まず、「子供をつくる約束」についてだが、法的に絶対的な拘束力はない。例えば、契約社会であるアメリカでは、結婚するに際して、財産分与や子育てなどについて契約書を取り交わすことがあるが、日本の場合、仮にこうした契約書を交わしていたとしても、法的にどの程度の効力を持つのかは微妙なところだ。

しかし、子供以前に、正当な理由なしに性交渉を配偶者が拒否していれば、家庭裁判所の「夫婦関係調整事件」を申し立てる動機の1つに挙げられている「性的不調和」に当たる可能性がある。基本的に性交渉は、「夫婦関係の重要な要素」とされており、拒否するということは、離婚が認められるかどうかのきっかけになりうる。

現在、民法770条第1項により認められている離婚原因は次の5つである。

(1)配偶者に不貞な行為があったとき
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき

性的不調和はこのうち(5)に該当するかどうかが争点になる。たとえ性交渉がなかったとしても、双方ともに性交渉がなくてもよいという合意があれば、「婚姻関係を継続しがたい重要な事由」にはならない。

離婚原因になりうる「性的不調和」とは

では、性的不調和が離婚原因になるケースには、どのようなものがあるのかを考えてみよう。

まず、夫婦のいずれか一方が、正当な理由がないのに、長期間にわたって性交渉を拒絶し、拒絶された配偶者が精神的苦痛を感じ、それが原因で拒絶された配偶者側が離婚を求めるような場合。これは配偶者に対する協力義務(民法752条)の懈怠(けたい)、心理的・精神的な虐待にあたる可能性があり、抽象的離婚原因になりうるし、慰謝料も請求可能である。