資産価値を高める
管理組合の取り組み

ところで、「マンションは管理を買え」とよくいわれます。

首都圏のマンションは1994年を境に、それまで年間約4万戸程度だったものが、この年から十数年にわたって約8万戸という倍の戸数が供給されました。団塊ジュニアが持ち家適齢期を迎え、企業はデフレで社有地を次々に手放すといったことが重なった結果ですが、金利も下がり、買いやすくもなりました。

当時のマンションが10年、20年を経た今、まさに起きている現象をクローズアップしたいと思います。大規模マンションが急増したのが、この時期の特徴でもありました。

例えば、震災前と震災後のマンションでは非常用電源の稼働時間など、やはり防災対策には差があります。震災前に建てられたあるマンションは管理組合がしっかりしていて、非常用電源の稼働時間を長くしたほか、防災訓練なども地域の消防署と連携してとても前向きに取り組んでいます。

タワーマンションで居住者全員がバケツで上階に水を運び上げたときにどうなるかとか、ヘリコプターを上空で待機させて屋上から本当に救出できるのかとか。消防署も実践したことがないので、「やりましょう」となります。

自分のマンションだから
意識を持って役割を果たす

さらに大規模マンションの場合、多彩な共用施設が整っていることが特徴ですが、最初はもの珍しくて使うかもしれませんが、その後は使われないというケースはよくあることです。実際、その通りになったマンションがあります。

そのマンションは最上階にプールやバーがあり、入居3年目から早くも利用者数や売り上げが減少しました。解決策はより魅力的にするか、あるいはコスト削減に向かうか。意見が二つに分かれました。最終的にどちらを採用したかというと、前者を選択しました。ピザ釜を入れ、コックを雇い、カフェバーにリニューアルして、利用者増を果たしました。

デベロッパーはおそらく、こんな状況を想像もしなかったでしょうね。ピザ釜を入れるなんて。

こうしたことに取り組んでいる皆さんが一様に言うのは、無理をすることはないけれど、自分たちの建物なのだから意識を持って、ぜひ活動に参加してほしいということです。ですので、マンション購入を考えている皆さんも誰かがやってくれるではなく、資産価値を上げたいと考えるのならば、組織の一員として自分の役割を持って、こうした活動に前向きに参加していかれるとよいでしょう。

(松本 聡=構成 田里弐裸衣=撮影(人物))