いつからだろう、毎日ぐっすり眠れた実感がなくなっている。眠ろうとしても、寝付けない……。仕事にプライベートに忙しく過ごす一方で、実は眠りの悩みを抱える人は多い。よい眠りを手に入れるためにすべきことは何か。睡眠改善シニアインストラクターの内海裕子さんに聞いた。

働く女性の睡眠時間はもう削れないレベルに

30代、40代は仕事が面白くなり、結婚や出産などで生活が大きく変わる時期でもある。充実する日々の一方で、自分の時間の確保が難しく、また強いストレスにもさらされやすい。「そこで、眠りに悩みが出てきます。その悩みが慢性化し、しかも日中に集中力が低下するなどの問題が出ているなら、眠りに何かしら問題があると考えて対処すべきです。事実、日本人の3人に1人が眠りに何らかの問題を抱え、5人に1人が不眠症とされています。日本人の睡眠時間は、世界の中でもワーストクラス。しかも女性のほうが男性よりも睡眠時間が短い傾向にあります。つまり、日本人の女性はもう睡眠時間を削れないくらい頑張っているんです」

睡眠改善シニアインストラクターの内海裕子さんはこう指摘する。知らず知らず生活習慣が崩れ、気づけば眠りにくくなっていた……という人は少なくない。

ちょっとの夜更かしは集中力を低下させる

理想は、ベッドに入ればすっと眠りに入り、朝には自然と目覚めて起き上がれること。

「心地よい眠りが訪れるのは、体内のさまざまなリズムがそろっているとき。人間が眠たくなるには『睡眠覚醒リズム』『深部体温の低下』『睡眠誘発ホルモン・メラトニンの分泌』『睡眠物質の蓄積』『副交感神経が優位な、リラックス状態』……などの条件が必要です。なかでも『睡眠覚醒リズム』は人間の意思でずれやすいんです。だから睡眠の質を上げるには意識的に1日の起床・就寝時間をそろえることが前提になります」

ちょっとの夜更かしだから、と軽く考えがちだが、就寝時間がずれる影響は想像以上に大きい。「例えば1日1時間夜更かししている状態が10日間続くと、1日徹夜しているのと同程度まで脳のパフォーマンスが低下するという結果が出ています」と内海さん。

また、不足しがちな睡眠を補おうと「寝だめ」と称して、休日はお昼ごろまで寝るという人も多いが、私たちの体は眠りをためることはできないという。

「休日によぶんに眠ってしまう人は、眠りをためるのではなく、普段の生活で起きた睡眠負債を返済しているんです。ただ、人間の体には体内時計があり、プラスマイナス2時間以上の大きな変化には対応できません。だから土日に朝寝坊しすぎてしまうと、体内時計が狂ってしまい、月曜日に憂うつだったり、しんどくなるブルーマンデー症候群を引き起こします」

疲れて帰宅して、ついうたた寝してしまうのも、睡眠の質を低下させる一因になる。「しっかり眠るべき主睡眠の前にうたた寝すると、1日でためた睡眠物質が減少してしまい、眠りが浅くなりがちに。昼寝も午後3時以降はしないほうが望ましいですね」

では、平日の寝不足感はいつ解消すればいいのか。内海さんは、「ウイークエンドシエスタ」を勧める。土日でも極力起きる時間は平日と同じにし、午後3時前までの間に昼寝をすることが寝不足を解消する方法だ。

「目から入る光の刺激も重要です。朝浴びる光には、体内時計を24時間にリセットする効果があります。目覚めたら太陽を浴びて体内時計を整え、その後は朝食を摂るなどし、体温を上げることを意識していく。逆に夜はリラックスできる環境づくりを心がけて。スマホやパソコンは寝る前には見ない、照明は優しいオレンジ色にするなどと環境を整えると一層効果的です」

あてはまる人は生活リズムの見直しを! 不眠4タイプ

下記のような眠りのお悩みがあって、しかも日中に眠気があったり、集中力が続かなかったり、イライラして怒りやすいなどの自覚がある場合は改善が必要です。

理想の就寝時刻から働き方を逆算する

眠りを改善するには、「寝るとき」「起きるとき」の一時的な処方ではなく、生活全般の見直しが重要になる。「眠りを見直すには1日のスケジューリングを見直すべきです」

まず、現在の睡眠時間、自分時間、仕事時間、家族時間を書き出し、その横に理想の時間割を書き出してみよう。就寝時間から逆算すると、本来は何時までに仕事を切り上げるべきかが見えてくるはずだ。

「一般的に、集中力高く働ける時間は午前中。重要な決断が必要な会議などは朝時間に入れて、パフォーマンスを高めましょう。夕方は再び体温が上がり始め、活動的になるタイミングです。体を動かす作業でキビキビ動けます。また、私が会社で働いている時期に実感したのは、管理職が率先して仕事を切り上げることを実践していれば、チーム全体にその空気が広がるということ。女性管理職に意識してほしいですね」

睡眠改善シニアインストラクター
内海裕子 Hiroko Utsumi

編集者として雑誌やWEBメディアの創刊にかかわり、独立。現在は睡眠に関する正しい知識や健康的なライフスタイルについて情報発信している。睡眠に関する著書に、睡眠研究の白川修一郎監修による『快眠のための朝の習慣・夜の習慣』(大和書房)がある。

内海さん自身も、午後9時には就寝しているという。「早朝に1日のToDoをつくり、重たい仕事やメール返信をスピード感を持って進めています。起きてきた子どもを送り出したら、また仕事へ。朝に仕事のトップスピードを持っていくぶん、夜は仕事のことは考えず、メールも見ません。このスタイルになったのは、育児という自分の意思ではどうにもできない出来事があったからです。人生の転機をライフスタイルの見直しに生かしてみてください」

加齢は眠りにも影響し、年を取れば自然と眠りは浅くなり、睡眠時間は少なくなっていく。だからこそ、自分で意識的にリズムを整えていくことが大切。「冒頭で話したとおり、日本の女性は頑張っています。これ以上頑張るのではなく、メリハリのあるリズムを見直してみて。今日は眠れなくても、明日はきっと眠れるはずです」