「そんなまさか」→「事実なのです」という常套手段

論点を1つ足してから、話を進めていきたいと思います。前回テーマ「手帳術」と同様に、掃除や片づけでも「夢がかなう」ということがしばしばいわれます。この「夢」という言葉にもう少しこだわってみたいので、今週の対象書籍として、書籍タイトル上に夢と掃除を初めて同時に用いた著作を加えることにします。その著作とは、2005年の「そうじ研究会代表」舛田光洋さんによる、『夢をかなえる「そうじ力」』です。刊行年が最も早いので、この著作からまずみていくこととします。

舛田さんは同書の冒頭で次のように述べます。「そうじには“力"があります。その力を使ってそうじをすると、確実に効果があらわれます。その効果とは、人生におけるさまざまな悩みや問題の好転、事業の繁栄、幸せな家庭、夢の実現……。『えーっ!? そんなまさかー』と思われるでしょうが、事実なのです。この力を『そうじ力』と私は名付けました」(1p)。「誰でもできる簡単な『そうじ』で、人生が変わるのです」(2p)。

えーっ!? そんなまさかー……でも事実なのです、というロジックは自己啓発書の常套手段ですが、まずは舛田さんの主張にもう少し寄り添ってみましょう。その主張は非常にシンプルで、「あなたの住む部屋が、あなた自身である」「あなたの心の状態、そして人生までもを、あなたの部屋があらわしている」(15p)、だから部屋をきれいにすることが心をきれいにすることにつながる、心がきれいになれば人生は好転する、というものが基本線です。

この主張の補助線となるのが、「磁場」や「エネルギー」についての主張です。まず磁場についてはこうです。「あなたの心の反映であるあなたの部屋に、一定の『磁場』ができ上がり、あなたが発しているエネルギーと同質のものを引き寄せる」ため、「部屋のキレイな人はさらに幸せが倍増し、部屋が汚い人は不幸な出来事をさらに増幅させている」(19p)。エネルギーについては、「そうじ力」の2つの側面とともに次のように述べられます。「積極的に汚れを取り除くことによって、マイナスのエネルギーを取り除き、問題を解決する『マイナスを取り除くそうじ力』」と、それを土台として「さらに積極的に目的を持ったプラスエネルギーを加えることで、強力に善きものを引き寄せるのが『プラスを引き寄せるそうじ力』」(39-40p)。

このような観点から、マイナスのエネルギーになるものを捨てよう、心から感謝の気持ちを込めて掃除をすることで「宇宙の繁栄のエネルギー」(100p)を得よう(プラスのエネルギーを得よう)といったハウ・トゥと、掃除を重視する組織がいかに成功しているか(ディズニーランド等)という事例が示される、というのが舛田さんの著作です。

さて、舛田さんの主張について、共感する方、途中までは何となくわかるけれど磁場やエネルギーの話あたりからはついていけないと思った方、まったくついていけないと思った方、それぞれいると思います。しかしここではひとまず、近年のベストセラーの概観を続けていくこととします。