2013年5月1日(水)

なぜ「掃除・片づけ」が人生に関わるのか-1-

ポスト「ゼロ年代」の自己啓発書と社会 第38回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
牧野 智和 まきの・ともかず

1980年、東京都生まれ。2003年、早稲田大学教育学部卒。09年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。独立行政法人日本学術振興会特別研究員。「自己啓発本」を社会学の手法で分析した初の単著『自己啓発の時代――「自己」の文化社会学的探求』(2012年、勁草書房)は、日本経済新聞、朝日新聞の両書評欄で紹介され、2013年に日本出版学会・奨励賞を受賞した。同書第五章「ビジネス誌が啓発する能力と自己――ビジネス能力特集の分析から」では、「プレジデント」をはじめとするビジネス誌記事内での「○○力」という表現の使われ方とその変化を細かく分析している。

執筆記事一覧

牧野 智和=文
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TOPIC-1 片づけ本はベストセラーの常連

ここ3、4年のベストセラーランキングをみると、「片づけ」に関する書籍が毎年ランクインしていることに気がつきます。

「かたづけ士」小松易さんの『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』、片づけコンサルタント・近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』および同書2巻、クラター・コンサルタントのやましたひでこさんによる『新・片づけ術 断捨離』と『不思議なくらい心がスーッとする断捨離』がそれです。書店に行けば、彼(女)らの他の著作、別の書き手による片づけ本、あるいは掃除本をいくつかみつけることができます。

掃除や片づけで人生が変わる、心がスーッとする。分かるような、分からないような気がしますよね。確かに掃除や片づけをすれば物がすっきりし、心もスーッとするという話は何となく分かる。しかし、人生が変わるというのは、どういうことなのか。今週は今挙げた著作を紐解いて、掃除や片づけで人生が変わる、という論理の構造を考えてみたいと思います。

あらかじめ述べておくと、以下で主に述べていくのは、掃除や片づけの具体的な方法ではありません。方法をつぶさにみていくとあまりに煩雑になるということもありますが、社会学を学ぶ私が考えてみたいのは、(1)掃除や片づけという事象にどのような意味が込められているか、(2)それはかつてと今で違うのか、(3)違うとしたらそれはいつ頃どのように変わったのか、ということだからです。このような意図があるため、以下では著者が持つ、掃除や片づけについての「哲学」のような部分に注目していくこととします。

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