるので、血液などの水分は下にある脚にたまりやすいのはごく自然なこと。ふくらはぎの筋肉を動かして心臓に戻せるといいのですが、この戻す力がなんらかの理由でうまく働かないと、血流が停滞して脚がむくんでしまうのです」

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むくみの主な症状

□夕方になるといつもの靴がきつく感じる
□ふくらはぎが張った感じがする
□靴下のゴム跡がくっきりと残る
□指で皮膚を押すと指跡が戻りにくい

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上記のような症状があれば、脚がむくんでいる可能性がある。水分が脚にたまりやすいのはカラダの構造的に自然な現象とはいえ、在宅勤務で気づけば一日中座りっぱなしだとか、ほとんど外出もしなくなり運動不足を自覚している人は要注意。ふくらはぎのポンプ作用が弱まり、下にたまった血液を戻す力が低下しているため、よりむくみが出やすい状態になっていると長崎先生。

では、むくんだときの対処法やむくみを予防する方法はあるのだろうか。

「実は、脚のむくみは、むくんだあとにケアするよりも、むくまないようにすることが大切なんです。第一に、できるだけ階段を使うなど歩くことを意識して血管を揉むふくらはぎのポンプ機能を強くすること。ハイヒールは足首を動かさずに歩けるので、ふくらはぎの筋肉は使いません。むくみにくくするにはできるだけ低い靴で歩くのがいいでしょう。

また、立ちっぱなしや座りっぱなしなど、ふくらはぎを動かさない状態を長く続けないことも大切。仕事中もできれば30分に1回は立ち上がって歩いたり、その場で立ってつま先をつけたままかかとを上げたり下ろしたりする運動を。椅子に座っているときも、床と平行に両脚を持ち上げて足首の曲げ伸ばし運動をするといいですよ。

むくみを繰り返さないよう、予防ケアを心がけよう

むくんでしまった日は、心臓より下肢を高くして寝るように。脚にたまった血液が心臓に戻りやすくなるので、朝にはむくみが引いているはずです。また、つま先から太ももに向かって脚を揉むようにマッサージするのも効果的。ただし、強く揉みすぎるとリンパ管が損傷し、むくみが悪化するので逆効果です。

むくみケアは意外にシンプルなものですが、先にもお伝えしたように、むくんだあとのケアよりも、日中も脚を動かすなどで適度な圧をかけ、ふくらはぎのポンプ機能を強くする心がけが重要なのです」

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長崎先生によると、脚のむくみは年齢を重ねるごとに引きにくくなるのだという。

「実感しにくいかもしれませんが、ゴム風船に例えるとわかりやすいでしょう。ゴム風船を繰り返しパンパンに膨らますと次第にゴムの弾力が失われ、元の状態に戻りにくくなってしまいます。

脚も同じで、むくみを繰り返せば繰り返すほど、血管や皮膚の弾力が失われ、むくみやすい脚になり、年齢とともにむくみ自体が引きにくくなってしまう。だからこそ、脚をむくませない『予防ケア』が大切なのです」

中年以降になると脚の筋力は衰えやすい。20年、30年後を見据えて日頃から“むくみにくい脚”を育てていくことが大切なようだ。

忙しい女性でもできる日中の“むくみ”ケアとは

むくみは翌朝になると引いていることが多い。朝には元に戻るからといって、むくみグセを放置してしまうと、逆にむくみやすい脚になりやすくなるため、注意が必要だ。

むくみにくい脚にするため、日頃からふくらはぎを動かす運動や正しいむくみケアを習慣化するように心がけよう。

運動やマッサージと同様に、日常生活で取り入れられるむくみケアとして、「弾性ストッキング(一般医療機器)」を取り入れてみるのも選択肢のひとつ。

“弾性ストッキング”とはあまり聞き慣れない言葉かもしれないが、着用することで末梢から中枢に向かって段階的に圧迫を加え、静脈血やリンパ液の流れのうっ滞による「むくみ」を緩和する効果を持つ、一般医療機器。

ストッキングタイプもあるので、スーツなどのビジネスファッションにも合わせやすく、出勤日の日中でも違和感なく使えそう。キャリア女性のむくみ対策のひとつとして取り入れてはいかがだろうか。

※他の疾患が原因でむくみが生じる場合もあります。重度のむくみ症状がある方、弾性ストッキング(一般医療機器)を使用しても症状が改善されない方等は医師にご相談ください。

忙しさに紛れてつい後回しになりがちだったむくみケア。むくみ予防のためにも、弾性ストッキングに一度トライしてみるのもいいかもしれない。

Text & Edit=戍亥真美 Photograph=田子芙蓉(人物)