がんばっているのに成果が出ない。そう感じているビジネスパーソンも多い。第一線で活躍し続けるにはもちろん、自己研鑽が必要だ。だが、その勉強は本当に、仕事の役に立っているのだろうか。ハイパフォーマーの学びの習慣を、600人アンケートの結果を交えながら紹介しよう。
▼神永正博さんからのアドバイス

じつは高校時代から自分で教科書をつくっていました。微積分ができたらいいなと思って『3日でやる解析学』という本にしたり、会社勤めをしていたころは『金融工学を読む』という本を書いたり。これらの本はあくまで自分向けなのですが、気分を盛り上げるために、プリントアウトして表紙をつくり、まえがきやあとがきまでつけていました。

教科書を書くのは、理解を深めるためです。あるテーマを突き詰めるにはさまざまな本や論文を読む必要がありますが、教科書を書きながらそれらを消化していくと、「ここはもっと深めたほうがいい」「このあたりの資料が足りない」と全体を俯瞰できるようになります。理解したことを整理するというより、何が理解できていないかを知るために教科書を書いていたようなものです。

ただし、教科書を書くのと論文を書くのは似て非なるものです。教科書を書くのはあくまで通過点。情報を処理して理解する力があれば可能です。しかし、問題をスイスイと理解するだけでは論文になりません。

優れた論文を書く研究者は、みんながスルーするところで立ち止まって疑問を抱きます。このような感性は、教科書を書いて満足するのではなく、もう一段上のアウトプットを目指すことで磨かれていくのだと思います。

神永正博●東北学院大学教授
1967年、東京都生まれ。東京理科大学理学部卒、京都大学大学院理学研究科博士課程中退。東京電機大学助手、日立製作所研究員を経て、東北学院大学准教授に就任。2011年より現職。著書に『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』など。