「所属意識」はどこで芽生える?
開場時間になると、仕事を終えた女性たちが続々と会場に集まってきます。着席すると隣り合った人同士で名刺を交わしたり、軽食のサンドイッチをつまんだりと、和気あいあいとしたムードの中で講義が始まりました。
講師を務めたのは、株式会社識学の冨樫篤史さん。社名の「識学」とは、人間の意識構造に着目して、経営現場で体系化した理論。上場企業や有名ベンチャー企業、スポーツチームなど累計1000以上の企業、団体が識学のメソッドを採用している(2019年3月27日現在)など、注目のマネジメント理論です。
この日のワークショップでは、5人1組のグループをつくり、マネジメントに関するさまざまな議題について話し合っていきました。まず最初に、それぞれが抱えるマネジメントの悩みをオープンにしていきます。参加者の意見の一部を紹介します。
・経営陣と社員の間で、業務への温度差があり、溝が埋まらない
・どの管理職も自己流でマネジメントしていて、統一した方法論がない
・年上の男性上司とのコミュニケーションがうまくできない
……など
続いて、冨樫さんが「所属意識はどうやれば生まれると思いますか?」「チームを批判するようになったメンバーに、どうすれば所属意識を持たせられると思いますか?」などの問いを投げかけ、グループで意見を交わしました。
参加者は、ベンチャー企業の経営者や、着任したばかりのマネージャー、管理職補佐などさまざま。
「うちの会社は合併を繰り返しているため、人によって所属意識や業務へのやる気に温度差が大きい」「転職で加わったメンバーの意識が変わらない」「会社のやり方を批判している人には、率先して問題解決のプロジェクトを実施してもらうのも一案」……。会社の実情を交えたトークは大いに盛り上がりました。
ルールの運用が、マネジメントの1丁目1番地
ディスカッションを終えると、冨樫さんが識学における「所属意識」についての考え方の基本を解説。
「集団への所属意識を育むのは、あいさつや整理整頓など誰にでもできる姿勢ルールの存在です。これは、その組織に所属する以上絶対に守るべき秩序と考えてください。ルールの運用は、マネジメントの1丁目1番地。ここが守れていない組織には、一体感が生まれないし、その先のパフォーマンス向上などはとても望めません」と冨樫さんは説明します。
会場からは「パフォーマンスを上げている社員がルールを守らないときはどう対処すべきか」「チームごとにルールが異なる場合はどのように浸透させるべきか」など、現場を知る管理職ならではのリアルな質問が飛びだしました。
冨樫さんは、ルールの設定方法にコツがあり、人によって解釈のブレの余地をなくすこと、実現可能な数に絞ること、ルールの設定・評価者を1本化することなどの対策をレクチャー。2時間のセミナーはあっという間に終了しました。
参加者の一人で、保険会社で部長補佐を務めている30代の女性社員は「意識改革は、基本的なことで達成できると知ってハッとしました。明日から実践してみたいです」と納得の表情でした。
Edit=Embody Photograph=木村基