不幸にも東日本大震災が起きてしまった以上、無駄の多い生活を見直す機会だと考えたほうがいいでしょう。原発が正常に動いている状態であれば、さあ節電しましょうと言っても、誰が言うことを聞くでしょうか。こういう状況になって初めて、私たちは原発抜きでどうしていくかを真剣に考える、今そういう時が来ています。

節約とはケチケチにあらず

作家 林望氏

僕は、歩く合理主義を自任しておりまして、合理的じゃないことはやりたくない。そのためにまず最悪のところから考える。もし最悪のことが起こったらどうするか?「人生にはどんなことでも起こりうる」というのが僕の信念ですから。例えば美術品や骨董品を持っていたとしても、震災で焼けてしまったらそれきりです。不動産も東京に投資のためのマンションを3つも4つも所有していても、直下型の地震がきて東京が火の海になったら、一瞬にしてパーになります。

しかし節約するといっても、ケチケチしみったれたことをやるのはよしたほうがいいでしょう。幸福を追求するために節約をするのであって、自分の幸福の獲得のためには、役に立たないことはやらない合理性を持ちたい。自分が何をしたいかをよく考えて、そのために、金を惜しまず使う。余計なことには使わない、メリハリが大切です。

ネガティブにすべてを真っ暗けにして節電、節電って言うのだったら、つまらない。僕は節電と言われたので、早速、家中の電球をLEDに取り替えました。そこには投資が必要です。だけれども、投資することによって低電力な生活に切り替える。電力不足がなければ踏み切れなかったかもしれない。メーカー側もそれを見越して、LED電球は一挙に3分の1に値下がりしました。東芝の4500円の電球が、1700円程度になりました。本当にチャンスがきたなと思って前向きにやれば、何の苦もないことですね。