泉 敬(帝京大学ラグビー部主将)

いずみ・ひろ 
1990年、大阪府生まれ(東大阪市の実家は花園ラグビー場のすぐ近く)。帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科4年生。関東大学対抗戦では10-24で敗れていた筑波大に雪辱し、史上初の大学選手権4連覇を達成。

前人未到の大学選手権4連覇を達成した。帝京大ラグビー部の泉敬主将は仲間の手で4度、宙に舞った。名前の「敬」は「ひろ」と読む。「ヒーロー」になるようにという両親の願いが込められている。

お立ち台のテレビインタビュー。昨季まで先発出場なしの苦労人は、泣きながら笑った。絶叫だった。

「ありがとうございます。146人の仲間、監督、スタッフ…。全員一丸となって戦った。さまざまな人のサポートがあって、ここに立っている。感謝の気持ちでいっぱいです」

これまで先輩たちの裏方として3連覇を支えてきた。練習では決して、手を抜かない。逃げない。「今年は一番、努力したチーム」(岩出雅之監督)の象徴的な存在である。戦力的に不安視された今季だったが、努力家の主将と共にチームが大きく成長した。

13日の決勝戦では、フィジカルの違いを見せつけ、15人一体となった「継続ラグビー」で筑波大を圧倒した。最後のワンプレー。泉は相手に猛タックルを浴びせ、ブレイクダウン(タックル後のボール処理)で相手ボール奪取にひと役買った。

「泥臭く、ひたむきに」が口癖である。温厚な性格、丁寧な言葉遣いながら、グラウンドに出ると人が変わる。とくに昨年12月1日の対抗戦で筑波大に敗れた後、練習に向かう姿勢がさらにアツくなった。

昨年までメンバー外だったから、試合に出られない部員の気持ちがよく分かる。とくに30数名の4年生。それぞれの気持ちを理解し、「仲間の分まで」との思いで戦った。

175センチ、103キロ。あんこ型の体型で、スクラム、ブレイクダウンでからだを張った。見事、筑波大に雪辱した。

「筑波大さんに学ばせてもらいました。あの負けから、必死にやってきた。帝京大ラグビー部が一丸となった日々を過ごしてきました。コンタクトでもスクラムでも、すべての部分で勝てたと思います」

1990年生まれの22歳。小学生の頃、大阪の花園ラグビースクールでラグビーを始め、地元の強豪、常翔学園(元大工大高)に進んだ。ことしは全国高校大会を制したが、泉が3年生の時は大阪府予選で敗退した。帝京大に進学。試合に出られなくても決してくさらず、コツコツと努力を積み重ね、最後に晴れ舞台に立った。

卒業後は、NTTドコモに入社する。この優勝で人柄が変わることはないだろう。

「これからもしっかりと精進していきます」

そう言って、いつもの人懐っこい笑顔を浮かべるのである。

(志賀由佳=撮影)
【関連記事】
「練習通りにやれ」-吉田義人
「悔しい。素直に悔しい」-伊藤剛臣
「基本をDNAに刻め!」-岩出雅之
「ジャパン、顔を上げろ!」-浅見敬子
「無駄に責任感じてやっています」-山田章仁