中途採用求人数が激減している。景気低迷の中、新天地で成功を勝ち取る人に共通する条件は何か。4人の識者が、20冊の本をもとに解明する。

迷いがあるなら独立はやめるべし

オイシックス社長 
高島宏平氏

仕事においても人生においても1つの決断を下すときは、先の見えない中をひたすら走らなければならない一瞬もあるだろう。オイシックスの高島宏平社長にとって、同社を起業してからの数年間は、まさにそんな決断の連続だった。

インターネットによる食材の宅配事業を行う同社を、約10人の仲間とともに立ち上げた約9年前――。

「当時は思ったとおりに事が運ぶことなんてありませんでした。インターネットで食品を売るというビジネス自体、成功事例はなかった。自分たちの事業がビジネスとして成り立つことを証明するまでは、模索を続けるばかりでした」

その時期、高島社長が自らと重ね合わせたのは、小学生の頃からの愛読書であるヴェルヌ著『十五少年漂流記』だった。

漂着した無人島で15人の少年たちが力を合わせ、それぞれの個性を活かすことで困難を克服していく。喧嘩をしつつも徐々に1つの目的に向かおうとする少年たちの姿は、ベンチャー企業の経営や人間関係と似ており、読みながらとても勇気づけられた。

「いつもトンネルの中にいて、光が見えたと思ったら間違いだったり……。起業してしばらくは、そのプロセスを仲間たちと楽しみながら、とにかく出口を探そうという気持ちだったからでしょうね」

そうして経営を続けていくうえで、彼が思想的な影響を受けたのが小倉昌男著『小倉昌男 経営学』だった。「個人宅配は日本社会を絶対に豊かにするという強い意志」に強い感動を覚えた1冊だ。

「起業をして以来、よい社会をつくるために僕らの存在があるんだ、という使命感を持ってきました。そのためには社会をよりよくしたいという信念と、ビジネスモデルを同時に成り立たせなければならない。小倉さんの価値観には強く引きつけられるものがありました」