五反田バレーの次の注目の街は田町

一方で、品川区はそれまで独自でITの誘致に力を入れていた。来年までの5カ年計画の中で情報通信産業支援を重要な政策として進め、毎年100社ぐらいにベンチャーにヒヤリングをかけてきた。

「行政とベンチャーの溝が大きくて、ヒヤリングされてもそこが埋まらなかったのが、五反田バレーができたことで、その溝を埋めることができたようです」(古川氏)

五反田バレーの代表を務めるマツリカ共同代表の黒佐英司氏

品川区と五反田のベンチャーの絆を深めたのは五反田にある日野学園でのイベント。

「品川というのは昔から製造業の街で、ソニーが本社を構えていました。実態調査をやると大崎五反田エリアで100社以上のベンチャー企業活動している。こうした企業を育成していこうとしてきているときに、日野学園でのドリーム・ジョブ・ツアーというイベントで五反田バレーと交流を持つようになったのです」(ものづくり課産業活性化担当、小川係長)

すでに品川区主催のイベントで五反田バレーが紹介されたり、日本政策金融公庫などの中小企業の創業支援イベントなどに参加するような取り組みが進められている。

「中小企業の物づくりに関する懇談会も年に1回開かれることになっています」(黒佐代表)

しかし、五反田は100人を超える企業のオフィスがほとんどない。そこが大きなネックとなっている。急成長を遂げると五反田を後にするしかない。

しかし、そんな五反田にも空いている物件は少なくなってきているという。では、五反田に次ぐベンチャー企業の街はどこになるのか。

「今後は五反田の近くの田町あたりが、注目の街になっていくと思います。家賃相場は似ていますし、慶應義塾大学の近くには飲食店も多い。芝浦側は再開発が進んでいる。ワンフロアー800坪ぐらいのオフィスビルができています。ホテルも建設されています。21年には山手線の新駅が品川と田町の間にできます。だから田町に移転を希望する企業も出てきています」(木幡氏)

そうなると五反田がさびれてしまうのかというとそうでもない。今後はさらに独自の機能を果たしていくとみられている。

「レッティは五反田から麻布十番に、オイシックスは大崎に移転しました。五反田のオフィスのキャパシティも限られているのも事実です。五反田バレーはなにも五反田にある企業だけに限定しているわけではありません。五反田にオフィスを構えていた企業や五反田とゆかりのある企業とも交流を増やしていきたい。むしろ今後はそうした広がりをもっと増やしていきたいと思っています。そして五反田はスタートアップ企業の集積地としてお互いかかわりあっていけるような場所にしていきたいと思っています」(黒佐代表)