いい上司は最良の答えをポケットの中に置いて安易に出しません。そして、答えを部下が自ら考え出したかのように質問で導いていく。例えば、こんなふうに。

「交渉決裂か……。で、何が原因だ?」

「説明段階だったので、わかりません」

「そうか。どんな説明をしたの?」

「事実関係の説明をこうやって……」

「たとえ事実でも、そうやって突きつけられたとしたら、君ならどう感じる?」

「なんか責められているような気がしますね。そうか、それで急にA社が責任論を持ち出して態度が硬化したのか……」

ただ答えを出すのではなく、こうやって視点やヒントを与えて答えに導くのです。一見面倒に思えますが、部下はそこから学び応用しますから急がば回れです。

では、部下が上司よりも優秀な場合はどうでしょう。上司風を吹かせ、持論を無理に押しつけたりすれば、部下はどんどん距離を置き始め、ホウレンソウを忌避するようになります。逆に、優秀な部下を活かすスタンスで、上司の立場でしかできない組織的なサポートをすれば、部下は進んでホウレンソウしてきます。

要は、部下にとって上司が同じ船に乗っているんだという「納得感」を与えることができるかがポイントです。部下だけが船に乗っていて、上司は川岸から「波がどうなっているか報告しろ」「船に問題があるのなら相談しろ」と言っているようではダメ。上司も船に乗りこみ、「きつくないか」「どのルートが効率的か」と、一緒に考えなければならないのです。

イマージェンス社長 桑畑英紀 
大手電機メーカー、外資系消費財メーカー、マーサージャパン組織・人事改革コンサルティング部門代表、取締役などを経て、2008年に現在の会社を設立。りそな銀行社外取締役。
(構成=小檜山 想 撮影=上飯坂 真、太田 亨、市来朋久)
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