不安で貯めたお金は不安を生み、自己を磨く投資はさらなる成長を生む
──いまや、日本全体で将来への不安感は強いですが、特に20~40代の若い女性たちに漠然と「老後のため」とお金を貯め続ける人が増えています。どうしたらその悩みは解消できるのでしょう?
【吉田】それは老後のためと言いながら、実は不安のためにお金を貯めているんですよね。不安のために貯めたお金は、また不安を生みます。私は4大陸5企業で働いてきましたが、世界中でそういう人をたくさん見てきました。
【森本】私と陸さんは今、東京証券取引所の来訪者のためのコンテンツ提供や資産運用に関するイベントの実施など、投資に興味を持ってもらえるような企画を担当しています。そこにいらっしゃる女性たちは20~40代の方も多いのですが、男性と興味の持ち方が違うと感じることがあります。
【陸】女性はとても熱心な方が多いのですが、イベント後のアンケートを読むと将来のお金への不安が圧倒的に多いんですよ。「現在の手取りが少ないけど、どうしよう」と悩んでいる一方で、「証券会社の口座を作るのが面倒くさい」とか「忙しくて時間がない」という理由で止まってしまい、漠然と不安を抱えたままの方が多いのです。
【吉田】お金の不安を消せない人は、目的意識を持つと良いと思います。「これからは、私はこういう人生を歩みたい」「老後こういうことがしたいから」「こういうビジネスを立ち上げたいから」など、嘘でもいいから、そういうポジティブなものに転換してそのためにお金を貯めてください。ポジティブなものは、不思議とポジティブなものを生みます。
私、これまでがあまりに過酷な人生だったから、すごいポジティブになっちゃったの(笑)。
──現在では多くの女性たちのロールモデルとなった吉田さんでも、お金で苦労された時代はあったのでしょうか?
【吉田】もちろん! だけど、あまりにも過酷だとお金って貯まらないんですよ。稼いだ途端に出ていく。私は、国際結婚して海外に行った途端に離婚したので、ベビーシッターを雇って働きました。それも高くて、給料が右から左に出ていく日々。それでも働かないといけない。苦しかったですよ。
ある日思ったのは、「私はお金のジェネレーターになろう」ということ。自分に投資をして、自分を通してお金が生まれる人間になろうと決めました。行く先々で無から豊かさをクリエートできる人間。周りにいる人も幸せになれるよね。
【陸】具体的には、どんな自己投資をされてきたんですか?
【吉田】ありとあらゆるものかな。営業だったからお客さんとの関係づくりのためにゴルフするなら、レッスン代。洋服やいい食べ物など、自分の健康や美を磨く費用も。自分への投資が増えるとどんどん輝いていくんですね。なにより娘への投資。次世代を形成していく以上の投資ってあるんだろうか。次世代の富のジェネレーターへの投資ね。
1日を“ハイスピリット”で過ごすために、どんなお友達と過ごして、どんな話をしたいか、どんな人といつも付き合っていたいか、どんな食べ物を食べていたいか。あなたがどうやったら今日1日“ハイスピリット”でキレイに美しく生きていけるか。経営者として思うのは、自分が伸ばしたいビジネスがあるなら、まずは自分が先に伸びろということです。
海外で営業として働き始めたとき、相手から時間をもらうためにすごい工夫したんですよ。15分の枠をエグゼクティブからもらえたら、それを死んでもいいから30分に延ばすためにあらゆる作戦を考えました。その人のバックグラウンドを調べ、話題を膨らませ、そして人間関係をつくっていく。そのために投資もリサーチも入念にしています。そういうことには怠惰であってはいけないのです。
自分の未来に投資をしましょう! お金は不安ではなく、富、豊かさのシンボルです。お金の本当の姿を理解し、愛してあげたとき、お金が喜び、自己発揮してくれる(お金が愛してくれる)使い方ができるんだと思う。
ウーマノミクス5年目突入、日本の女性が生む75兆円
──日本では、お金を稼ぐことやお金についておおっぴらに話すことを、あまり良しとしない雰囲気がありますよね。女性たちが働くこと、稼ぐことに高い自信を持てないのはそれも関係している気がします。
【吉田】私たちがウーマノミクスに取り組み始めて、もう5年目になります。しかし、その女性たちの活躍がどのぐらいの経済効果を生んでいるのかというお金への換算ってきちんと計算されたことがないのです。私は、これをきちんと数字にして表そうと動いてきて、その第一弾として「女性の活躍推進による成果・ビジネスインパクトの先進事例集」を経団連から最近、発表しました。
というのも、昨年ホワイトハウスに行ったのですが、アメリカではインディ・ウーマン(キャリアや私生活を楽しむ経済力のある独身未婚女性)市場というのが形成されつつあってその規模は100兆円市場といわれているんです。その時に大統領補佐官だったディナ・パウエルさんにお会いしたのですが、BRICS以上に大きい市場だと注目し、発表もされていました。
女性の活躍というと、すぐに“輝け”といわれますが、それだけでなく、もっときちんと私たちの価値や経済界でどれだけ貢献したか、数字として出すべきだと思います。輝けというなら、何ワット? 汗を何リットルかけばいいの? と具体的な数字に落とし込む。
ウーマノミクスをスタートさせたゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井さんが発表当時に言っていた、「女性の活躍で日本のGDPが15%上がり、75兆円が生まれる」というのこそ、その数字です。私たちの活躍をちゃんと経済効果に直しましょう。お金をもうけることが恥ずかしい、お金の話を堂々とするのはよくない、といったような風潮が日本にはありますが、働く女性にとってのお金って世界の経済効果増大への貢献のバロメーター、数字はUniversal Language、端的な価値の表現法。
【陸】女性たちももっとお金の話を堂々として、お金の知識を持つことで、社会を動かしているという意識が強くなるかもしれませんね。
【吉田】世界の消費者マーケットは、18兆ドルといわれています。日本円だと約2000兆円ですね。そのうちの12兆ドル、3分の2以上の分野については女性が決定権を持っているんです。経団連の男性たちも「そういえば、妻がイエスと言わないと服や家電の色も選べない」って同意してました(笑)。女性たちはもっとお金を回し、お金を生み、新しいお金を回していけるのです。
──女性は、働いて稼げるだけでなく、消費の決定権を持つ存在としてもお金を回していけるんですね。
【吉田】女性が社会進出することは、子供を放り投げて会社に出勤しなければならないという意味では当然ありませんよね。子育てしながら家で勉強もできるし、私がこれから大学に行くと決めて実行してもいいでしょう。ゴルフするとか、今から再婚するとか、バケーションに行くといったことでも悪くありません。そして、それを積み上げるとあっという間に100兆円を生んでいくんです。
【森本】100兆円! 女性がそれだけ生み出せると思うと勇気がわきますね。私は一人目を出産する育休中に、夫の転勤に同行して1年間シンガポールで暮らしたことがあります。シンガポールの女性ってバリバリ働いている方が多くて、育休から復帰するのも日本より早いです。その代わり、小さい国なので近くに両親がいて子育てを手伝ってくれたり、ベビーシッターや家政婦さんも日本よりは手軽にお願いすることができます。もっと日本でもそういったサポートが簡単に得られるようになると、仕事も子育てもしやすいのにと思うことがあります。
【吉田】私、そのアイデアってすごく大事だと思います。女性とか主婦であることから生まれる大事な視点です。毎日生活している中で、これがあったらいいな、こうしたらいいなというアイデアが私一人でもこれだけあるのですから、他の女性の方々が動きだしたら社会がもっと動いていくんですよ。
働きながら子供育てしたいと思ったら、諦めないで「家でも仕事ができる環境をください」「ITを整備してください」「テレビ会議を入れてください」と、どんどん言いましょう。みんなが工夫して新しい生き方を一歩、二歩と進めましょう。
お金リテラシーの低い人は、人生で損をしている
──今は情報があふれかえっていることもあり、自分できちんとしたリテラシーを身につけないと損をしてしまうことがありますが、お金はまさにその一つですね。
【森本】はい。例えば、iDeCoの制度、掛け金が仮に毎月1万円で、所得税(20%)・住民税(10%)とすると、年間3万6000円、税が軽減されます。知らなかったら、3万6000円分の節約のチャンスを逃すことになります。
【陸】みなさんスタバのコーヒーや隣のスーパーの卵の割引などへのお金は気にするのに、3万6000円を無視するなんてもったいないです。
【森本】金融商品を選ぶ際の手数料もそう。お金にシビアなはずの女性でも、値上がり率や利率は見るのに、手数料を考えていなかったり。投資信託の信託報酬などは、保有している間、ずっとかかるものなのでけっこう大きいです。しかし、初めはそういった違いがわかりにくいと思うので、マネーに関する講座やセミナーに参加するのもいいですよ。直接プロに聞くいい機会ですし、回り道もなくそれこそ賢い時短だと思います。
【陸】つみたてNISAの制度も今年始まったばかりですが、時間がないとか手取りが少ないけど将来に備えたいという女性にはぴったりだと思います。毎月決まった額を、最長20年間定額で買い付けてくれるというつみたてNISAはまさにうってつけの制度ではないかと思います。
【森本】つみたてNISAの対象商品は、手数料が低水準で、長期・積立・分散投資に適した商品に限定されているので、買った途端に莫大な利益がでるような商品はないですが、10年後、20年後を見据えるには堅実な商品ばかりです。銀行預金で寝かせておくよりは、お得ですよね。
【陸】私の中ではiDeCoやつみたてNISAは、投資というより貯金みたいなイメージ。大儲けにはならないけど、堅実。運用によって得られた利益を再び投資に回すことで、雪だるま式に資金が増える。また、期間が長いほどその効果が出る。iDeCoは、給料天引きにできる企業もありますし、途中で引き出せないのもいいですよね。配当金も全部非課税ですし、税制上の優遇がとても魅力的。
──そうなると、知っていたほうが断然お得なマネー知識ですよね。でも、どこでそういった勉強をしたらいいのでしょうか?
【森本】そう思うと、何かを変える一歩を踏み出すという意味では、私達が主催するセミナーにぜひ足を運んでいただいて、その凝縮した時間でマネーリテラシーを高め、損のない安心した将来イメージを手に入れてほしいですね。
【吉田】お金は富、豊かさの媒体です。素晴らしいものです。そしてお金がみんなを救うんです。私は、お金もうけをして一生懸命税金を払いましょうと言っていますが、これに尽きると思っています。いろんな国に出て行って、いろんなものを売ってあげましょう。新しい市場をつくってあげましょう、と思っています。女性は自分たちがお金=富、豊かさを想像するんだという自意識をもっと持っていいと思います。
【陸】日本でも世界でも、女性がもっと歩みを進めていくことで、新しい市場をつくれるんですね。
【吉田】今、日本の子供の6人に1人は貧困層で、ご飯もちゃんと食べられない現実があります。でも、私たちが経済効果を生むことできちんと税金が払われ、貧困層の格差が改善されていきます。人口の半分が女性なのに、その女性がちゃんと社会進出していないのは、体の半分や内臓が動いていません、と言うことと同じです。そんな状態が健康なわけがないじゃないですか。逆に言うと、男性社会にも異常な負荷がかかっています。だから、女性がちゃんと立ち上がることで、男性もしっかり機能できるのです。皆が機能することで真の健康社会が出来るんです。
──最後に、後輩となるこれからの女性たちにメッセージをお願いします。
【吉田】私、自分が辛かったときに生き方の前例を見せてくれる先輩がいなくて、あのときに「大丈夫よ」って言ってくれる人がいたら、どんなに楽だったかと思います。だから、そういうけん引役になりたい。「いろんな人生経験してきたけど、けっこう大丈夫だった。できる、できる!」って言ってあげたいの。「大丈夫だから。子供いても平気よ。仕事も子育てもできるから。もっと欲張りになって。もっといけるから。まだまだいける。ほら時代も変わってきてる」って背中を押してあげたい。
私の好きな言葉ですが、“You will get as much as you give.” あなたが与えたものがそのまま、その分だけあなたに返ってくる。人生の力学です。自分を未来を輝かせようと投資したものは必ずあなたの大いなるアセットとして返ってきます、ということです。
【参加者募集中!】
JPX*マネースクール
──わたしとミライの資産形成──
◆日時
<1回目>
(1)6月25日(月)19:00~21:00(受付18:00~)もしくは
(2)6月27日(水)19:00~21:00(受付18:00~)もしくは
(3)6月29日(金)19:00~21:00(受付18:00~)
※(1)(2)(3)より、お好きな日程をお選びください。
一部同じ講義内容になりますので、ご注意くださいませ。
<2回目>
(4)7月7日(土)10:30~16:00(受付9:30~)
※軽食付き
◆会場
東京証券取引所
東京都中央区日本橋兜町2番1号
※東西線 茅場町駅(出口11)徒歩5分、日比谷線 茅場町駅(出口7)徒歩7分
◆地図
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◆参加費
・2回セット受講 2,000円
⇒【A】(1)&(4) or 【B】(2)&(4) or 【C】(3)&(4)
・1回のみの受講 1,500円
⇒【D】(1) or 【E】(2) or 【F】(3) or 【G】(4)
※【A】~【G】のチケットは、お申し込みページより選択して購入することができます。
◆定員:<1回目>各回100名 <2回目>400名
※先先着・事前申込順
◆主催:プレジデント ウーマン
◆協力:東京証券取引所/きんゆう女子。
◆協賛:エイト証券株式会社、大和証券投資信託委託株式会社、 野村アセットマネジメント株式会社、 松井証券株式会社
◆特別協力:ヤフー株式会社
Text=岩辺みどり Photograph=竹井俊晴