妻が働くには夫の協力が大前提

安倍政権の要請に応じて一時金を引き上げる企業もあるが、ベースアップを決めた企業は少ないし、まったく蚊帳の外、という人が多いのが実情である。どうすれば収入を増やすことができるのか。現実的なのは個人の収入ではなく世帯収入を増やすこと。すなわち、妻に稼いでもらうこと、である。

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妻の働き方しだいで生涯年収は大きく変わる

図は妻の働き方によって収入にどの程度の差が生じるかを試算したものである。給料については厚生労働省のデータ、年金については現行制度に則っている。

一度も働いたことがない専業主婦の場合、賃金としての収入はゼロ。将来、受給できる公的年金も、国民年金のみで年額約79万円、20年で1573万円となる。

対して23歳から60歳までの38年間、正社員として働く場合には、賃金収入は1億2768万円。公的年金には厚生年金が上乗せされ、年額で約170万円。20年受け取った場合の生涯収入は1億6160万円を超える。専業主婦の実に10倍以上だ。

「いまさら、ずっと正社員でいるべきだと言われても……」という批判もあるだろう。実際、出産、子育てを担う主婦がずっと正社員として働くのは、環境面から考えても大変である。では、子育てがひと段落してから仕事を再開すると収入はどう変化するだろう。

正社員として8年働いたあと、7年間中断し、その後、23年間正社員として働いた場合について試算すると、年金と合わせて生涯収入は1億923万円となる。

正社員の立場を確保するのはハードルが高いが、パートタイマーでも生涯収入は約8131万円。パート勤務でもかなりの「世帯年収アップ」が図れる。

従業員規模が501人以上の企業で週20時間以上、1年以上勤務見込みで、1カ月のパート代が8万8000円以上の場合、厚生年金に加入することになり、手取りは減るが、年金の受取額が増えるのも大きい(2016年10月から)。

安定した収入がない場合、離婚などで単身になった際、家も借りられない、クレジットカードもつくれないなどで愕然としたという事例が少なくない。働いて収入を得ることは、家族の、そして自身の安心につながる。

またリストラ、病気などで、万が一、夫が働けなくなった際にも、妻に収入があれば一定のセーフティネットになるのも大きい。

実際に、専業主婦だった人が30代で社会保険労務士になって働き始めた例、40代でブライダル業界に正社員として採用された例もある。主婦としての経験が評価され、採用につながることもあるのだ。

いうまでもないが、妻が働くには夫の協力が不可欠、というより当然のことだということを男性陣には強く意識してほしい。

(構成=高橋晴美)
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