ピッツァは得意料理のひとつだ。自家製の生地(75円)に自家製トマトソース(120円)を塗り、家庭菜園で栽培したバジルの葉、モッツァレラチーズなど(調味料込みで303円)をのせてから、ガスコンロを使う家庭用ピッツァ窯(1万円)で焼けば、マルゲリータのできあがり。

総額498円でピッツァを2枚も焼けるのだから、やめられない。2000円を超える宅配ピッツァを頼むのがバカらしくなるほどだ。

その日食べたい料理を手間暇をかけておいしく作る。月に何度か、ぼくのマンションに友人たちが集まってホームパーティが開かれる。付き合っている女性もいる……。ぼくは、年収100万円の生活に不満もストレスもまったく感じていない。いまの暮らしが、本当に楽しくて仕方ない。

会費は「割り勘」。同級生と自宅宴会

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これが月収3万円+1万円の使途明細だ!

とはいえ、当初は働かない自分に罪悪感もあった。それは、会社員時代にいつの間にか染みこんだ価値判断があったから。どちらのほうが上か下か、儲かるか損か……。

大学卒業後、大手飲料メーカーに就職し、広報部に配属された。社内の人間関係もよかったし、やりがいもあった。

けれども──。これから何十年もこんな生活を続けていいのか。自分自身にウソをついているのでは。そんな疑問を抱く出来事があった。

入社5年目。社内の定期検診で、十二指腸潰瘍が治った痕があるといわれた。知らぬ間に病気にかかり、いつの間にか治っていた。体の変調に気付きもせずに働いていたのだ。トイレの鏡の前で同僚と談笑していたときの自分の顔が忘れられない。ぼくの顔は、不自然に引きつって、ゆがんでいた。心と体が悲鳴をあげていると思った。