ミス、クレーム対処の悪い事例

ミスやクレームが発生したとき、いかに早く報告させるか。そのためには、「早く報告してよかった」という実感を部下に持たせることが大事です。

結果だけを評価して、頭ごなしに失敗をなじる。これは最悪の対処法です。

ある部下が、トラブルを未然に防げなかったとします。でも、報告してもろくに経緯も聞かずに怒られるだけだと思い、しばらく取り繕って隠していた。そして、問題は日増しに大きくなって……。不祥事が生まれる典型的なパターンです。

人が何か行動を起こすとき、必ず一定の「心理パス」を通ります。この例では、問題が発生した時点で、部下のほうにも早く報告しなければ大変になるという危機感はありました。しかし、行動しようと一度は決意したものの、「そうは言っても、どうせ上司には一方的に責められるだけだし、自分で何とかしてみよう……」という思いが頭の中に渦巻き、ホウレンソウを妨げてしまったのです。

往々にしてこうしたトラブルは、上司自身が阻害要因になっていることを自覚せず、ただ「ホウレンソウせよ」と命じているときに起こるものです。

また、ホウレンソウが上がってきたとき、部下に対して立派なアドバイスを一方的に与えるのも好ましくありません。

先に、コントロールするためのホウレンソウが定着すると、部下の思考停止が習慣化して自主性が育たなくなるという弊害を挙げました。特にプレーヤーとして優秀な上司によく見られる問題です。

ホウレンソウが上司の優越感を確認する場になると、部下はおもしろくありません。指示を聞いても、心のどこかで「上司に後悔させたい。失敗すればいい」と悪魔の囁きさえ聞こえます。