薬膳や漢方は、自然の力で体を整える知恵。薬膳料理研究家の谷口ももよさんと、医師・漢方アドバイザーの正木稔子さんが、暮らしに無理なく薬膳や漢方を取り入れ、美しく健やかに過ごす秘訣ひけつを話し合いました。
左/正木稔子さん
まさきとしこ●医師、漢方アドバイザー。複数のクリニックで西洋医学に漢方薬を取り入れたスタイルで診療を行っている。

右/谷口ももよさん
たにぐちももよ●薬膳料理研究家、東洋美食薬膳協会代表理事、全日本薬膳食医情報協会理事長。薬膳料理教室「Salon de Maman」を主宰し薬膳の普及に努める。

旬の食材を活かして薬膳は簡単に始められる

【谷口】薬膳というと難しく考えられがちですが、身近な食材で体のバランスを整える薬膳料理がつくれます。薬食同源の考えのもと、食材の持つ効果を最大限に引き出し、体調や天候などに合わせて食材を組み合わせることで体のバランスを整えるのが薬膳です。それができていれば、普段はおみそ汁とごはんだけでも十分。天候や気候に沿った養生は旬の食材とも連動していて、旬の素材を食べるのも体にも良いことです。

【正木】自然の恵みをいただき、心身を整えていく――この点は漢方と共通していますね。漢方薬の原料となる生薬には、ショウガなど食材として使われるものも多くあります。

【谷口】特に旬の食材は、その時期に起きやすい不調に効果があります。例えば冬から春にかけては「気」が高まりイライラしやすい季節なので、春菊やヨモギなど、デトックス効果の高い苦みのある食材を取り入れるのがおすすめです。一方で、不調が現れてきたら漢方治療の出番だと考えています。

【正木】もともと漢方とは日本で独自の発展を遂げた医学。不調の根本を探り、西洋医学では原因が特定できない不調や、病気になる手前の「未病」の段階からアプローチします。食事で取り入れる場合とは異なり、漢方薬は複数の生薬を組み合わせているので、一つの処方で複数の症状を改善することもあります。

【谷口】まさに配合の妙ですね。

【正木】加えて、漢方では同じ症状でも人によって異なる処方を出すこともあります。私自身、高校生のころ、西洋薬の鎮痛剤で良くならなかった生理痛が漢方で改善した経験があるのですが、生理痛に効能がある別の漢方薬では効き目を感じられなくて……。漢方治療は症状に対してではなく、その原因となる心身のバランスの乱れを整えるように処方していくのが一つの大きな特徴なんです。

忙しい日々のなかでも「自分のための時間」を取る

【谷口】心身のバランスは重要ですね。私も20代で広告代理店に勤めていたころ、激務がたたって体調を崩してしまって……。若さにまかせて放置していましたが、出産後に原因不明のめまいに悩まされるようになり「自分で治すしかない」と思い立ったんです。そこで出合ったのが薬膳。忙しい時期は食事に無関心でストレスをお酒で解消する生活でしたが、食事を見直すと長年の不調が改善し、肌の調子もぐっと良くなりました。肌年齢は14歳若返りました。美と健康は食事からできていると実感しました。

【正木】不調の根本原因は、日々の生活習慣やストレスに潜んでいます。自分の体に目が向いていないときというのは、総じて心の状態が良くないんですよね。自分を大切にできていないことが不調の原因になっていると気づくことも大事です。

【谷口】働く女性は、仕事や家事、育児に追われて自分のメンテナンスを後回しにしてしまいがちです。けれど、やはり忙しさにかまけてはだめ。立ち止まって、自分を見つめ直す時間をつくるべきです。例えば毎日自炊はできなくても、消化のいい食事を取る、体を冷やさないなど、まずはできる範囲で養生を心がけてほしいですね。続けることが一番大切。自分に合った食材は何かを知って、おいしく食べて健康に役立てていただけたらと思います。自分に割いた時間は、必ず自分に返ってきます。

【正木】何よりも大切なのは、そもそも病気にならない健やかな体をつくっていくこと。そこを意識したほうが、結果的に、長くパフォーマンスを上げていくことができます。週に1度、自分の心と体に向き合う時間を持ち、疲れをリセットしてほしいと思います。そのうえで「最近、体調が優れないな」と感じたら漢方外来にいらしてください。

PRESIDENT WOMAN ビューティーセミナー
薬膳と漢方に学ぶ、インナービューティーの基本メソッド

[日時]2021年3月16日(火) 19:00~21:30
谷口さんと正木さんのトークイベントをオンラインで開催します。美しく、情熱的に働く日々を送っているお二人ですが、かつては忙しさのあまり体調を崩したり、生理痛などに悩まされた経験があったそうです。漢方や薬膳を取り入れることで、どのように不調を改善していったのか。お二人の実体験を交えながら、食の見直しによる美容・健康面での効果や、漢方薬を取り入れる際のポイント、免疫力アップのために心掛けていることなどをお伺いします。

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女性のための漢方情報サイト LIFE with KAMPO

Edit=Embody Text=新田理恵 Photograph=皆木優子