サラリーマンの平均年収は412万円――。ピークの1997年と比べ、50万円以上減少した。もはや現状を維持するのも難しい時代、上昇し続けるためにはどうすればいいか。

上司も会社も知らないキャリアの正解

東京大学大学総合教育研究センター准教授 中原 淳氏

いまの20~30代の会社員は、以前よりも過酷な環境の中で働いているといえます。かつて日本の会社員には、自らのキャリアを考えていくうえでの1つの「答え」がありました。大学を出て、会社に就職する。年を追うごとに賃金が上がり、下積みの時期を経て社内での役職や立場を得ていく……。しかし、バブル崩壊以後の1990年代の前半から、日本企業の雇用を取り巻く環境はがらりと変わった。そうしてやってきたのが、経済が右肩下がりの中での「答えが誰にもわからない時代」です。

いま、何をすればいいのかについて、会社も上司も正解を知らない。目の前に成功した人がいたとしても、別の人が同じやり方で成功するとは限らない。キャリアの「地図」を描いてみたところで、そこにある道程を歩いていくことが難しくなっています。

どんな苦難に際しても、選択肢をいくつか考え、物事を前向きに捉える――。現在、こうした姿勢そのものがいよいよ「資本」として機能する時代になってしまったといえるでしょう。これを専門用語では「ポジティブ心理資本」と呼びます。

右肩上がりの時代において、心理資本はそれほど意識しなくてもいいものでした。企業や組織は安定的に拡張していたため、個人は粛々と与えられた仕事をやっていれば、それが「成功」を意味する可能性が高かったのです。この時代は、終身雇用・年功序列という日本的雇用慣行を諸条件として、上司も若手社員に対して仕事上のアドバイスや関わりを手厚く行っていました。だからこそ、あまり意識的かつ戦略的にならずとも、人材育成が機能していたのです。